Interview

茂木栄五郎 理想のバッティングは『フライとライナーの中間』【後編】

2018.05.31

 前編では東北楽天ゴールデンイーグルスの茂木栄五郎選手が、長打を放つためにどんな工夫をしているのか。その理論とテクニカルの部分についてお答えいただいた。後編の今回は、そこからさらに深堀をしつつ、打撃強化のキッカケとなる出来事を引き続き一問一答で語ってもらいました。

意識しているのはバックスピンをかけて打球を遠くへ飛ばすこと

茂木栄五郎 理想のバッティングは『フライとライナーの中間』【後編】 | 高校野球ドットコム
ノックを受けている茂木栄五郎選手(東北楽天ゴールデンイーグルス)

―― 近年、『フライボール革命』というのがアメリカからきて、日本でもソフトバンクの柳田悠岐選手なんかはそういう感じだと思うんだけど

茂木栄五郎(以下、茂木) 正直フライを打ちにいっている感覚はなくて、バックスピンをかけて打球を飛ばしているような感じなので、結果的にフライになってホームランになっている打球もあるんですけど、ライナーとフライの間ぐらいが僕の中では理想ですね。そんなにパワーがあるわけではないので、打球を上げ過ぎてしまうと外野フライになってしまうので、ちょっと伸びるぐらいの角度が一番いいのかなと思っています。

―― 去年の前半、ホームランがガンガン出たじゃないですか。あの状態というのは自分の中ではいい状態だったんですか

茂木 しっくりきてないときもあったんですけど、楽な力で打球を遠くへ飛ばせていたので。打席の中でミスショットをすることが少なくて、思った通りにバットが出せて、しかも力感もなく打てていたので、あの打率とホームラン数になっていたんじゃないかなと思います。

―― 少し前までは『バットが縦から入ることが基本』と言われていたんですが、今はそれにこだわらなくてもいい、アッパーでもいいみたいに価値観が変わってきている。その辺はどうなんですか?茂木さんはレベルで振り抜いているなというイメージなんですけど

茂木 あまり上から叩く意識はなくて、本当にボールに対して水平にバットが出るように、そこからボールに当たる瞬間にヘッドが立ってきてくれたらよりスピンもかかりやすいですし、力強い打球も打てるんじゃないかなと思います。

―― バットを振り出す位置は皆、肩口あたりから下に向って行くんですけど、そこからボールに向かっていく状態が平行というかレベルに向かっていくのがいいということですか

茂木 本当にざっくり言うと、点で捉えるのではなくて線で捉えるイメージで打つと、必然的にレベルスイングになるんじゃないかなと思います。

 

―― あと茂木さんのバッティングはフォローが大きいですね。すごく見栄えがする。それは意識して前を大きくしようと?

茂木 小さい頃に父からずっと打撃を教わっていて、そのときに前を大きくしなさいと言われて、練習でもそういう練習をしていたので、それは本当に小さい頃からの練習の成果なんじゃないかなと思います。

―― すごいお父さんですね

茂木 そうですね。教え方は本当に僕に合っていて、父とすごく練習した記憶もありますし、その練習があるから今の僕があるんじゃないかなと思います。

―― 木製バットで打つのは高校からですか

茂木 練習でたまに打つ程度で、大学に入ってから苦労しましたね。

―― 高校時代にもっと木製でやっていればと

茂木 それはすごくありますね。木製に慣れておけば上で野球をやるときすごく生きてくると思います。最初は金属から木への対応の難しさに苦労すると思うので、できれば高校時代に木製で打つことはいいことだと思います。

[page_break: きっかけとなったトレーナーの助言]

きっかけとなったトレーナーの助言

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茂木栄五郎選手(東北楽天ゴールデンイーグルス)

―― 自分のバッティングを変えるきっかけになった試合はありますか

茂木 試合というよりは、3年秋に六大学で首位打者を獲ったんですけど、お世話になっているトレーナーさんに『こんなバッティングをしていたらプロに行けないし、プロに行けたとしても絶対結果を残せない』と言われて、何かを変えなきゃいけないんだと気づかされました。

―― そこから得た結論が、スピンをかけて、ということですか

茂木 はい。スピンをかけてボールを遠くへ飛ばすことでした。3年秋までは、簡単な話、初球の甘い球をレフト前でいいやという風に思っていたので、率は稼げていたんですけど長打がなかなか出なくて。プロのピッチャーの球だったらそれがファールになったり、ただのレフトフライになったりということになってくると思うので、甘い球を一球で仕留めて長打にできるということを目標に練習をしました。

―― おっつけて逆方向に、というのが大学で言われることが多いと思うんですけれども、引っ張りが苦手、内角打ちが下手、という選手が多いですね

茂木 そうですね。バッティングが崩れる原因だと思うので。

―― 茂木さんの場合、基本は引っ張りですか

茂木 打球方向が右中間ぐらいにあるときが一番いいのかなと思います。

 

―― それで外は逆方向という感じになるんですか

茂木 コースに逆らわないバッティングができるのが理想だと思うので、内角球はしっかり引っ張ってヒットにも長打にもできたらいいですし、真ん中にきた球はセンターに返せばいいと思いますし、外角の球は左バッターだったらレフト方向に、右バッターだったらライト方向に打ち返せるのが理想だと思います。コースに逆らわないバッティングを身につけられたらバッティングが楽になるというか、幅が広がるんじゃないかなと思います。

―― 自分の目指している数字とか、理想とする選手がいたら教えてください

茂木 毎年、昨年の自分を超えたいと思っているので、昨年の数字は超えたいです。

―― 目標にする選手はいますか

茂木 昔はいろんな選手がいいなと思っていたんですけど、プロに入ってからは憧れの選手は作らないようにして、本当に自分の実力というかプレーを伸ばして、長所を伸ばして行こうというふうに思っているので、今は憧れの選手はいないですね。

―― わかりました、ありがとうございます

 大学3年生の首位打者をキッカケに、プロの世界で戦うために必要な長打力という武器の必要性に気づいた茂木選手。そこからのたゆまぬ努力が、現在の成績に至った。今後も楽天イーグルスの左の強打者として活躍する姿を見守り続けたい。

文=小関 順二

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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