新田 大輔（徳島インディゴソックス）「学び」を重ね「NPBに入る」

　190センチ右腕・前田 大成（山梨学院大）との大型右腕コンビで鳴らした徳島北の最速143キロ腕・新田 大輔。しかし、彼にとって最後の夏は、ついに[stadium]オロナミンC球場[/stadium]のマウンドに上がることなく終わりを告げた。

　そして今、新田は背番号「58」を背に、インディゴブルーのユニフォームに袖を通そうとしている。地元の四国アイランドリーグplus徳島インディゴソックスに練習生として入団した新田は、その後、選手登録され、前期で公式戦登板。そして8月3日の高知FD戦で、7回無失点の好投を見せ、今後に期待を持たせた。徳島のホープになりつつある新田にNPBを目指すようになった経緯と期待に応える「覚悟」を聞いた。

徳島北高卒1年目で勝負をかける徳島インディゴソックス・新田 大輔投手

―― Q.徳島インディゴソックスの地元・徳島県北島町出身の新田投手。まず、簡単に球歴を振り返ります。野球をはじめた時期はいつですか？
新田 大輔選手（以下、新田）　高校まで野球をしていた父（裕司さん）と北島小2年生の時、テニスボールでキャッチボールをしたのがきっかけです。

　ただ、3年生の時にチームには入ったんですが初戦は「0-36」。それと野球ばかりで範囲を狭めたくなかったので、2カ月でチームは辞めて平日は母（昌子さん）の経営していた学研の塾に通いながら野球は父の組んだメニューを行って、休日は吉野川の河川敷で4時間ほど父と練習しました。

――Q.ということは、はじめから中学では野球を始めるつもりだったのですね。中学は北島中……。

新田　いや、最初は受験して生光学園中に進みました。ヤングリーグに所属する野球部で外野手をしていました。そこから中学校2年の時に北島中に転校して投手に転向したんです。

――Q.そうなんですか！北島中ではどんな選手だったんですか？
新田　この時の監督は北原 雄大先生。弟さんが北原 郷大さん（穴吹～亜細亜大～JX-ENEOSで2016年引退）でした。ですので、監督からもそうですし、オフに帰ってくる弟さんからも投球技術や野球を真剣にやることでの楽しさを教えて頂きました。この時は全国中学校体育大会に出た板野中が強くて、僕らは県ベスト4・16どまりだったんですが、すごくいい日々を過ごせました。球速も131キロまで出ていました。

――Q.高校は地元の進学校・徳島北に進みました。
新田　中学時代も勉強はしていましたし、友人も多くが徳島北志望。加えて当時の僕は自分の名前を知らない監督さんの前でアピールできるタイプでもなかったし、特色選抜で合格できるレベルだったので、徳島北に進学したんです。

――Q.そこで出会ったのが前田 大成投手（山梨学院大進学）。ライバル関係のはじまりです。
新田　前田は常に意識している存在でした。僕は「練習試合ではいつもいいけど、公式戦では……」と評価を受ける中「こじんまりしたくない」ということでストレートにこだわっていたんです。真上から投げ下ろすストレートで3年の6月には143キロを出しました。

　でも、前田は練習でも試合でも一定以上の力を出していました。監督さんにとっては、「ここ一番で力が出せない」自分は公式戦で起用しづらかったと今になって思います。

――Q.結果、背番号「１」は前田投手。新田投手は2番手の構図が続きます。
新田　高校2年の途中から「やりきれない。うまくいっていない」想いは常に持っていました。だからこそ、次の世界ではがんばりたい想いが強くなってきました。

――Q.最後の夏は初戦で川島と対戦。3対5で敗れ新田投手の登板はありませんでした。

新田　途中で投入してもらえるような絶大な力になりきれませんでした。試合が終わった時も「悔しい」というよりも「もどかしい」気持ちでした。

腕を振って投げる徳島インディゴソックス・新田 大輔投手

―― Q.「やりきれなかった」高校野球を終え、次の段階を考える秋になりました。
新田　最初はオープンキャンパスにも行って、大学進学を考えていました。ただ「もどかしい」想いも抱えていたので、夏を終えてすぐ、近所にあったインディゴコンディショニングハウスにも通っていたんです。殖栗（正登）さんとかにも「次のステージで野球をするために必要なこと」を伺いながら。そうすると1カ月くらいで、キャッチボールをしても明らかに球質が変わったんです。以前は20球に1球くらいだったのに、50球のうち40球はいいボールが行ったんです。「これならば、チャレンジできるんじゃないか」と思ったのがきっかけです。

――Q.それが最終的に徳島インディゴソックス入団（練習生として）につながったのですね。

新田　とはいえいきなりNPBは無謀ですし、まだまだ技術を上げないといけないと思いました。進学か、徳島インディゴソックスに進むか。最終段階まで悩みました。

　でも、大学で野球をしてもピークはいつになるか解らない。ならば独立リーグでチャレンジしようと「覚悟」が決まりました。

――Q.改めて聞きます。最終的に徳島インディゴソックスに至った理由は？
新田　「やりきれなかった」想いです。僕は高校野球では答えをずっと探していたんですが、答えが見つからなかった。そして周囲の皆さんも「まだ絶対にいける」と言ってくださった。「このままでは終われない」と思いました。

――Q.練習生の立場ですが、すでにオープン戦でも登板しています。練習をする中で感じることは？
新田　鎌田 （光津希）さんや、竹内（裕太）さんなどを見ると「この実力でも独立リーグなのか」と思います。以前に試合を見たこともあるんですが、身体能力の高い選手も多かったです。（石井 貴）監督ともキャッチボールでコンビを組む機会も多くて、いろいろとアドバイスももらっています。

――Q.その上で現在の課題はどのように考えていますか？
新田　まずはフォームの安定性。現在の変化球はカーブ、スライダー、フォークがありますが、フォークの精度を増したいです。ただ、自分の持ち味はストレート。千賀 滉大さん（福岡ソフトバンクホークス）のようなストレートと、小学校時代からずっと投げてきたフォークというシンプルなスタイルで、アピールしたいと思います。

　ただ、先を見すぎると中身が伴ってこない。大きな夢を掲げても段階がぼやけてしまう。まずは練習生から選手契約。マウンドに上がると段階を踏んだ上で、一気に成長できる基盤を作って「NPBに入る」。1年の中で勝負したい。

　インディゴコンディショニングハウスでNPBに指名された選手たちのトレーニングを見る機会もあったんですが、伊藤 翔さん（埼玉西武ライオンズ）は試合で自分を出せるような余裕を作りながらトレーニングしていましたし、大藏 彰人（中日ドラゴンズ）さんは黙々とトレーニングしていました。栄養学なども含めて「学び」を重ね、成長したいです。

――Q.では、最後にファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
新田　ストレートで押し込み、最後はストレート・フォークで仕留めるピッチングでワクワクしてもらえばと思います。応援よろしくお願いします！

――Q.貴重なお話、ありがとうございました。

新田　ありがとうございました！

文＝寺下 友徳