Interview

石橋康太(関東一)「甲子園とプロ入りを見据えて。世代屈指の捕手が始めた意識改革」

2018.06.25

 今年の高校野球を代表する大型捕手・石橋康太選手。身長180cm体重83kgの立派な体格から高校通算52本塁打(※6月14日時点)を放ち、。1年夏に甲子園を経験し、現在は打線の中軸を担う一方で、守備の要であるキャッチャーも任されている石橋選手にこれまでの歩みと夏に懸ける思いをうかがった。

華々しいデビューを飾った1年夏

石橋康太(関東一)「甲子園とプロ入りを見据えて。世代屈指の捕手が始めた意識改革」 | 高校野球ドットコム
石橋康太(関東一)

 中学時代は藤平尚真(東北楽天)や郡司裕也(慶応大)を輩出した千葉市シニアに所属していた石橋選手は東東京の名門・関東一に進学した。

「寮があって野球に打ち込める環境で練習に励みたかったんです」と関東一に進学した理由を話す石橋選手。「1年夏から試合に出場する」という目標を掲げて入部したというが、チャンスはすぐに巡ってきた。

「4月の終わり頃、練習で1ヶ所バッティングをしていた時にキャッチャーの数が足りなくなってマスクをかぶることになったんですが、そのままの流れで1打席だけ立たせてもらえたんです。そこでは結果が出なかったのですが、積極性を持って自分のベストのスイングができたこともあって、その後の練習試合から使ってもらえるようになったんです」。

 米澤 貴光監督も「石橋はパンチ力があった」と当時から評価していたこともあり、夏の東東京大会では5番・ファーストとしてスタメン出場。1年夏から公式戦に出るという高校で最初の目標をクリアすると、甲子園でもドラフト1位で日本ハムに入団した広島新庄堀 瑞輝投手から先制打を含む2安打を放つ活躍を見せた。

「甲子園ではそのオーラに飲み込まれそうになりましたが、先輩方がいつも通りの雰囲気を作ってくれました。そのおかげで自分も普段通りのプレーをすることができたと思います」

 もちろん、すべてが順風満帆だったわけではない。12月には左ヒザ半月板の損傷により手術。復帰までに5ヶ月ほどの長期離脱を強いられることになったが、それでも「ケガをしている今しかできないことがある」と気持ちを切り替えた。「それまでできていなかった基礎トレーニングをしっかりとやって体幹も鍛えましたし、キャッチャーとして配球を学びました」。

[page_break:飛躍につながったライバル・野村大樹への想い]

飛躍につながったライバル・野村大樹への想い

石橋康太(関東一)「甲子園とプロ入りを見据えて。世代屈指の捕手が始めた意識改革」 | 高校野球ドットコム石橋康太(関東一)

 こうして翌年の5月に復帰すると、2年夏の東東京大会ではなんと4試合連続ホームラン。マイナスをプラスへと変えるために地道な練習を積み重ねた成果を見せつけたが、この好成績を導いた理由はもう一つあった。それは同学年で同じポジションを務めるライバルの存在だ。
「早稲田実の野村(大樹)選手が1日500スイングをしているという報道を見たので、自分も負けないように自主練習の時間を使って1日600スイングをするようにしました。そこで量をこなしたことが質の良いバッティングにつながり、夏に良い結果を残すことができたのだと思います。野村選手はいまだにバッターとしてもキャッチャーとしても自分より上のレベルにいると感じていますが、自分を成長させてくれている存在なのでとても感謝しています」。

 そして、石橋選手はバッティングフォームを何度も微調整するタイプだが、現在も新しいフォームの習得に取り組んでいる。
「春季大会が終わってからフォームを変えて調子も良かったのですが、バットが遠回りするいわゆる金属打ちになっていたので、もう一度フォームを修正して今はトップからできるだけ素直にバットが出るようにスイングの軌道を意識して振っています。自分はプロを目指しているので、今、金属打ちで結果を残しても意味がないですし、『変化しないと、進化しない』と考えているので、常にレベルアップを目指して挑戦していきたいと思います」。ちなみに、記者が取材した当日の練習試合では2本塁打を放ち
「自信になりました」と一言。この新フォームも順調に馴染んできているようだ。

[page_break:すべての行動は甲子園にいくために]

すべての行動は甲子園にいくために

石橋康太(関東一)「甲子園とプロ入りを見据えて。世代屈指の捕手が始めた意識改革」 | 高校野球ドットコム石橋康太(関東一)

  また、夏に向けて生活のリズムも変えている。

「寮は朝6時起床なんですが、自分は4時50分に起きて1時間ほど朝練でバットを振り込んでいます。早く起きるようにしてからは周囲に目が届くようになりましたし、学校が終わってから練習へ行く時に体が重く感じることもなくなりました。そして、全体練習のあとに自主練習をするのですが、睡眠時間をきちんと確保したいので無駄な時間を減らして1スイングでも多くバットを振るように心掛けています。長い時間でダラダラとやるよりもこのほうが一球を大事にできますし、こうして普段の練習からオンとオフをはっきりさせて集中力を養っているので、試合で打席に立った時もゾーンに入りやすくなっていると思います」。

  守備面に目を移すと、キャッチャーとして夏の大会を迎えるのは初めてとなるが、米澤監督は「肩が強く、捕ってから投げるまでが速い。ワンバウンドのボールも止められるようになってきたので、あとは落ち着いてどっしり構え、チームが勝つためにどうすればいいのかを考えながら投手陣をリードしてほしい」と期待をかける。石橋選手本人は「配球のセオリーを頭に入れながら、バッターの反応を見てリードをしていきたい」と話す。
 また、「春季大会では二塁への送球が上へ抜けてしまったことが何回かありました。送球が悪かったのはリリースがバラバラだったからで、リリースを安定させるためには投げる時の体勢を良くしなければいけませんし、体勢を良くするためにはしっかりと下半身を使って投げる必要があると自己分析しています。感覚だけに頼らず、論理的に理由をつなげていって、それを野球ノートに言葉にして書き込む。そうすることで修正点を見つけて、直していきたいです」。

 昨夏の甲子園では広島広陵の中村 奨成選手(広島)が強打の捕手として注目を浴びたが、石橋選手は「活躍できればそれがベストですが、自分がノーヒットだとしてもチームが勝てればいい。チームが勝つために精一杯のプレーをして、なんとしても甲子園へ行きたい」と決意を語った。高校通算本塁打数では44本だった中村選手を既に超えている石橋選手。最後の夏に自身の最大の目標ともいえるプロ入りへの扉を開くためにも、甲子園という大舞台でアピールしたい。

文=大平明

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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