斎藤 未来也(関東一)力強さとスピードを兼ね備えた理想のトップバッターを目指して
50m走で6秒を切る俊足を武器に、1番打者として打線を引っ張る斎藤 未来也選手(関東一)。そのスピードを実際のプレーへ活かすため、どのようなことを心掛けているのか。そして、最後の夏を前に、どんな取り組みをしてきたのかをうかがった。
歴代の選手の中で3本に入る俊足の持ち主
斎藤 未来也(関東一)
「自分の持ち味は足なので、高校ではその特長を活かせるチームに行きたいと考えていました」と、関東一に進学した理由を明かす斎藤選手。レギュラー獲りへのアピールも、やはり足だった。「1年生の時から練習で走るメニューがあった時は『絶対、隣の選手に負けない』という気持ちで走っていました」。
その俊足については、米澤 貴光監督も「歴代の選手のなかでも3本の指に入る」と話しており、快足で鳴らした関東一OBのオコエ 瑠偉選手(楽天)と比較し「オコエはどんどん加速していくタイプなので二塁から三塁へ向かっている時が一番速かったのですが、斎藤は一歩目のスタートが良いので一塁まで到達するのが速いんです」と話す。
斎藤自身もこの一歩目にはこだわりがあるようで「まずは『最初の一歩目を強く踏み出すこと』。そして、『最初の5歩を速く』と意識しています。その後は、とにかく足を素早く回転させて動かすことが速く走るのに必要なことだと思います」
もちろん、打った後は全力疾走だ。「内野ゴロでもショートの深い位置に飛んだら内野安打になるように、野手の正面でもワンファンブルでセーフになるように打った瞬間から全力で走っています。シングルヒットのコースに打球が飛んだ時も外野手の捕球の体勢が悪かったら二塁へ行けるように、長打の時は二塁打ではなく三塁打にするために、どんな時でも先の塁を目指して走るように心掛けています」。
実際に、シングルヒットをツーベースにしたことも何度かあるという。
「2年秋に初めてセンター前二塁打を打って自信になりましたし、それ以降は常に二塁を狙うようにしています」
夏の敗戦が打撃強化のキッカケになる
走塁には足の速さだけでなくベースランニングの技術も必要だ。「ベースランニングでは、できるだけロスをなくすために小さく回るようにしています。例えば二塁まで走る時は一塁ベースの手前で少しだけ膨らみますが、その代わりに一塁から二塁までは直線で最短距離を走れるようにコース取りをします。それから、ベースは踏むのではなく強く蹴って、その反動でさらに加速していくイメージで走っています」。
また、一塁にいる時は盗塁を警戒されるが「リードは相手投手にプレッシャーを与えられるように他の選手よりも半歩大きくとっています」と、自身の存在が走らずとも相手バッテリーの脅威になっていることをしっかりと心得ているようだ。
また、足の速さは守備の場面でも有効に活用されるものだが、米澤監督は「オコエと比較するに足るだけの能力は持っている」と評価。その一方で、「オコエは打球に対してどれだけ速く一歩目の反応ができるのか、そこに楽しみを持って守備についていた。斎藤も同じ事に気が付けばプレーも変わってくるはず」とより一層、高いレベルへ到達することを望んでいる。
1年秋には、ライトのレギュラーポジションを与えられた斎藤選手。秋季大会では15打数9安打と活躍し「バッティングが好調だったのでスタメンで使ってもらえましたが、当時は試合に出たくて必死だった」と振り返る。昨夏も5割を超える打率を残したものの、準決勝で二松学舎大付に敗戦。
この試合では最後のバッターになってしまった。「先輩に対して申し訳ない気持ちでいっぱいでしたし、自分の実力のなさを感じました。気持ちの部分でも相手からの圧力を感じましたし、緊張感に押しつぶされてしまいそうになった場面もあったので、ピッチャーとの1対1の力の勝負で負けないためにも、バッティングを強くしていかなければいけないと思ったんです」
[page_break:昨夏の借りは今年返す]昨夏の借りは今年返す
そこで、昨冬は厳しいトレーニングに励んできた。「下半身を鍛えるためにバーベルを担いでスクワットをしました。負荷を重くしたり、決められた回数が終わっても『あと1回、あと2回』と自分で数を増やして、つぶれるまでやったりしました」。
同時にロングティーで打球を遠くへ飛ばす練習も積み重ねたことで、春を迎えてからは「スイングが速くなって、飛距離が伸びてきました」と手応えを掴んでいる。ただ、春季大会では強い打球を意識するあまり、「バットが遠回りしてしまい、あまり良い成績は残せませんでした」と斎藤選手。
また、フォームについては「今は上から切るようなスイングになってしまっているので、低いライナーやゴロを打つように修正し、バットはコンパクトに振ってインパクトの瞬間だけ力を入れて鋭い打球が飛ばせるようにしたい」と、復調へ向けてスイングの練習を続けている。
東東京大会は目前まで迫っているが、「昨夏の悔しさがあるので、その借りを返したい。1番打者として出塁しなければいけないというプレッシャーはありますが、一つひとつの細かいプレーも大事にして、チームのために気持ちを入れて頑張ります」と、決意を語った。
力強さを増したバッティングに天性のスピードを兼ね備えた理想のトップバッターを目指す斎藤選手。最後の夏へ向けて、ラストスパートをかける。
文=大平明