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第657回 広島東洋カープ・新井貴浩(広島工出身)選手「カープの大ベテラン語るスパイク話」2018年03月11日

【目次】
[1]最初は戸惑いっぱなしだった金具式スパイク
[2]新井貴浩選手から球児へのメッセージ
丁重な挨拶とともにインタビュールームに登場した広島カープ・新井 貴浩選手。スーツに包まれた189センチ、102キロのボディに圧倒されながら名刺を差し出すと、気さくで優しそうな笑顔が返ってきた。
ミズノのアドバイザリースタッフである新井選手はこの日、年に一度おこなわれるミズノアンバサダー会議に出席。会議終了後、貴重な時間をいただけることになった。
「今日はスパイクのお話ですよね。僕は足の大きさは28センチです。体の割にはそこまで大きくないので、サイズに困った経験はないですね」
プロ生活19年で積み重ねたホームラン数は315本。今年41歳を迎える稀代のスラッガーのスパイク話に耳を傾けてみよう。
最初は戸惑いっぱなしだった金具式スパイク

新井 貴浩選手(広島東洋カープ)
まずは新井選手のスパイクに対するこだわりポイントを尋ねてみた。
「スパイクで一番重要視しているのは履いた時のフィット感です。足の横幅があるタイプなので、ストレスが足にかからないよう、幅は広めにつくっていただいています。重量に関しては軽い方が好みですが、裸足の感覚に近いような、軽すぎるタイプは苦手で。足を売りにしているタイプでもないですし、多少の『スパイクを履いている感』はほしいので、少し軽めくらいがいい。アッパー素材に関しては手入れがしやすい方が好きという程度で特に強いこだわりはないです」
歯が金具式のスパイクを初めて履いたのは中1の時。小学生時代に使用していたスタッド式との感覚の違いに「最初は戸惑った」という。
「歯が金具になることによって、地面との接地面積が少なくなったせいか、『不安定だな。捻挫しそうでこわいな。なんだか落ち着かないな』と感じたことをよく覚えています。極端にいうと、金属の下駄を履いてるような感覚。打席に立っても歯の分だけ目線が高くなる。たかだか1センチ程度のことなのに投手方向を見た時の視界がずいぶんと変わった印象がありました」
しかし履き慣れてしまうと、金具式スパイクの威力を感じずにはいられなかった。
「歯が地面にグサッと刺さるので、小学校時代に履いていたスタッド式とはグリップ力がぜんぜん違う。土を噛むように走ることができますし、打撃面でも踏み出した足をしっかり踏ん張ることができ、鋭く体を回転させることができる。金具のスパイクと野球のプレーとの相性のよさを実感しました」
スパイクの歴史は進化の歴史
「買ってもらったスパイクは大事に長く使っていた」と回想する新井選手。
「昔の金具は摩耗してすぐに擦り減ってしまうので、歯が短くなるたびにこまめに取り換えていた記憶がよみがえります。時々、金具を固定するためのねじがゆるんだ状態でプレーしてしまい、いつのまにかねじがとれてしまって金具がブラブラしていたこともありました。現在は金具をねじで固定する方式ではなく、埋め込み式が主流。歯も摩耗しにくい素材になり、金具やねじを交換する必要がなくなった。樹脂底の性能も昔に比べたら格段に上がりました。昔は履き始めが硬く、足になじむまである程度の期間を要したので、革底のスパイクの方が好きでしたが、今どきの樹脂底は最初から弾力、柔軟性があり、なじませる必要がなくなった。今ではすっかり樹脂底派。スパイクの進化をソールの部分でも実感します」
スパイクの歯の数は前方に3本、かかと側に3本を配置した6本歯が長らく球界の常識だったが、1990年代に入ると、前方の歯の数を増やしたスパイクが登場。新井選手も前方に6本の歯を搭載したミズノの9本歯スパイクを長きにわたって愛用している。
「前に歯が3本増えたことによって土を噛む感覚、グリップ力が相当上がった感覚があり、走攻守のすべてにおいてプラス効果を実感しました。今となっては6本歯のスパイクには戻れない。多本歯スパイクの登場はまさに革命でしたね」

- 新井貴浩(あらい・たかひろ)
- ポジション:内野手
- 身長:189センチ102キロ
- タイプ:右投げ右打ち
- 生年月日:広島県
- ■選手名鑑
新井 貴浩 - 上記データは掲載時のものとなります。