Interview

笠松 悠哉(立教大)「三振か、ホームランかの割り切りで勝負したい」

2017.10.23

 今年の東京六大学で、ドラフト候補の1人として、注目されるのが笠松悠哉だ。大阪桐蔭時代では甲子園通算3本塁打を打つ活躍を見せ、森友哉(埼玉西武)とともに春夏連覇、4季連続の甲子園出場を経験。時からスラッガーとして活躍していた笠松は、大学2年秋には、4本塁打を打ち大ブレイク。現在は通算7本塁打を打ち、リーグ屈指の強打者へ成り上がった。春夏連覇を果たした大阪桐蔭ではどんな思いでプレーしていたのか?レベルの高い東京六大学野球でどんなことを意識して、プレーしてきたのか、ドラフト間近へ迫った思いをお伝えしたい。

大阪桐蔭の打撃スタイルは自分に合っていた

笠松 悠哉(立教大)「三振か、ホームランかの割り切りで勝負したい」 | 高校野球ドットコム

笠松 悠哉(立教大)

 生駒ボーイズ時代から体の成長とともに本塁打を打てる強打の三塁手として活躍。その時から親元を離れて野球をしたい思いだった。ただどの学校へ行くのかは中学3年までは無関心だった。中学3年では、大阪府の強豪校から誘われる存在となった笠松は大阪桐蔭入学を決意する。

 自ら望んだ寮生活ではあったが、最初は苦労した。
「グラウンドも、寮も山の中ですしどこにも行けないですし、それが当たり前になってくるとなんともなかったですけど、一般の人から見たらおかしいですよね。外に出れないので門限とかもなかったですし、消灯の時間(22時)をしっかり守ってとかスケジュールが詰め詰めでご飯食べてお風呂入って寝て朝が来てその繰り返し。最初はつらかったですけど、慣れていきますと違いましたね。今(立教大)と比べると、180度違う環境ですが、とにかくついていくだけでした」

 それでも笠松は1年秋に自慢の長打力を武器にレギュラーを獲得。笠松自身、ブンブン振るスタイルは大阪桐蔭のスタイルに合っていたと感じていた。
大阪桐蔭は、きちっとした野球スタイルがある中でも、打撃にはあまり形にはこだわらずにブンブン振れという感じの野球スタイルだったのでそれが自分にすごくマッチングしてたのかなと思います」

 2年春に選抜に出場した笠松。ただ貪欲に先輩についていくつもりだったと語るこの大会で、人々に印象を与える活躍を見せる。初戦の花巻東戦で大谷翔平(現・北海道日本ハムファイターズ)から6回表、勝ち越しの二塁打を打つ。これが甲子園初安打初打点となる二塁打となった。

「大谷投手は素晴らしいピッチャーだということを試合前に大きく取り上げられてましたし、藤浪晋太郎さん(現・阪神タイガース)と大谷選手の投げ合いみたいに取り上げられていたのでそこで勝ち越しタイムリーを打てたっていうのは凄く自信になりました」

 勢いをつかんだ2年生打者は水を得た魚のように躍動する。続く九州学院戦でも、笠松は逆転3ランを打つ。どっと沸いた一発に当の本人はふわふわした感覚だった。
「本当に入ったのかなってベースちゃんと踏めてるかなというくらいのふわふわした感じでしたし、ちゃんとベースを踏めたかなと思っていました」

 不安と緊張が入り混じった2年春の選抜にも慣れて、準決勝の健大高崎戦では、本塁打。初の選抜優勝に貢献。笠松は優勝に浮かれた様子はなく、より夏へ向けて気合が入った。ただついていくだけだったのが、出場するからには自覚をもってプレーしなければならないと気持ちが入った。苦しい大阪大会を勝ち抜き、夏の甲子園。夏の甲子園は、選抜とは別の雰囲気と感じながらも、初戦の木更津総合戦で本塁打を放った笠松は主力打者として活躍し、2年生ながら春夏連覇を経験する。

[page_break:歯がゆさを感じた高校ラストシーズン]

歯がゆさを感じた高校ラストシーズン

笠松 悠哉(立教大)「三振か、ホームランかの割り切りで勝負したい」 | 高校野球ドットコム

笠松 悠哉(立教大)

 連覇達成の偉業に対し、笠松は「春は出場校も少ないですしそういった意味で夏は各都道府県から集まったチームが甲子園に出場してくるわけですからほんとの日本一とったんだなっていう春より嬉しいものがありました」と喜びを表した。

 そして最上級生となって、3連覇を目指してスタートした秋。チームががらっと変わり、笠松は引っ張る立場となっていた。そこに、笠松は難しさを感じていた。選抜では3回戦で県立岐阜商戦で敗退。3連覇は途絶える。夏では、2年連続の夏の甲子園連覇を目指して、夏の甲子園にも出場したが、3回戦敗退。甲子園優勝することなく、後攻最終学年を終える。

「やれるべきことはやってきたつもりでしたし、そこで結果が出なかっただけの話であって、最後の夏で不甲斐ない結果で終わってしまったんですけどチームに貢献できなかった悔しさというものもありますし甲子園で勝ちきれなかったという悔しさもあって心残りな最後になってしまった」

 森友哉とともにドラフト候補として注目されていた笠松だったが、「まだ自分はレベルが低い」と進学を決断。立教大の入学を決意する。しかし立教大の1年間は思うような結果を残すことができず、リーグ戦出場なし。そして2年春からリーグ戦に出場するが無安打に終わった。

 笠松は東京六大学のレベルの高さを感じていた。そして舐めていたところがあったと反省する。それでもどう結果を残そうと考えたのか。それは自分のスタイルを貫くことだった。
「今まで消極的なバッティングだったので、これじゃあとあと後悔するなって思ったのでとりあえず自分のスタイルを崩さずに最後までやり切ろうということを考えていました」

 それは結果として現れる。2年秋のリーグ戦で、初戦の慶應戦でリーグ戦初安打が本塁打。なんと5打点の活躍。慶應戦3試合で、3本塁打10打点の活躍を見せた。この活躍について笠松はこう振り返る。
「思いっきり振っていったのが1番ですし開幕戦の1カード目で1本ホームランが出たというのはすごく自分の打撃にいいリズムをつけてくれました」

 2年秋のリーグ戦で4本塁打を打った笠松は以後、レギュラーとして活躍を続け、六大学屈指のスラッガーへ成り上がった。

[page_break:これからも自分のスタイルで]

これからも自分のスタイルで

笠松 悠哉(立教大)「三振か、ホームランかの割り切りで勝負したい」 | 高校野球ドットコム

笠松 悠哉(立教大)

 結果を残せるようになったのは、自身のスタイルを確立した理由があった。
「三振かホームランかという割り切りというかそれぐらいが自分には丁度いいのかなと思ってるので、振りにいく中でしっかり見極めなきゃいけないんですけど、振るって決めたら天井向いててもフルスイング出来ればなってそれで三振しても後悔はないかなという割り切りかたを持つことが大事だと感じました」

 また笠松の打球は上がりやすい。ミズノのスイングトレーサーで、スイングスピードを測ると、その傾向がハッキリと数値で出た。
スイングスピード自体は、128.6キロとあまり速くないが、ヘッド角度はマイナス24.8°、スイング軌道16.1°をマーク。ヘッド角度とは、インパクト時のバットの傾きの角度で、マイナスの場合、グリップエンドよりも下、そしてスイング軌道はインパクト時にヘッドが向かっている方向をあらわす角度のことだ。
これがプラスの場合、アッパースイング方向となる。
この数値を見ると、笠松はアッパースイング気味でボールを捉え、高い角度で打球を飛ばしていることが分かる。笠松が話す先ほどのコメントの真意も数字から理解することができる。

 そして4年春には打率.346、2本塁打の活躍で、18年ぶりのリーグ優勝に貢献。笠松は、「一戦一戦をしっかり戦おうという気持ちの持ち方でしたが、それが優勝につながったのかな」と。大学選手権でも勢いを失うことなく、半世紀ぶりの日本一となった。

 そして最後のリーグ戦。笠松はリーグ戦初戦で死球を受けた影響で、調子を崩し、22打数2安打と苦しいシーズンを送っている。4年春にプロ志望を決断した笠松にとって歯がゆい状況を続いているが、与えられた試合の中で「やれることだけをやりたい」と意気込みを語る。

 もしプロ入りが実現したら、自分のスタイルを貫くつもりだ。
「さらにピッチャーのランクが高くなると思うんですけど、それでも自分のバッティングスタイルというのは崩さずに今まで通りというかチョコチョコするバッティングは好きではないので、プロに行くにしても社会人に行くにしても割り切って三振かホームランというぐらいの大きな気持ちを持って、余裕を持ってやれればいいなと思います。そのコントロールはなかなか難しいところですが、自分の課題としてステップアップしていきたいと思います」

 自分のスタイルを貫いて結果を出した高校時代。自分のスタイルを貫く難しさと大事さを痛感した大学時代。笠松は試行錯誤を重ねながらドラフトに向かっている。この苦しさが大成のきっかけになることを期待したい。

(インタビュー/文・河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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