Interview

笹川 晃平(東京ガス)社会人代表の4番が語る打撃論 「体の使い方を理解しよう」

2018.04.26

 浦和学院(埼玉)では甲子園に3度出場し、3年夏は高崎商(群馬)、聖光学院(福島)戦で2試合連続ホームランを記録。東洋大では4年秋に打率.417、3本塁打で二冠王を獲得し、現在は社会人野球の強豪・東京ガスでプレーしている笹川晃平選手。昨秋は侍ジャパン社会人代表の4番を務めBFAアジア選手権優勝に貢献するなど、活躍を続けている笹川選手に自身のバッティングについて語ってもらった。

高校から大学での打撃スタイルの変化

笹川 晃平(東京ガス)社会人代表の4番が語る打撃論 「体の使い方を理解しよう」 | 高校野球ドットコム
笹川 晃平選手(東京ガス)

 高校時代は「スイングする量が多かった」と、振り返る笹川選手。「チームの方針としてスイングをたくさんやっていて、冬のオフシーズンになると1日2000スイングをテーマにフリーバッティングやティーバッティング、素振りなどいろんな種類のスイングを昼過ぎから夜までやり続けていました」。しかし、当時と現在ではスイングがかなり変わっているという。「高校では、上からV字にバットを振るようにしていました。やはり低いライナーやゴロを打てば相手の守備陣がミスするケースも増えるので、フライは打たないように気を付けていたんです」

 高校では一般的とも言える、ボールの上っ面を叩くようなバッティングだった笹川選手だが、東洋大進学を機にフォーム変更を余儀なくされることになる。「高校は金属バットなので当たれば飛んでいってくれたのですが、大学から木製バットを使うことになったので、それまでのV字で打つフォームだと点で打つような形になるのでボールを捉える確率が低くなってしまいました。そこで、ピッチャーが投げるボールのラインに長くバットが入れられるようにスイングの軌道をレベルスイングにしたんです。

 それによって、詰まってもファウルで逃げられますし、ボールに当たるバットの角度も変わって自然とフライが飛んでいくようになりました」。こうして新たなフォームを手に入れた笹川選手は大学1年時に春季、秋季ともに3本塁打を放って右の長距離砲として注目を浴び、2年春には打率.419で首位打者も獲得するなど東都を代表する選手へと成長していった(※大学1年春から3年秋までは東都2部)。

 また、東洋大では風変わりな打撃練習にも取り組んだ。「ピッチャーに背中を向けるように立って打つ練習をしたことがあります。『こんなフォームじゃ打てないだろう』と思いながらやっていましたが、目的は普段と違う体の使い方をさせることだったんです。正直、この練習が役に立ったのかは分からないですし、同じことを繰り返して行うことはもちろん大切ですが、このようにいろんなことにチャレンジし、いろんな方向からアプローチしていくことで何かを掴むきっかけが生まれるのだと思います。

 自分も何でもやってみたいタイプだったので戸惑いはありませんでしたし、変わった練習を毎日のようにやったおかげで多くの引き出しを作れたのではないかと感じています」。一見、トリッキーな練習のなかにもバッティングを向上させるヒントが潜んでいるのだ。

 そして、現在は社会人野球の東京ガスに所属している笹川選手。普段から、どのようなことに気をつけてバッティングをしているのだろうか。

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体の使い方を理解することで、打撃が上達する

笹川 晃平(東京ガス)社会人代表の4番が語る打撃論 「体の使い方を理解しよう」 | 高校野球ドットコム
インタビューを受ける笹川 晃平選手(東京ガス)

―― Q.スイングスピードを上げるために意識していることはありますか?
笹川晃平選手(以下、笹川) 下半身を意識して、上半身の力を抜くことです。上半身に余計な力が入ってしまうとヘッドが遠回りしてスイングが遅くなってしまうので、リラックスするようにバットを揺らしながら構えて無駄な力が入らないように気を付けています。

――Q.具体的には、どのようにバットを構えているのでしょうか?

笹川 以前はバットを立たせていたのですが、打ちにいく時にバットを寝かせてから振っていたので、今は最初から肩に担ぐように寝かせています。こうして無駄な動作を一つ減らしてフォームをシンプル化し、初めからバット(腕)を出しやすい場所に構えておくことで直球にも変化球にも対応できるようにしています。

――Q.バッティングの際、意識していることは何でしょうか?
笹川 やはり体の使い方です。下半身は上半身よりも力が強いですから、そのパワーを無駄なくバットへ伝えるために、特に内転筋を意識しています。

 そこで、スイング練習をする時にボールを股に挟んでやることもあるのですが、スッと立った状態から小さくステップし体重移動をしてスイング。この時、内転筋がゆるんでしまうとボールが落ちるので、最後まで筋肉を締めるイメージで振っています。また、調子が悪い時は、前へボールを追っかけて打ちにいってしまうところがあるので、そういった悪いクセを修正するためにやることも多いです。

――Q.下半身で力を入れているポイントはあるのでしょうか?
笹川 自分は右打ちなので、右の中殿筋(お尻の上部から側面にある筋肉)あたりに力を入れるようにしています。ここにきちんと力が入っているとフォームが安定してブレないんです。

 そして、中殿筋に力を蓄え、右足を軸にしてスイングする。この時、当然、ステップをして体重移動をしているのですが、自分としては後ろに重心が残っているイメージです。また、ボールをギリギリまで呼び込んで打つのですが、近すぎると窮屈なバッティングになってしまうので、ボールがバットに当たった時、力が十分に伝わるポイントを探して振り込んでいます。

――Q.ギリギリまでボールを引き付けて打つために、どのような練習をされているのでしょうか?
笹川 ティーバッティングでいろいろなことをやるのですが、そのなかでワンバウンドさせたボールを打つことがあります。ボールを地面にバウンドさせているので、高く弾むこともあれば、思ったより弾まないこともある。そういった少しのズレを見極めて打つ練習をすることでバッティングのポイントを近くすることができると思います。

――Q.タイミングはどのようにして取っているのでしょうか?
笹川 左足を上げるフォームなのですが、ピッチャーがボールを離した時には、既に足が付いていて打てる体勢で待っているようにしています。基本、ストレートにタイミングを合わせているので、真っ直ぐが来たらそのまま打ちにいき、変化球が来たら我慢して振るという感じです。

――Q.打席でプレッシャーを感じた時はどのように対処するのでしょうか?

笹川 プレッシャーは感じる方で、大学4年の春は「チームのために頑張ろう」と思っていたのですが、やはりプロを意識する気持ちがあって、スランプに陥ってしまいました。それで、大学卒業後は東京ガスへ進むことを決め、4年秋は「無心」でプレーし首位打者を獲得することができました。無心になるためには打席に立つ時、そのシチュエーションに合わせて自分がやるべきことを考え、気持ちを整理することが大切だと感じています。そうやって迷いなく打席に立てれば、結果も残していけるはずです。

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笹川選手から高校球児へメッセージ

笹川 晃平(東京ガス)社会人代表の4番が語る打撃論 「体の使い方を理解しよう」 | 高校野球ドットコム
バットを振る笹川 晃平選手(東京ガス)

 昨秋は侍ジャパン社会人代表でBFAアジア選手権で優勝。JABA(日本野球連盟)代表として出場したアジアウインターベースボールリーグでは、開幕戦となったウエスタン選抜との一戦の6回、勝負を決める満塁ホームランを右中間へ叩き込むなど活躍を見せた笹川選手。「相手はプロといえどもファームの選手が主体だったので、こちらも社会人のプライドを持って大会に臨みました。個人的には相手バッテリーの配球を読むことを意識して、フルカウントから変化球を待ってみるなどチャレンジすることもできましたし収穫はありましたが、まだまだ上を目指せると思うので満足せずにプレーしていきたいです」

 そして、最後に高校でプレーしている選手のみなさんへメッセージをいただいた。「高校の部活は2年半しかありませんし、練習メニューは監督やコーチから与えられることが多いと思いますが、ただやらされるのではなく自分で練習の意図を考えて理解しながらやってほしい。意味を考えながら意欲を持ってやれば効果に大きな差が生まれるはずです。

 そして、もう一つはいろんなことにチャレンジをしてほしいです。新しいチャレンジをすることで自分の形というものが作られていくと思いますし、自分の形ができればいつもと違う体調、コンディションのなかでもその変化に気付いて対応することができるので、それが安定感のあるプレーにつながっていきます。だから、高校生のみなさんには考えることとチャレンジすることを意識してもらいたいです」

 笹川 晃平選手がアドバイスしてくれた「自分で考えること」と「チャレンジすること」は、誰でもできることのはず。だから、チームメートや様々なメディアから情報を取り入れ、意識を高く持って、日々の練習に励んでほしい。

 

文=大平 明

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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