徳島インディゴソックス・大藏 彰人投手(中日ドラゴンズ育成1位指名)挫折を越え、野球愛を叫び、開けた「NPB」の扉
さる10月26日に行われた「プロ野球ドラフト会議 supported byリポビタンD」で中日ドラゴンズから育成1位指名を受けたの徳島インディゴソックスの最速147キロ大型右腕・大藏 彰人。実はこの大藏投手、中日ドラゴンズ・中田 宗男スカウト部長が入団合意会見で「やっと本格化してくれた」と表現したように、大垣西高では岐阜県屈指、愛知学院大3年までは愛知大学野球連盟屈指の右腕として鳴らした人物である。
では、彼はどのようにして挫折を越え、野球愛を叫び、NPBの扉を開けたのか?今回は愛知学院大4年での1年間、徳島インディゴソックスでの1年間、計2年間を中心に語ってもらった。
大学監督からの「救いの手」と前期の「蓄積」
大藏 彰人投手
――プロフィールにもありますが、愛知学院大3年春までは順風満帆だった大藏彰人投手の野球人生。ですが、大学3年秋からは苦しい時期が続きました。
大藏 彰人(以下、大藏) はい。3年秋にはチームを2部に落としてしまって、4年生ではケガ。一時は野球を辞めようとも思っていたくらいでした。 ただ、そこで木村(孝)監督に相談したら、日本ハムファイターズでチームメイトだった縁から、当時・徳島インディゴソックスの監督だった中島 輝士さん(2017年は韓国:ハンファ・イーグルス一軍打撃コーチ)に話をして頂いて、最終的に入団が決まりました。
――となると、木村 孝監督あってこその徳島インディゴソックス入団だったわけですね。しかしながら、前期は2試合のみの登板。そこから後期急浮上しました。
大藏 前期の香川オリーブガイナーズ戦で先発機会をもらうも自滅して練習生に落とされた時、養父 鐡(前)監督から「試合はその試合しかない。前の試合なんて関係ない。マウンドでは気持ちを入れて投げろ」と言われたことが大きかったです。それ以降、自分の中で心を整えてマウンドに立てるようになりました。
――同時に、ウエイトトレーニングにも前期は地道に取り組んでいました。
大藏 自分の弱点はずっと解っていたんです。身体が細く、筋力がないこと。「ここに何をしに来たのか、プロとして何をすべきか」を考えて、ウエイトトレーニングと食事トレーニングには取り組みました。あとはショルダートレーニングやストレッチにも目を向けてけがをしない身体づくりにも取り組みました。
――他に具体的には何をやっていきましたか?
大藏 簡単なスクワットを何種類かやって下半身も鍛えたことにより、ウエイトトレーニングで付いた上半身の力が連動して、後期になるとリリースで力が入るようになりました。
食事面で言えば、サプリメントを使うことと体重を増やすプロテインに変えて、食事の回数を変えました。これまでは一日3食を多く摂っていたものを、普通の量で一日6食にしました。体重も入団時の72キロから88キロになりました。
球速もアベレージで5キロ上がりましたし、状態も安定するようになった。監督をはじめ、首脳陣の皆さんから身体を大きくする指導をされたことも大きかったと思います。
大藏 彰人投手
「伊藤 翔」の長所を成長に採り入れる
――さらに徳島インディゴソックスでは同じNPBを目指す投手たちとの切磋琢磨によって、学ぶこともあったと思います。
大藏 伊藤翔(埼玉西武ライオンズ3位指名)や、(ハ・)ジェフンといった身近に球速の速い投手がいたことがよかったです。150キロを投げる投手たちを観れたことで投げ方を自分の中に採り入れることもできました。(伊藤)翔とかがいたことで自分も成長できたと思います。
――フォームの部分をもう少し詳しく教えてもらっていいですか?
大藏 (伊藤)翔は身体の軸回転で投げる投手なんですが、倒れそうになっても軸を前に出して回転して投げる。そこは勉強になりました。僕はこれまではリリースで力を入れることだけを考えていたのですが、まずはキャッチボールから身体の回転を速くして、次にリリースを意識するようにしたことで、ボールの勢いは後期に増しました。
中日ドラゴンズに入っても、先輩たちのフォームや練習方法は貪欲に吸収していきたいです。
――その実感を得られた試合はありますか?
大藏 8月26日、四国コカ・コーラボトリングスタジアム丸亀での香川オリーブガイナーズ戦です。この試合は3回まで毎回点を取られたんですが、4回以降は自分の思ったような投げ方ができました。
「徳島」で得たものを、ナゴヤドームで発揮する
――結果、9月・10月の飛躍が利いて中日ドラゴンズ育成1位指名。そんな大藏投手にとって四国アイランドリーグplusと徳島の地はどんな場所でしたか?
大藏 僕自身、一度はあきらめてかけていたNPBに導いたくれt場所。学生時代ではできなかった経験をできましたし、この一年間は、これまでの野球人生の中で一番濃かったです。
徳島は人たちもみんな暖かく、自然も豊か。野球もやりやすかったですし、雑念も一切入りませんでした。(養父)監督さんも明るい方だったので、自分も練習を前向きにできました。
――次に四国アイランドリーグplusや独立リーグからNPBを目指す選手たちにメッセージがあれば、一言いただけますか?
大藏 僕自身、前期はほとんど投げられていないのに、ドラフト指名を頂けたのは前期に練習を人一倍したからだと思っています。誰にでもチャンスはあるリーグだと思うので、練習をまずはしっかりやって、チャンスをつかんでほしいと思います。
――では最後に、中日ドラゴンズでの意気込みを聴かせてください。
大藏 大学2年先輩で、とてもお世話になった源田壮亮さんとはぜひプロの世界で対戦して恩返ししたいです。「ミスは誰でもする。次に取り返せばいい」は自分の心に残っています。
そして四国アイランドリーグplusでは外国人とも対戦した中、右打者に対しても左打者に対しても強いボールを内角に投げられるのが自分の強みだと思っています。いすれは「似ている」と言われる福岡ソフトバンクホークスの武田翔太さんのように、世界で戦える投手になりたい。
プロで活躍するためにここまでやってきたので、マウンドで結果を出したいですね。
(文・寺下 友徳)