Interview

吉田 正尚選手(オリックス・バファローズ)後編「身体が小さくてもホームランは追求できる」

2017.12.05

 身長はプロ野球選手としては小柄な部類に入る173センチながら、豪快なフルスイングから放たれる飛距離満点のホームランで野球ファンを魅了するオリックス・吉田正尚選手。プロ2年目の今季はルーキーイヤーに続き、腰の故障による長期離脱を余儀なくされ、64試合の出場にとどまったが、228打数で12本塁打をマーク。フル出場を果たせれば本塁打王争いに名乗りを上げることが予想される若き和製大砲に「ホームラン」のテーマをぶつけるべく、大阪市此花区に位置するオリックスの選手寮「青濤館」を訪ねた。

 後編では、ホームラン打者になるために必要な要素や、ホームラン打者を目指す球児たちにメッセージをいただきました。
吉田正尚選手(オリックスバッファローズ)前編「自分で見つけたスイングが一番強い」から読む

2017年型フォロースルーが生まれた背景

吉田 正尚選手(オリックス・バファローズ)後編「身体が小さくてもホームランは追求できる」 | 高校野球ドットコム

吉田 正尚選手(オリックスバッファローズ)

――浮力を生む目的で、ボールの中心のやや下にバットを入れ、バックスピンをかけることを意識することもあるのでしょうか?
吉田 正尚(以下、吉田):練習ではいろんなことを試すので、その一環でバックスピンをかけるスイングを意識したりすることはありますが、試合であえてボールの下部分を狙うことはないです。インパクトの際の意識は、バットの中心とボールの中心を衝突させ、バットにボールが長く引っ付いた状態で乗せて運んでいくようなイメージ。
その結果、ボールの下にバットが入り、自然にバックスピンがかかった高弾道のなかなか落ちてこないタイプのホームランになることもあれば、ボールの中心近くを叩いてのドライブがかかったホームランや弾丸ライナーのホームランも生まれたりする。いろんなパターンの弾道が結果的には出現しますが、試合でやろうとしていることはシンプルに「ボールの中心を強くたたく」です。

――今季はインパクト後に左手を離し、右手一本で大きくフォローをとるシーンが増えたことも強く印象に残りました。
吉田:フォローで左手を離すことは去年の秋くらいから練習で意識して取り組んでいました。飛距離が増して、もっとバッティングがよくなるんじゃないかという感覚もあったし、体への負担も減らせるんじゃないかという期待もあった。打撃の幅が広がることにつながれば自分にとってプラスになりますし、練習でトライしてみようかと。

――前回のインタビューでは「基本、フォローは意識していない。あくまでも打った後の自然な結果」とおっしゃっていましたが、そこに意識を入れていったということですか?
吉田:意識を入れたのは練習の時だけです。試合では「手を離そう」という意識はありませんし、「フォローは打った後の結果」なのは今までと変わりませんが、練習で意識して取り組んだことで、試合の中で左手が離れたフォローになるケースが自然と増えていった。でも打つコースによっては手を離さずに最後までスイングしたほうがいいときもあると思っていますし、必ずしもすべてのスイングで手を離すことがベストの形とも思っていない。自分に合う形は常に模索しているので、もしかしたら来年はまた手を離さないスイングに戻っているかもしれません。

[page_break甘い球を逃さない打者になるためのポイントとは]

甘い球を逃さない打者になるためのポイントとは

吉田 正尚選手(オリックス・バファローズ)後編「身体が小さくてもホームランは追求できる」 | 高校野球ドットコム
吉田 正尚選手(オリックスバッファローズ)

――ホームランを量産できる打者を目指す球児に「これだけは必ず押さえておこう!」といいたくなる要素はありますか?
吉田:甘い球を逃さない打者になることは不可欠な要素なんじゃないかと思います。いいピッチャーになるほど、失投は少ないですし、追い込まれてしまうとホームランはおろか、ヒットを打つことさえ難しくなってしまう。数少ない甘い球を見逃すことなく、自分のベストスイングで強く振れる打者になることはホームランを量産するための大前提だと思います。

――甘い球を逃さず振っていけるバッターになるためのポイントはありますか?
吉田:ピッチャーが投げ込んでくる投球のすべてをスイングするつもりで打ちにいくことです。打ちに行きながら打つべきボールじゃないと判断したら見逃す。このアプローチを常に行う。甘い球はどこでくるかわからないわけですから、常に100パーセントの準備をしておくことがなにより大事になってくる。ぼくは「打ちにいって見逃せるバッター」が一番強いと思っています。

――100パーセントスイングするつもりで打ちに行きながら、打つべきでないボールと判断したら振るのをやめる。言葉にすると簡単そうですが、心のどこかに「次は甘い球はこないだろう」という気持ちが入り込むと実行できなくなりそうですね。
吉田:そうなんです。案外これが難しい。ぼくも100パーセントの準備ができるバッターを目指していますが、今シーズンはできないケースが何回もありました。

――そうだったんですか?
吉田:去年よりも警戒度が増したせいか、今年は初球をボールで入ってくる配球パターンが多くなったんです。そういう攻め方が続くと「この打席も初球はボールなんだろうな」といった気持ちが生まれてしまい、初球の甘いストライクに手が出ないことが度々あった。手を出せばホームランになったかもしれないのに、100パーセントの準備ができていなかったばかりに振るチャンスさえも手放してしまうのはあまりにももったいない。100パーセント打ちにいった上で見逃すことの重要性をぼく自身、再認識したシーズンでもありました。

[page_break「打てると感じた球を打っていく」のが正尚スタイル]

「打てると感じた球を打っていく」のが正尚スタイル

吉田 正尚選手(オリックス・バファローズ)後編「身体が小さくてもホームランは追求できる」 | 高校野球ドットコム

吉田 正尚選手(オリックスバッファローズ)

――吉田選手は球種やコースにヤマを張りながら打つタイプですか?
吉田:球種に関しては、カウントや状況、投手のタイプなどを考慮しながら「ストレート8、変化球2」といったように「何対何」というイメージを持って投球を待ちますが、コースはさほど意識しないです。基本的には「打てると感じた球は打っていく」というスタイル。「打ちにいった、タイミングも合ってる、あ、これ打てる、よし打つぞ」という感じですね。

――打てると思ったら打つ。非常にシンプルです。
吉田:もちろん、これはぼくのやり方であって、こうしろと言っているのではありません。相手バッテリーの配球を読みながら球種・コースにヤマを張っていくスタイルでもいいと思いますし、得意なコースをひたすら待つスタイルでもいい。大事なのは自分のスタイルを築くこと。スタイルの確立がホームランを打つ確率を上げることにもつながっていくと思う。

――最後にホームランを打ちたいと願う球児たちにメッセージをお願いします。
吉田:ボールに強い力を加えることができなければボールは遠くに飛びませんが、「強い力の加え方」は万人共通ではなく、人によって異なる。強く振るという意識を常に持つ中で、速くて鋭いスイングを身につけるとともに、ロングティーなどの練習を通し、強い力をバットを介してボールにもれなく伝えることができるコツを模索していってほしい。すぐには見つからないかもしれないけど、必ず継続する中でヒントや答えは出てくるはずです。

 ホームランを打つためには体が大きく、パワーがある選手のほうが有利なのは確かでしょうが、いくらパワーがあっても、そのパワーをボールにきちんと伝えられなければ意味がありません。裏を返せば、体が小さくてもうまく体を使って、もっている力をフルにボールに伝えることができれば遠くへ飛ばすことも可能になる。身体が小さいからとホームランを追求することを諦めるなんてあまりにももったいないと思ってしまいます。
メジャーでは今季自身3度目の首位打者に輝いたアストロズのホセ・アルトゥーベ選手が168センチというメジャー屈指の低身長プレーヤーながら、2年連続24本塁打を記録しています。体が小さいぼく自身、勇気づけられますし、すごいなぁ、かっこいいいなぁと思う。身体のサイズなんて気にせず、自分を信じ、「強く振る」という世界をひたすらに追求する。その先には「ホームラン」という素敵な世界がきっと待っているはずです。

(文・服部 健太郎

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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