目次

[1]ケガの時にこそ「冷静に自分を見る」
[2]日本シリーズ第6戦の本塁打に秘められた「5割論」

 クライマックスシリーズファイナルステージでの4試合連続本塁打に、日本シリーズ第6戦9回裏に横浜DeNAベイスターズの守護神・山﨑 康晃から放った起死回生の同点アーチ……。2017年・レギュラーシーズンでは2度の長期離脱に見舞われても、「大舞台に強い」福岡ソフトバンクホークスのキャプテン・内川 聖一の真骨頂は健在だった。
 では、内川選手はなぜここまで大舞台で絶対的な強さを発揮できるのか?今回は高校最後の夏をはじめ、球児の皆さんが必ず直面する「大舞台」で力を出す方法を、内川選手自身の観点でメンタルと栄養学から、さらに「あの」日本シリーズ第6戦の本塁打に至る考え方も本邦初公開。
 前編では「緊張」を10割を超える「MAX」の力に変える考え方と、その考えを支える食事について話してくれた内川選手。後編では長期離脱時の栄養、メンタルコントロール、そして日本シリーズでのホームランについて語って頂いた。

内川 聖一選手(福岡ソフトバンクホークス)「大舞台で力を出す」メンタルと栄養学【前編】からよむ

ケガの時にこそ「冷静に自分を見る」

――クライマックスシリーズでの4試合連続本塁打、日本シリーズ第6戦での本塁打などポストシーズンでは大活躍だった内川選手ですが、2017年のレギュラーシーズンは2度のけがによる長期離脱がありました。まず、その時の栄養摂取はどのようにしていたのですか?

内川 聖一選手(以下、内川): 僕ら(35歳)くらいの年齢になると、休んでいる間に体重を増やすようなことはあってはならないんです。ですから、こまめに体脂肪や筋量は計測して、トレーニングの部分でもシーズン中とは違ったトレーニングをしました。
 どうしても運動量が落ちるので、そういったちょっとした工夫はしました。

――最終的にクライマックスシリーズ、日本シリーズの活躍につながるような要因は、今振り返ってみると、その中にあったのですか?

内川:(7月25日に左手母指基節骨尺側基部の剥離骨折が判明した時)「2カ月は(試合に出場することは)厳しいでしょう」という診断でした。その時僕は正直「これではクライマックスシリーズや日本シリーズに出ることも厳しい。間に合わないかな」という感想を最初に持ったんです。もちろん、ケガの回復を早めるための努力は必要だと思いましたけど。
 となると、張り詰めた気持ちを2カ月持ち続ける必要はない。かつ真夏でしたから。しかも左手は固定されているのでできることも限られている。ですので、僕は筑後の2軍施設で散歩や炎天下での階段昇り降りをしつつ、こんなことを考える時間があったんです。
 「俺、シーズン前にこういうバッティングをしたかったよな?こういう形で打とうとしていたよな?」

――なるほど。

内川:どうしてもシーズン中だと、今の自分の状態や、過去の自分、その日の対戦相手など、いろいろなことを考えてしまうし、考えなくてはいけない。細かい微調整がすごく必要になってくるんですよ。
 でも、けがをしていた時期は対戦相手もなく、過去の自分ともデータを通じしっかり向き合える。そこで「俺、こういうバッティングをしたかった。もうちょっと、こう打ちたかった」ということを思い出して日々を送れた。これが僕にとってプラスだったと思います。


内川聖一選手(福岡ソフトバンクホークス)

――では、「こういうバッティングをしたかった」とは具体的に言うとどんなバッテイングになりますか?

内川:「もっとボールに対してシンプルに打つ」ということです。技術的な引き出しは長年やってきたことでたくさんあるので、ボールにバットをどうぶつけるとか、トップをどうするのかとかは毎日変化しながらやっていくものと思っていたんです。「でも、それは違うな」と。
 「もっとシンプルに構えて、動きを少なくして。『バン』とボールに力でなく、スピードで打ちたい。そういう感覚で今シーズンの最初にやっていたな」と思い出したんです。トップからボールのインパクトまでの速さ・鋭さをもう一度、求めないといけない。そう思ったんです。

――内川選手に言われてみるとクライマックスシリーズと日本シリーズの本塁打はまさにその形でした。

内川:力でなく、自分のバットがホームランになる角度で入り、打球に角度が付いてホームランになってくれる。これが僕のホームランの特長だと思います。「シンプルにバットを引いて、出して、角度が付いてホームラン」というイメージで打ちました。

――そう考えると、高校球児にもよくある「けがをした」際に振り返る時間は大事ですね。

内川:大事だと思います。しかも実は、自分が実際に打たなかったり、投げなかったりすると「こうやって打ちたいな。こうやって投げたいな」といった、いいイメージが湧いてくる。他の選手の姿を見ると「ああ、アイツのこういうところがいいよな」と発見できる。
 冷静に一歩自分を引いてみることはプレーしないからこそできることなので、休んでいる時期をマイナスにせず「今度、自分が復帰した時には過去の自分よりプラスになってやろう」と思いながら、生活してもらえればと思います。
 現に自分も高校時代(大分工)時代はそうでした。踵の手術も3回したし、プレーできない時間もあった。その時、自分が持っていた感情が「今の自分と同じ」かと言うとそうではありませんが、当時「普通に野球ができる環境はありがたい。こんな幸せなことはない」と思えたことが、今に至るきっかけになっています。
 日々の生活の中で「なにか自分が得るもの」を見つけることが、すごく大切なことだと思いますね。

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