Interview

スパイクの本質とは「故障」をさせないこと 選手の成長を支える「コウノエベルトスパイク」【後編】

2018.08.07

 デサント社と共同でスパイク開発に挑戦する鴻江寿治氏インタビュー。前編では累計30万本以上の大ヒット製品「コウノエベルト」を搭載したスパイク、「コウノエベルトスパイク」誕生までの道のり、そして実際に使うプロ野球選手からの喜びの声を紹介した。後編では、高校野球向けに改良された「コウノエベルトスパイク2(※)」が完成するまでのプロセス、そして鴻江氏の高校球児への想いを伺った。

100%に近い状態を実現する「コウノエベルトスパイク2」誕生の裏側

スパイクの本質とは「故障」をさせないこと 選手の成長を支える「コウノエベルトスパイク」【後編】 | 高校野球ドットコム
「コウノエベルトスパイク2」

 今年は、日本高校野球連盟の用具使用制限をクリアした「コウノエベルトスパイク2」が誕生。この夏からは、高校球児も公式戦で「コウノエベルトスパイク2」の使用が可能になった。
 「コウノエベルトスパイク2は、コウノエベルトの配置、仕様を変えることで、ベルトを締める時間の短縮に成功したんです。この変更によって、高校野球連盟の使用制限をクリアすることができました」

 スパイクの刃の数は前5本、後ろ2本の計7本。くの字刃と直線刃を場所によって使い分けるなど、従来のスパイクにはなかった工夫がソール部分にもつまっている。
 「地面をつかみやすい、くの字刃を一番前と外側の2本に配置していますが、重心移動の抵抗を軽減し、内側の突き上げを緩和するため、内側の2本はあえて直線刃を配置。着地時にスムーズに地面に食い込み、次の動作をおこなう際の動きにつなげやすくするため、土踏まずに近い2本は逆ハの字に配置されています。足の指が開く、コウノエベルトスパイク2に一番合ったソール、金具の配置をデサントさんが研究し、出した答えがスパイクの裏面にはぎっしりとつまっています。アッパー部分ありきでつくられたソールですが、相性は抜群だと思います」

スパイクの本質とは「故障」をさせないこと 選手の成長を支える「コウノエベルトスパイク」【後編】 | 高校野球ドットコム
これが地面をつかみやすい刃の配置だ!

 数々の工夫が施されている「コウノエベルトスパイク2」だが、軽さを極限まで追求したスパイクではないという。
 「僕は、ある程度の重さは必要だと思っています。軽めにはするけど、軽すぎてもいけない。コウノエベルトが生む、足とシューズの優れたフィット感は、実際の重量よりも軽く感じさせる効果もあるので、体感的には実際の重さよりも軽いスパイクを履いている感覚になります」

 鴻江さんに促され、筆者も「コウノエベルトスパイク2」を履いてみたが、実際の重量ほどの重さは感じなかった。ヒール部分の横に2本配置されたコウノエベルトを締めると、かつて経験したことのないフィット感に足が包まれた。靴ヒモの締め付けだけではけっして得られない一体感だと思った。

 鴻江さんは、「この商品は、その人の持っている100の力を道具の力で120にするような細工が施されたスパイクではない」と強調した。
「100の力が120になることはないけど、100の力を持ちながら、60や70でとどまっている選手を限りなく100に近づけることができるスパイクだと思っています」

[page_break:ケガをせずに高校野球生活を送ってほしい!]

ケガをせずに高校野球生活を送ってほしい!

スパイクの本質とは「故障」をさせないこと 選手の成長を支える「コウノエベルトスパイク」【後編】 | 高校野球ドットコム
高校野球を健康に過ごしてほしいと語った鴻江寿治トレーナー

――その選手がもっている本来の力をしっかりと引き出してくれるスパイク。

鴻江寿治(以下:鴻江): 「バネ効果を内蔵するなどして、パフォーマンス以上のものを道具の力で出すのは非常に危険で、故障の源になってしまうんです。それではまったく意味がない。目指したのは、故障なく、本人の能力を100パーセント発揮できるスパイク。選手の能力が上がり、100の器が広がれば、その上がった能力分もフルに発揮してくれるスパイクなんです」

――身体も技術も伸び盛りの高校球児にはもってこいのスパイクですね。

鴻江: 「成長著しい時期の球児の成長にしっかりと寄り添い、サポートしてくれるスパイクだと思います。なので練習でもガンガン履いてほしいですね。故障なく、思う存分に練習することで100の器をどんどん大きくしていってほしい。どれだけ器が大きくなっても、このスパイクはしっかりと寄り添い、大きくなった分の力をしっかりと発揮してくれますから」

――身体に不安があれば、練習も思い切りできませんものね。

鴻江: 「そうなんです。故障がちだと知らずのうちに身体を庇ってしまい、手加減をしながらプレーするはめになりがちです。身体への不安がなくなるだけで、全力でプレーすることができる。全力で練習出来れば、よりうまくなれる。高校野球生活がより充実したものになると思います」

――最後に高校球児へのメッセージをお願いします。

鴻江: 「仕事を通じ、たくさんの選手と話す機会がありますが、かなりの確率で高校時代の話になり、必ずといっていいほど『高校野球に対する悔い』というテーマの話になるんです。『悔いが残っている』と語る選手の多くは『ケガさえなければ…』というフレーズを口にします。高校野球は実質2年4ヶ月ほどしかない。その限られた時間を故障なく、健康で過ごすことが、悔いのない高校野球生活を送るカギを握っていると私は思っています。
このスパイクによって、悔いのない高校野球生活のお手伝いができれば幸いです。」

(※)「コウノエベルトスパイク2」は12月より一部の店舗で発売、1月より一般発売となります。

文=服部健太郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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