目次

[1]数値は超俊足。それでも長打力を重視した理由
[2]バッティング動作で大事なのは「遊び」

 東北楽天ゴールデンイーグルスが誇る左の強打者・茂木 栄五郎桐蔭学園‐早稲田大を経て、2015年ドラフト3位を受けて、東北楽天ゴールデンイーグルスに入団。プロ1年目から117試合に出場し、7本塁打を記録。昨年は17本塁打を放ち、年々、本塁打数を伸ばしている。171センチ75キロと決して野球選手としては大きくない茂木がなぜ本塁打を量産できる打者になったのか?その理由は意識の変化にあった。

数値は超俊足。それでも長打力を重視した理由


インタビューに答える茂木栄五郎選手(東北楽天ゴールデンイーグルス)

 茂木 栄五郎(楽天イーグルス)を初めて見たのは桐蔭学園時代の2011年春の神奈川大会、慶應義塾高戦だ。その第1打席で内野ゴロを放ったときから「足が速い選手」という認識が植えつけられた。そのときの一塁到達タイムは4.21秒。私が俊足の基準にする打者走者の各塁到達タイムは「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」だから、高校時代の茂木は十分俊足と言ってもいい。そのランクが早稲田大に進学するとさらに上がった。

 1年時の一塁到達タイムの最速はバントのときが3.95秒、バント以外のときが3.91秒、大学3年時は二塁打のときの二塁到達タイムが7.89秒、4年時は三塁打のときの三塁到達が11.41秒までアップした。そして2016年の楽天イーグルス1年目、4月19日のオリックス・バッファローズ戦を東京ドームで見たとき超弩級のタイムをこの目で目撃した。

 第1打席のバントのときが3.94秒、第3打席の遊撃ゴロのときが3.89秒というのが一塁到達の最高タイムで、第4打席に右中間を抜ける二塁打を放ったときの二塁到達はあっと驚く7.21秒だった。それまでの14年間、野球観戦のたびにストップウォッチで計測してきた中で二塁到達の最速タイムで、おそらく当分抜かれない記録だと思う。それくらい〝超弩級″のタイムなのだが、そういう〝スモールベースボール″目線のプレースタイルがインタビューの冒頭からやんわりと否定された。

 私が「意識して技術を頭に入れて野球に取り組み始めたのはいつ頃からになりますか」と聞くと、茂木は「大学3年から4年になるときにバッティングを大きく変えようと思って練習に取り組みました」と答え、さらに「大学3年まではヒットを打ちに、というか高い率を求めてというか、ヒットの延長線上で長打が打てたらいいなと思ってやっていたんです。でも大学3年から4年にかけてプロを本格的に目指すことになったときに、足が特別速いわけではないですし、盗塁もバンバン決められるわけでもないので」と言ったのだ。

 このときの言葉を最後まで紹介すると、「何でアピールできるかといったらやっぱり打撃で、その中でも長打力が必要だなというふうに自分で感じました。率を残すのもそうなんですけど、打球を遠くへ飛ばすということをテーマにおいて練習に取り組むようになりました」と続いた。

 茂木の目から見ればそれ以降も取材は淡々と続いていたように思えるかもしれないが、「足が特別速いわけではない」という発言は非常に重く私の胸にこたえた。ストップウォッチが示した特別速い脚力を後回しにしてまで取り組んだ「打球を遠くに飛ばす」バッティングとはどういうものなのか、ここから本格的に紹介したいと思う。

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