Interview

2018年の都立の星 吉岡桃汰(東大和南)「神宮球場のマウンドで投げたい!」【後編】

2018.06.29

 この春、最速140キロのストレートと縦に鋭く落ちるスライダーを武器に、34.2回を投げて63奪三振と驚異的な奪三振ペースで、「ドクターK」を襲名した吉岡桃汰投手。前編では中学時代の歩みや投手としての取り組みについて語っていただきましたが、後編では快投を見せた春季大会の投球を振り返っていただきます。

大きな進化をもたらしたサンドボール

2018年の都立の星 吉岡桃汰(東大和南)「神宮球場のマウンドで投げたい!」【後編】 | 高校野球ドットコム
吉岡桃汰(都立東大和南)

 ―― 2年夏はベンチ入りするも未登板。2年秋から背番号10として投げ始めます。

吉岡桃汰(以下、吉岡): この時はまだ乱調気味でした。

 ―― 秋の一次予選の日体大荏原戦では先発をされていますね。

吉岡: そうですね。確か6回、7回まで投げたと思います。初回に4失点をしてしまいましたが、逆にそこでスイッチが入って、その後は5回まで無失点に抑えることができました。自分の中でも、良いイメージで抑えることができたと思います。
 そのあとチームは6回表に逆転をしてくれて、とてもありがったのですが、そこで勝てるかもと油断してしまったんです。変に力が入ってしまって、6回裏に逆転を許してしまいました。あの試合は実力不足というよりも、自滅して負けたと思います。

 ―― この敗戦を踏まえて、どのようなテーマを持って冬の練習に取り組みましたか?

吉岡: 大会が終わって、投手としての実力はまだまだだと実感しました。球速、変化球の質、体力、体づくりと、投手として必要なものをすべて高めていこうと心に決めました。
 秋まではただ漠然と練習していました。体重を増やすことを目標にして82キロまで増量しましたが、今は77キロまで絞りました。
 また1月に右手を骨折してしまったのですが、その時にサンドボールを使ったトレーニング導入したところ、球速や球質が一気に向上しました。

 ―― サンドボールを使ったことでどれくらい球速があがったのでしょうか。

吉岡: 2年の秋から130キロ後半は投げられたので、数キロ程度です。でも僕にとっては大きな変化でした。
 サンドボールがあったから急激に上がったのではなく、体の使い方を理解し、さらにサンドボールを使ったことで良くなったという感じですね。
 2年秋に、体の使い方とかが分かるようになってきました。体重移動の部分で、ヒップファーストや回転軸などが理解できて、それを実行することでフォームのバランスがとれるようになり、結果として球速が上がりました。
 特に変わったのはリリースの感覚です。リリースする際、ボールを潰す感覚で投げる事で自分でも分かるぐらい球質が変わったと思います。

 ―― 「潰すように投げる」。そのリリースはずっと求めていたものでしたか?

吉岡: いや、その感覚はコントロールが悪くなるものだと思っていました。サンドボールによって握力が上がり、潰す感覚が分かってきて、自然とそのリリースが身についたと感じています。

[page_break: 快投を見せた春季大会を振り返る! ]

快投を見せた春季大会を振り返る!

2018年の都立の星 吉岡桃汰(東大和南)「神宮球場のマウンドで投げたい!」【後編】 | 高校野球ドットコム
春季大会では快投をみせた吉岡桃汰(都立東大和南)

 ―― 春季大会のピッチングを振り返っていきます。都立淵江戦では22奪三振でしたけど、どんな心境で臨みました?

吉岡: 3年生になって、最初の大会という事で、緊張もしていたんですけど、半分楽しみな試合でした。立ち上がりは悪かったんですけど、自分がやってきた成果がでた試合だったと思います。

 ―― 正直三振が22個も取れると思っていましたか?

吉岡: 全く思ってなくて、でも直球と変化球には自信があったので、10個ぐらいは取れると思っていました。

 ―― スライダーでの三振が多かったのでしょうか?

吉岡: ストレートが多かったと思います。

 ―― その時の調子はどうでしたか?

吉岡: ストレートが自分の中で走っているという感じがありましたので、気持ちよく投げることができました。

 ―― 公式戦初勝利はどうでした?

吉岡: 緊張はしていましたが、ほっとした心境でした。

 ―― 次の文教大附戦では18奪三振。いかがでしたか?

吉岡: 初戦の都立淵江戦での勝利があったので、それが自信につながって思い切って投げられたと思いますし、1回戦と同じ球場([stadium]多摩一本杉球場[/stadium])でしたので、初回からしっかりと投げられたと思います。

 ―― その試合はストレートと縦スライダ-も良かったですか?

吉岡: そうですね。両方とも良かったと思います。

 ―― 自分の力を出せずに負けた秋の大会と快投を見せた春の大会では何が違ったのでしょうか?

吉岡: 球速が上がったことはもちろんなんですけど、三振が狙いに行って取れるようになったことだと思います。自分のピッチングに安心感が出てきましたし、点数を取られたとしても、心に余裕を持ってピッチングができるようになったと思います。

 ―― 都大会の日野台戦では16奪三振を記録しました。その試合はどうでしたか?

吉岡: 3、4回に失点したと思いますが、それでも気持ちに余裕が生まれるようになって、自分のピッチングはできたと思います。

 ―― 次の試合では都立の強豪・都立小山台との対戦となりました。

吉岡: 都立小山台は都立の強豪です。自分の実力がどれだけ通用するのか、自分の実力や冬練習でやってきた成果をどれだけ出せるのか、そんな思いを持って、挑戦者の気持ちで臨みました。

 ―― 都立小山台には惜しくも敗れてしまいましたが、課題は見つかりましたか?

吉岡: 1回から3回まで自分の中で完璧に抑えることができたんですけど、4回から制球が乱れてしまいました。課題はコントロールと、試合後半の集中力、体力です。また変化球で三振をとれるようにすれば、楽にピッチングができると感じました。

[page_break: 夏では100球前後の完投が理想 ]

夏では100球前後の完投が理想

2018年の都立の星 吉岡桃汰(東大和南)「神宮球場のマウンドで投げたい!」【後編】 | 高校野球ドットコムバッティング練習を行う吉岡桃汰(都立東大和南)

 ―― ここまでの話を聞くと、考えながらピッチングする様子が伝わってきました。そういった意識はいつ頃から持つようになりましたか?

吉岡: 先輩達は秋、春と連続で本大会に出場していましたが、このチームは秋に本大会へ出場できませんでした。その悔しさが原動力になり、変わったと思います。

 ―― 夏に向けて課題は?

吉岡: コントロールですね。コントロールが良ければ、球数が少なくなります。今年の選抜では静岡高校の春翔一朗投手が84球で完封しましたが、自分もコントロールを高めて、100球前後で終えるようにしたいです。
 自分は球数が多くて、淵江高校戦では170球を投げています。奪三振が多いので、どうしても球数が多くなりますが、それは良いことでもあり、反省点でもありますね。

 ―― 170球投げてもしっかりと投げられているということはスタミナには自信があるのでしょうか?

吉岡: どうなんでしょう。勝っていればモチベーションも高まっているので、終盤になっても球速は落ちないと思いますが、夏のことを考えると球数を減らして完投できるようになりたいですね。

 ―― 球数減らすためにどんな意識でピッチング練習に臨んでいるのでしょうか?

吉岡: 今は捕手が構えた場所に投げること、そして変化球でストライクが取れように制球力を上げることを意識しています。

 ―― 現在はどのような練習メニューを行っていますか?

吉岡: 現在はスクワット、ベンチプレスなどの筋トレ系を行っていて体をしっかりと鍛えています。

 ―― では最後の夏の目標を聞かせてください。

吉岡: 西東京は、ベスト8になってからすべてのチームが[stadium]神宮球場[/stadium]でプレーができます。そこまで勝ち上がって、チームの目標であるベスト4を目指したいと思います。チーム一丸となって頑張りたいですし、神宮のマウンドで投げれるようになりたいです。

 初めて出会った吉岡桃汰投手。実際に話をしてみると、想像以上にピッチングのことを考えていて、自分の動きを言葉にして表現できる投手ということに驚かされた。高田監督も「コツコツと努力できる投手ですし、教えたことを継続できる。それがこの春になって実を結びました。また彼は叱られても委縮せず、投げ通せるというか、態度が堂々としています。精神力の強さもあって頼もしいですよ」と吉岡の精神力の強さに太鼓判を押す。
 この夏の活躍だけではなく、将来どんな投手となっているのか、楽しみである。

文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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