Interview

大石 晨慈(近大附)「濃密な経験を活かし、10年ぶりの甲子園に導きたい」

2018.07.06

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 今年の大阪ナンバーワン左腕として期待されるのが大石 晨慈だ。左腕から投じるストレートは最速140キロ弱も、球速表示以上を感じさせる切れがあり、空振りを奪えるスライダーを武器に昨秋の近畿大会出場に貢献。大阪では指折りの左腕へ成長した。
中学時代はジャイアンツカップ優勝を経験するなど、実績十分の大石はなぜ近大附を選んだのか?濃密な経験を味わった2年間を振り返り、勝てる投手になるためにどんなことを取り組んでいるのかを語っていただいた。

チームメイトの指摘を受け止め、自分の投球を見つめなおした

大石 晨慈(近大附)「濃密な経験を活かし、10年ぶりの甲子園に導きたい」 | 高校野球ドットコム
キャッチボールする大石晨慈(近大附)

 ――羽曳野ボーイズ時代、ジャイアンツカップ優勝するなど、多大な実績を収めた大石投手ですが、近大附に進んだきっかけを教えてください。

大石: 実は関東や他の地方の学校さんからもお話は頂いていたのですが、地元大阪で勝負したい気持ちがありました。その中で、勉強の両立もできて、実績、環境も申し分ない近大附に進むことを選びました。

 ――大石投手はベンチ入りは1年夏からで、さらに背番号1でしたけど、チームを任された時はどうでした。

大石: 全然、結果も残せず1年、2年と来ているので、自分の責任も感じていました。新チームに入ってから、かなり厳しくやってきたつもりです。

 ――下級生の時のピッチングを振り返ると、何が良くなかったと思いますか。

大石: 上級生がいた中でのピッチングは、上級生に甘えていた部分があったので、そういう部分の自分の甘さが結果にも出てきたかなと思います。

 ――新チーム入って、チームメイトから厳しく言われることがあったと聞きましたが、大石投手はその言葉をどう受け止めてましたか?

大石: 1年から背番号をもらって結果も残せていなくて新チームになったわけで、新チームは自分が引っ張って行く立場にならないといけない中で、自分の事でいっぱいになるなど、周りが見えてなかったり、そういう部分でチームメイトからあえて厳しく言ってくれた部分があったと思います。それは期待しているから言ってくれていると思うので、しっかり受け止めて練習の姿勢から変えていこうという気持ちになりました。

 ――では練習の仕方など、ピッチングなど、どのように工夫したのですか。

大石: 普段のピッチングでは、常に厳しい状況を想定して行いました。試合の終盤、ピンチなど、そういう部分を意識しながら捕手と話しあって、配球やどのように抑えていくのかを試合だけでなく、ブルペンからやって行こうと話し合いました。

 ――トレーニング面でも厳しくやってきた面はあるのですか。

大石: ウエイトというか体重を増やす事やランニング量も、ただ走るのではなくて、しっかり目的を持って走る事を意識してやってきました。 たとえば長い距離をだらだら走るのではなく、しっかり持久力というか、瞬発力というか、いざという時に出せるように瞬発力を重点的にやってきました。

[page_break: 大阪桐蔭との対戦と交流で得たもの]

大阪桐蔭との対戦と交流で得たもの

大石 晨慈(近大附)「濃密な経験を活かし、10年ぶりの甲子園に導きたい」 | 高校野球ドットコム大石晨慈(近大附)

 ――ありがとうございます。一つ一つの練習に意味を持たせていったのですね。秋の大会を振り返ると、大体大浪商戦では立石健投手と投げ合い、1失点完投勝利を挙げましたけど、あの時のピッチングは自信になりましたか。

大石:あの試合は、自分の中でも思い通りというか現時点のベストピッチングが出来たと思います。たまたま抑えられたところもありあすし、自分の中でピッチングで甘いところがあり、1点取られてしまった部分があったので、そこまで満足はしてないです。

 ―― そして大阪桐蔭とは、府大会準決勝、近畿大会準々決勝と二度対戦した中で、課題になった事は何ですか。

大石: まず1度目は、自分も向かっていくつもりでいって、単純に力負けを感じて、最終的には投げる球がなくなっていって打たれてしまった部分があったと思います。
 次に近畿大会で対戦した時は、相手を勝手に大きくしてしまって、変に恐れて逃げているつもりはなかったのですが、変に厳しく、厳しく、自分に自信が持てずに自滅していった感じがあります。 自分の野球人生の中でだいぶ大きかったです。

 ――ボール自体の勢いは2度目の対戦の方が、勢いはあったと思いましたが実際は自分自身どうでしょう?

大石: ボールは近畿大会で対戦した時の方が良かったと思いましたが、調子が良かった故に厳しく行こうという気持ちが勝って、四球、四球の悪循環に入ってしまって、ランナーを貯めてしまったところで中軸に回って打たれてしまったと思います。

 ――そういう経験をして2年の冬はどのように課題をもって取り組みましたか?

大石: 秋の大会で出てきた弱さ甘さを、練習からでも克服したかったですし、冬は、台湾遠征で大阪桐蔭の選手と一緒にチームを組んで試合する機会があったので、何か吸収できる部分はないかと探して、見つけた課題を年が明けてから、自分に関してもピッチングやランニングなどの部分を意識してやって来ました。

 ――台湾遠征で選ばれ、何を学んでいこうと思いましたか?

大石: 大阪桐蔭の選手が18人の中で自分と浪商の立石選手の2人だけ選ばれる中で、大阪桐蔭の強さの秘訣や近大附と比べて足りないところを吸収していけるか見ていこうと思いました。

 ――大阪桐蔭の選手達と比べて何が足りないと思いましたか?

大石: オンとオフの切り替えが自分たちのチームには足りないと思って、休んでいる、気を抜いている時は、みんなでワイワイしている感じでしたけど、いざスイッチが入るとなかなかピリッとしていて雑音が入りにくい雰囲気があって、最初は入りにくい部分がありましたけど、入っていくにつれて野球の中では会話であったりできていたと思います。

 ――大阪桐蔭の投手、指導者と交流して学んだ事はありますか。

大石: 柿木蓮選手、根尾昂選手、全国の甲子園で勝っている投手と一緒にプレーして力の差より、ゲームの入り方やうまさが自分と比べて勝っていると思って、単純な力もですが、そういう部分の野球のうまさが足りないと思いました。

 ――また台湾の打者と対戦してどうでした。

大石: スイングが強くて、甘く入れば打たれる感じでしたが、自分の力が全く通じなかったわけではなく、要所、要所で自分のボールで投げ切る事や抑える事が出来たので自信になりました。でも安打を打たれて、ランナーを出して投げているケースが多かったので、勝利することが出来ましたけど、絶対的な勝てる投手ではなかったと思います。

 ――大阪桐蔭の選手と仲良くなる事は出来ましたか。

大石: 野球面で感じていることを、ホテルなどで会話して、吸収できる部分があり、勉強できる部分がありました。特に柿木投手や、根尾選手、横川選手が仲良く出来たと思います。

 ――台湾遠征で得られたことをどうやってチームに還元しましたか。

大石: 今のチームに足りない事、大阪桐蔭と2度対戦して負けているわけで、その差を埋めていかないと勝つことが出来ないわけで、桐蔭にあって自分たちにない物もあるし、自分たちにあって桐蔭にないものもあるので、そこを伸ばしていけば良いと思うし、足りない部分をこれから補っていかないといけないと思って、取り組みました。

[page_break:夏へ向けてストレートを磨き、高校初の頂点へ
]

夏へ向けてストレートを磨き、高校初の頂点へ

大石 晨慈(近大附)「濃密な経験を活かし、10年ぶりの甲子園に導きたい」 | 高校野球ドットコム大石晨慈(近大附)

 ―― 春は登板なしでしたが、夏へ向けてどういうことを行ってきましたか?

大石: 夏へ向けて試していることはあるんですけど、それがなかなかうまくいかないことが多いのですが、夏へ向けて万全の状態で仕上げていきたいと思っています。自分の中で負けない投手をテーマにやっています。

 ―― 藤本監督が話されていたのですが、今年からここまでストレートを徹底的に磨いてきたそうですね。

大石: 自分は変化球でかわせるほど器用な投手ではありません。自分のバロメーターはストレートなので、持ち味であるストレートをしっかりと投げ切れないことには他の球も生きてこないので、そこはこだわってきました。

 ―― ストレートはどうこだわったのでしょうか?

大石: 切れを大事にしました。バッターボックスに立って球速よりも速く感じるストレート。回転数が高く、打者がびっくりするぐらいの切れのあるストレートを投げれればと思います。

 ――ちなみにそのストレートを投げるために、どう握っているのでしょうか?

大石: 僕の場合、ストレートでも人差し指と中指は閉じる握りを小学校の時から続けています。開けると抜けがちなので、(閉じた方が)自分の感覚でもしっかりとくるので、閉じて、両方の指で押し出すように投げています。

 ―― 大石投手は空振りが取れるスライダーも印象的です。いつから武器になったのでしょうか?

大石: 高校に入ってからですね。中学校まではストレート中心だったんですけど、握りは藤本先生から教えてもらい、そして感覚は自分なりにつかんでいきました。大事にしているのはひねらずストレートと同じ腕の振りで腕を振ること。打者から見分けがつきづらいというのはありますが、僕の場合、捻ると感覚が合わないので、腕の振りは真っすぐと同じですが、ボールの軸だけをずらす意識で投げています。
 もともとカットボールを投げる意味合いが大きかったのですが、僕の場合は投げてみたら、変化量が大きかったんです。そのためスピードを落として、変化量とキレがより出るようなスライダーを求めていきました。
 気づいたら、変に捻らず、腕の振りは変わらないので打者からしたら厄介なボールになったと思います。

 ―― ありがとうございます。では夏へ向けての意気込みをお願いします。

大石: 昨秋、近畿大会に行けましたけど、全然実力はないです。周りのチームは倒しに行くつもりで全力でぶつかって来ると思うんですけど、挑戦者のつもりで臨む気持ちを忘れないようにしたいです。6試合を勝って、甲子園に行きたいですし、甲子園では北大阪のライバルに勝てるピッチングをしていきたいです。

文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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