Interview

早実の3年間は社会で生きる力を身に付けてくれた 及川龍之介さん(早稲田実業出身)【後編】

2018.08.14

 前編では及川龍之介さんが、早稲田実業に進学したキッカケや、入学してからの練習で感じたこと。そして野球部ならではのルールについて話してもらいました。後編では、全国制覇を達成した2006年の夏の話や、現在の仕事についてお話を聞きました。

 そして最後に、今頑張る球児たちへのメッセージを頂きました。

学校名の入ったバックが使えないほどの人気が出た夏

早実の3年間は社会で生きる力を身に付けてくれた 及川龍之介さん(早稲田実業出身)【後編】 | 高校野球ドットコム
経理財務部の大阪経理課所属 及川 龍之介さん

 早稲田実業は2006年、西東京大会で苦戦が続いた。いきなり初戦の都立昭和戦で3対2と辛勝。以降もしぶとく勝ち上がり、そして決勝戦では秋でも対戦した日大三と再戦した。
 「10回表にバントされて、斎藤が三塁に悪送球して1点を失ったのですが、そのあとなんとか追いつきました」と決勝戦はギリギリで勝てたことを語ってくれた。

 何とか西東京大会を勝ち上がり、甲子園へ出場。そして駒大苫小牧との再試合を制して、見事優勝を果たした。当時のエピソードを伺うと、
 「ベンチの雰囲気は甲子園に行ってからずっと良かったと思います。再試合になって、決勝戦は2試合やりましたが、選抜の時も再試合しているんです。選抜の時の2試合目はすごいみんな疲れていて、全然試合ができるコンディションではなかったんです。それを経験していたからかどうかわからないですけど、夏の再試合の時はみんなあまり疲れを感じてない状態で戦っていたかなと思いますね。実際疲れていたとは思うんですけどね。」

 早稲田実業は春の選抜、2回戦で岡山の岡山関西との一戦で延長15回を戦って再試合を経験している。何とか次の日の再試合を制して準々決勝に進出したが、そこで横浜と対戦して3対13で敗退してしまったのだ。
 この経験が夏の甲子園で活かされた、当時を振り返りながら語った。

早実の3年間は社会で生きる力を身に付けてくれた 及川龍之介さん(早稲田実業出身)【後編】 | 高校野球ドットコム
田中将大(左)と斎藤佑樹(右)

 激闘を制して優勝した甲子園。その滞在期間は1ヶ月近くになったが、当時のエピソードを聞いてみると、「2回戦で大阪桐蔭と当たった時に、中田翔選手は当時から注目されていたんですけど、その中田選手を抑えて勝って、その翌日からスポーツ新聞でこれが斎藤くんの幼い時の写真ですと取り上げられるようになっていた。それもあってなのか、女子からの人気が凄く高まりました。やっぱり甲子園ってすごいなと思いました。」と甲子園での活躍がもたらす影響力を語った。

 そのおかげで、大会終了後に及川さんの身の回りで意外なことが起きていたそうだ。
 「学校名の入ったカバンを持って通学していたんですけど、話しかけられたりするのでそれはもう後輩は使えなくなったと言っていました。」

 早稲田実業にとってはまさかの出来事だったと思うが、嬉しい悲鳴だったのではないだろうか。

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選手たちの味方になるために冷静に現実を分析した

早実の3年間は社会で生きる力を身に付けてくれた 及川龍之介さん(早稲田実業出身)【後編】 | 高校野球ドットコム
経理財務部の大阪経理課所属 及川 龍之介さん

 激動の夏を経験した及川さんは、現在ミズノ株式会社の経理財務部の大阪経理課で勤めている。主に税金関係を取り扱っており、パソコンに向かうことも多い。これが及川さんの所属する経理財務部の仕事である。地味な仕事も多く、辛い時もある。だが、この仕事に面白さを感じている。

 それは一体どこなのか聞いてみると、
 「元々小さい頃から分析するというのが好きだったので、経理財務部の会計とか税務というのは、目の前で起こったことを記録して、分析していくということで共通する部分があります。また、いろんな選択肢があるなかで会社の再編のためにはどういう形がベストか考える、といった経営に近い部分まで話ができる」ところに醍醐味を感じている。

 当初は営業関係を希望していた及川さんだったが、今の仕事の面白さをみつけることができた。それは記録員をやっていたこと、そして小さい時から野球のスコアをつけて、分析するというのが好きだと話した及川さんだからこそ見つけられたのだろう。

早実の3年間は社会で生きる力を身に付けてくれた 及川龍之介さん(早稲田実業出身)【後編】 | 高校野球ドットコム
同級生の斎藤佑樹選手と及川 龍之介さん

 しかしなぜミズノなのか。さらに聞いてみると、
 「スポーツをやっていたので、スポーツに関係ある会社がいいなあと思っていました。それで最後は、スポーツメーカーの中でも日本で一番大きいのはミズノだという考えが私の中にあったので、ミズノを受けました。」

 自ら話す通りミズノはスポーツメーカーの最大手。入社するのは容易ではない。一体どんなことをアピールしたのか。それはやはり高校野球の経験だった。

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高校野球での悔しさをバネに社会人で頑張って欲しい

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経理財務部の大阪経理課所属 及川 龍之介さん

 及川さんがミズノの入社試験でどんな話をしたのか。それは高校野球で培った経験だった。
 「スポーツが好きな人がみんな来ていると思うので、その中で、自分は何をしたいかをちゃんと言えたのがよかったのかなと思います。高校時代と結びつけるのであれば、私のようにベンチメンバーに入れない人は沢山早稲田実業にはいて、その中で、みんなやっぱり自分のできることを見つけてきました。」

 例えば、あるものはバッティングピッチャー。またあるものは分析して相手チームのピッチャーの癖を見つけるといった、自分にできることは何なのか。自分のしたいことは何なのか。選手として早稲田実業のベンチには入れなかったものの、自分のできることを必死に探してアピールする。これがミズノに入社できた最大の要因だと振り返った。

 こうした強みを生かし、晴れてミズノに入社して現在の仕事に就いた及川さん。全国制覇も経験した高校野球3年間の経験が今の仕事に活かされている。

 「スケジュールが詰まっているんで、甲子園は急かされることが多かったです。練習時間も毎日2時間しか与えられないんです。その2時間の中でいかに効率よく練習するか、ちゃんと計画を立ててやるというのは甲子園で学んだかなと思います。」

 効率的に練習をするために、グラウンドにネットがあるかどうかの確認。そのうえでどんな練習の時にどんな準備をするのか。甲子園に出場して、計画性が身についたと及川さんは感じている。

 また選手とマネージャーを兼任していたことで、練習後にもマネージャーの仕事をやることがあった。周りの選手たちよりやることが多かったことで、忍耐力が身に着いた。そして、選手と監督の間に立ったことで両社を橋渡しすることもあった。及川さんはそのことをバランス感覚と言っていたが、そういった人付き合いも上手くできるようになったと感じている。

 小さい頃から培った分析力。高校野球で身に付けた計画性・忍耐力。そして人付き合いといった能力が現在の仕事に活かされている。最後に球児に向けてこんなメッセージを残してくれた。
 「野球をやっている時って、野球の上手さが全てで、それがなんというか人間の序列みたいなものになっていると思うんです。けどそこにはやっぱり努力だけでは越えられない壁があると思うんです。だけど会社に出たら、努力すればするだけ這い上がっていけます。野球でうまくいかなかったとしても、人生の3年、2年半くらいの話なので、その悔しさをバネにして、社会で頑張っていけばいいと思います。」

 記憶に残る夏をベンチで見守った及川さん。あの夏の経験が今の仕事に活かされている。これからも磨き続けた分析力でミズノ、そして球児を支え続けていく。

文=編集部

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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