プレースタイルで選ぶアシックススパイクシューズ I‐SERIES(アイシリーズ)誕生の裏側
メジャー注目の二刀流・大谷翔平(ロサンゼルスエンゼルス)。ここまで、投げては4勝1敗、防御率3.10。打っては打率.282、22打点、7本塁打の成績を残し、(2018年7月22日時点)大谷の存在感は世界に広まっている。そんな大谷翔平のハイパフォーマンスを支えるスパイクのテクノロジーが、アシックスが主に学生に展開するスパイクシリーズ『I-SERIES(アイシリーズ)』の中の1足に搭載されている。その名は『I STAND(アイスタンド)』。
今回、高校野球ドットコムは大谷選手のスパイクと『I-SERIES(アイシリーズ)』スパイクの開発に携わった河本勇真さんにスパイク開発の裏側や大谷選手とのエピソードを聞いた。
大型選手向けに開発された『I STAND(アイスタンド)』
大型選手向けスパイク『I STAND SM(アイスタンド SM)』を持つ河本勇真氏
―― まず今回のI-SERIES(アイシリーズ)の主役、『I STAND(アイスタンド)』が生まれるまでの大谷選手とのやり取りについてお聞かせください。
河本勇真さん(以下 河本) 二刀流をこなす大谷選手は他の選手に比べて身体への負担が大きいですが、2016年からお渡ししていたスパイクについては、「安定感と安心感が得られる。」と気に入っておられました。
一昨年の8月、大谷選手には「今まで以上に高性能なスパイクを、共同で開発させてください」という話をさせて頂きました。我々としては、大谷選手との共同開発で作り上げたスパイクを、一般の選手、特に大谷選手と同様に身体が大きな選手向けに届けたいと考えていました。そうして生まれたのが『I STAND(アイスタンド)』です。
『I STAND SM(アイスタンド SM)』のソール(左)とアッパー(右)部分
―― 『I STAND(アイスタンド)』は大型選手向けスパイクというのが、1つの特長ですが、他のスパイクとの違いはなんでしょうか?
河本 やはり足裏部分全面にクッション材が搭載されていることだと思います。このクッション材は今までの野球のスパイクだとかかと部分のみしか搭載されていないものがほとんどでした。
なぜかといいますと、日本ではP革という文化があるからです。つま先部分が摩耗により破れないよう、P革を充てて、縫ったり釘を打ったりしているのです。前足までクッションが入っているとこういった加工ができないので、かかと部分のみになっていたのです。
しかしそれだと前足はクッションが全くない状態なので、大きな選手になるとやはり足に負担がかかります。しかも金具なので、走った時の突き上げ、衝撃も強いです。
最近は身体の大きい選手が増えてきている中で、スパイクが今のままだと足に負担がかかってしまうことを我々は危惧しています。ですので、全面ミッドソールのクッション性の良いスパイクが必要だと我々は考えています。
―― 大谷選手の意見はどのようなものだったでしょうか?
河本 大谷選手からは、『投手の時は右足一本、バッターの時は左足一本の、軸足で立った時の安定感が一番欲しいです。』という言葉を頂きましたので、重心がかかる中足部分の足裏にスタッドを追加して、左右にぐらつきにくくしました。
かかとについても、従来の大谷選手モデルは3本の金具だったのですが、4本に増やすことで地面をつかむ面積を広げ、安定感を向上させました。この構造は一般向けの『I STAND(アイスタンド)』にも同じ構造を採用しています。
―― 大谷選手との共同開発を経て、『I STAND(アイスタンド)』が主に高校生向けに販売されることになりましたが、最大の魅力について教えてください。
河本 全面ミッドソールのスパイクの課題でもあったP革を付けなくても破れにくくなったのが一番の魅力です。
これはまず大谷選手に提案させていただきました。大谷選手は二刀流をされていますが、投手の時はP革を付けたスパイクを、打者の時はP革を付けていないスパイクをそれぞれ履き分けられていました。
ただP革を付けるか付けないかで、足を曲げた感覚や、重さは変わってくるので、「1足でプレーするのはどうですか?」とアシックス側から提案させていただきました。試して頂いたら、投球により足を地面に擦っても耐久性は問題なく、採用となりました。
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自分の体格とプレースタイルに合わせてスパイクを選んで欲しい
―― 『I-SERIES(アイシリーズ)』は『I STAND(アイスタンド)』を含めタイプが3つあるのですが、なぜ3種類ものスパイクをラインナップしているのですか?
河本 まずこのシリーズのスパイクは、試合に出場するようになってから履いていただくことを想定しています。我々としては試合で履くスパイクは体格やプレースタイルにあった物を選んで欲しいと考えています。そうすることで自分の持つパフォーマンスを存分に発揮でき、さまざまなプレースタイルと体格の選手に対応するために、機能性が異なる3種類のスパイクでタイプ分けをしています。
―― 『I QUICK(アイクイック)』『I DRIVE(アイドライブ)』について教えてください。
左が『I QUICK MA(アイクイック MA)』右が『I DRIVE MA(アイドライブ MA)』
河本 『I STAND(アイスタンド)』は大型選手向けですが、高校生は大型選手ばかりではありません。走攻守においてスピードを求める選手のために、『I QUICK(アイクイック)』と『I DRIVE(アイドライブ)』を開発しました。
それらは安定感よりは、まず軽くあること。そして走塁や守備などの走ることに関してメリットを出せるか考えたのがこの2つのスパイクです。さらに、スピード系の選手を2つに分けた時、一歩目の反応速度や蹴りだし、「初速」を大事にする選手と、トップスピードまでの「加速」を考える選手の2つの考え方が存在します。こういった2つのプレースタイルに対応するために開発したスパイクが『I QUICK(アイクイック)』と『I DRIVE(アイドライブ)』です。
―― 『I QUICK(アイクイック)』はどんなところを工夫したスパイクですか?
河本 一歩目の蹴りだしといっても、当然いろんな方向の蹴りだしがあります。守備は前後左右どこに打球が来るのかわからないので、どの方向にも効率よく蹴りだすために適した金具配置を追求しています。スタートの時に一番力が加わる母趾球部分は金具を2つにしてあります。
もう一つは屈曲です。瞬時に反応して動き出すために、アッパー、ソールともに足に沿って曲がるように設計されているのが特長です。
―― 『I DRIVE(アイドライブ)』の特長を教えてください
『I DRIVE MA(アイドライブ MA)』のソール(左)とアッパー(右)部分
河本 『I DRIVE(アイドライブ)』は直線に対するスピードを追求しています。より効率よく地面に突き刺さり、走った時に地面を捉えるためにシャベルブレードという特殊な形状の金具を採用しており、前へ前へ進むスピード感のあるプレーをサポートします。
自分のためにもスパイク選びをきちんとしてほしいと語る、河本勇真氏
―― 最後に高校球児へ向けてメッセージをお願いします。
河本 上手くなりたい思いは誰にもあると思うので、そのために出来ることをやって欲しいです。
まずは自分に合ったスパイク選びを常に意識して、取り組んで欲しいです。最終的にそれが自分のプレーの結果として返ってくると思います。選手たちの活躍を何より願っています。
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(文・河嶋宗一)