第648回 内川 聖一選手(福岡ソフトバンクホークス)「大舞台で力を出す」メンタルと栄養学【前編】2018年02月22日

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【目次】
[1]「緊張」を受け入れ、「MAX」の力を出す
[2]「MAX」を発揮するために不可欠な体調管理

 2017年のクライマックスシリーズファイナルステージでの4試合連続本塁打に、日本シリーズ第6戦9回裏に横浜DeNAベイスターズの守護神・山﨑 康晃から放った起死回生の同点アーチ……。2017年・レギュラーシーズンでは2度の長期離脱に見舞われても、「大舞台に強い」福岡ソフトバンクホークスのキャプテン・内川 聖一の真骨頂は健在だった。
 では、内川選手はなぜここまで大舞台に絶対的な強さを発揮できるのか?今回は最後の夏をはじめ球児の皆さんが必ず直面する「大舞台」で力を出す方法を、内川選手自身の観点でメンタルと栄養学から、さらに「あの」日本シリーズ第6戦の本塁打に至る考え方も本邦初公開で語って頂いた。
 前編では「緊張」を、10割を超える「MAX」の力に変える考え方と、その考えを支える食事について、内川選手の持論が明かされます。

「緊張」を受け入れ、「MAX」の力を出す


内川聖一選手(福岡ソフトバンクホークス)

――2017年はクライマックスシリーズでの4試合連続本塁打、日本シリーズ第6戦での本塁打。WBCでも活躍された内川選手。このような緊張する大舞台で力を発揮するために、どのようなことを心掛けているのでしょうか?

内川 聖一選手(以下、内川):僕は「緊張」という言葉をプラスに考えています。
 たとえば、よく緊張している選手に皆さんは「落ち着け」とか、「いつも通りやれば大丈夫」という風に声をかけると思います。でも本当は、「いつも通りの状況でない」から緊張し、不安になったり、いろんな感情が起こるわけです。
 ですから僕は、今そこに起こっている状況を無理に引き戻すことに自分のエネルギーを使うよりも、「緊張している。不安だ。どうにかしなくちゃらない」ということを受け入れて、受け入れた自分で勝負をしなくてはいけないと考えています。
 ですから、緊張したら緊張したままでプレーすればいいですし、不安だったら「俺、不安なんだ。でも、それでもやらなくてはいけない」と思った方がいいです。
 そして「いつも通りやれ」と言われても、いつも通りの力。よくても「いつも通り」の10割しか出ない。でも、緊張がかえってプラスになることもあるんです。

――緊張していることで、様々なことが高まることもある。

内川: そうです。ですから、2017年のクライマックスシリーズ4戦連発も、日本シリーズ第6戦のホームランも、いつも通りの僕だったら打てていないかもしれないんです。

――実際、あの場面では緊張されていたのですか?

内川: 「緊張しかない」です。緊張していますし、不安ですし……。僕はマイナス思考の人間ですから「失敗したら嫌だな」とか「ここでアウトになったら」ということを先に考えるんですよ。でも、そういう自分を受け入れた上で、どう力を出すのか?ということはずっと考えてやってきました。
 自分は精神的に強い人間だとは決して思っていません。「弱い自分」を認めつつ、「自分がどうするのか、どう強くするのか」を考えてやってきたつもりです。


日本シリーズ第6戦・起死回生の同点アーチについて解説する福岡ソフトバンクホークス・内川 修一内野手

――2017年はWBCもありましたが、緊張はそれらの頂点のような感じですか?

内川: そうです。世界一を争い、ましてやほとんどの選手が対戦経験がない。やったことのない球場、気候、相手。ビデオ、データは入ってくるにせよ、生で見たことのない環境でやらなくてはいけない。
 ということは、自分の感覚や持っているものをMAXに高めた中で試合をやらないとなかなか勝つことはできないんです。

――内川選手がそういった境地に達するようになったのは、いつごろですか?

内川: ここ1・2年の話かもしれないですね。
 僕は過去、クライマックスシリーズでMVPを3回(2011・2015・2017年)、日本シリーズでも1回MVP(2014年)を取らせて頂きましたが、それも同じ心境で獲れたものではなく、毎回違う心境でやってきたものなんです。ですから、2017年のクライマックスシリーズMVPも過去の自分から上乗せされて獲れたものとだと思います。
 僕も最初はいろいろな方法を試していました。全部入り切った中で結果を出すことを試してみたり、一歩落ち着いた状態で冷静になれるかをやってみたり。いろいろな成長や失敗を繰り返す中で今の自分がある。最初からうまくいくことはないと思います。

――そういった心の持ち方に、技術、体調管理が加わっていくイメージですか?

内川: そうです。僕らの場合、クライマックスシリーズや日本シリーズ、WBCといった試合は極限状態の中で行われるので、そこで「どうやってバットを振ろう」とか「どうやって身体を動かそう」といったことは考えてないわけです。
 では、僕たちが何で数多く練習したり、形のことを一生懸命やるかというと、自分が頭の中で意味が解らなくなっても、自然とそういった動きができるようにやらなくてはいけないから。ですから打席で「手がどうなって、身体がどうなって」と考えているうちは、僕は「まだまだだ」と言いたい。極限状態の中で身体が自然に動いて結果が出てこそ、「練習の成果だ」と思いますね。

――過去のインタビューでも内川選手には打撃理論について語って頂きましたが、最終的にはその理論が自然に出せるようにしなければいけない。

内川: 極端に言えば自分が頭の中でわけがわからなくなって、入場行進で足と手が一緒に出てしまうような緊張感であっても、自分のプレーが出せないといけないんです。「いつも通り」と言われても、「いつも通り」と状況が違うんですから。
 周りがいつも通りじゃないんですから、自分自身も「いつも通りじゃない」状況でやらなくてはいけない。僕はそう思ったんです。
 ですから、指導者の方が「試合と同じ気持ちで練習しろ。試合と同じような気持ちでやれ」と言われるのは「試合の時にそういった状態になるから、練習からそういった気持ちでやれ」ということなんです。「いつも通り」できるレベルを高めるために練習をするんです。
 「いつも通り」と言われると高ぶったものを抑えてプレーするイメージがあると思いますが、僕は逆に高ぶった気持ちの中でどう頑張れるかをやっていった方がいいと思いますね。

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プロフィール

内川 聖一
内川 聖一(うちかわ・せいいち)
  • 福岡ソフトバンクホークス
  • 経歴:大分工-横浜ベイスターズ-福岡ソフトバンクホークス
  • ポジション:外野手
  • タイプ:右投げ右打ち
  • 身長体重:185センチ93キロ
  • 生年月日:1982年8月4日
  • 上記データは掲載時のものとなります。
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