東 克樹(愛工大名電ー立命館大)「子供たちに勇気を与えられる投手に」
愛工大名電時代に甲子園出場を果たした東 克樹は立命館大で球速を10キロアップさせるなど大きく成長。リーグ戦で史上初となる2度のノーヒットノーランを達成し、日本代表でもエースとして活躍した。ドラフト1位での指名が確実視されている小柄な左腕に、これまでの歩みを聞いた。
強豪・愛工大名電への挑戦。先輩・濱田達郎から学んだこと
東 克樹(立命館大)
――愛工大名電に進んだきっかけを教えてください。
東 克樹(以下、東):三重県から出たいとうか、愛知の189校いる中でその中で強豪のチームの中で、激しい競争、レギュラー争いでもまれたいと中学校の時に思ったので。
――寮生活はいかがでしたか?
東:携帯禁止やったんで、そういう生活慣れてなかったので最初は大変でしたね。慣れたらもうみんないるんで飽きることなく楽しい寮生活でした。
いい経験になったし、今の時代では中々経験できないような公衆電話から電話したりもあったんで。上下関係も厳しくはないですけどしっかりはしてたんで、自分を作ることができました。
――立命館大の寮と比べてどうですか?
東:実は言うと、愛工大名電の方が快適です。立命館大は電化製品とかあるんでそういう面はいいです。ただ愛工大名電の方が施設は良く、野球の環境に関しては名電の方が良かったなと思います
――高校時代の指導者の教えで大事にしていることは何ですか?
東:トレーニングですね。メディシンボールボールを使ったトレーニングのおかげで球速も上がりましたし、それを大学でもう一回取り入れたことで成長したんで高校時代に教えてもらってよかったなと思います。
――具体的にどんなトレーニングですか?
東:ランジだったり足の切り替えしのトレーニングだったりですね。
――1学年上の濱田 達郎投手(現中日)はどんな先輩でしたか?
東:あんまり顔に出さないタイプでしたね。オンとオフがはっきりしている選手でした。
――先輩から学んだことは?
東:試合でのポーカーフェイス、表情を崩さない。感情が出るのもいい部分もあると思いますけど、浜田さんからはそこを学びました。
――東君もマウンドでは表情を出さないようにしているんですか?
東:そうですね。浜田さんを見て、そういうことを覚えたんで。
――関西大との1回戦、血豆の影響で途中降板しましたがその時も表情には出さず投げていたんですか?
東:堪えていました。痛かったですけど(笑)スカウトもいっぱい来てたんで。
スピード向上でタイトル獲得。自信になった大学3年秋
東 克樹(立命館大)
――高校最後の夏に甲子園出場。こういう気持ちでやっていたから行けたということはありますか?
東:やっぱりずっと浜田さんが上にいたので、中々先発で投げる機会がなく2年秋を迎えて選抜も夢を絶たれて、絶望の中で倉野監督からは「お前ら、今までの名電で最弱の世代や」って言われて、反骨心っていうんですかね、絶対甲子園出てやるっていう。弱い弱い言われてる中で甲子園に出たいっていう気持ちがチームの中にありました。
――左腕エースだとどうしても濱田投手と比較されることもあったかと思いますが?
東:気にはなってないですね。浜田さんは球の速さとか体の大きさがあって、自分は最速142キロで速くないですし、小柄でコントロールで勝負する投手。比べられてもタイプが違うからなぁとしか思ってなかったです。
――立命館大では1年秋からリーグ戦に登板します。大学で活躍するために意識したこと、取り組んだことは何ですか?
東:正直、大学入って伸びると思ってなかったんで。高校のまま行くんだろうなと思っていたので、まさかこれだけ伸びると思ってなかったので。スピードが上がるようになってまだ成長出来るんだと思って頑張るようになりました。
――いつスピードが上がったんですか?
東:大学入ってすぐに1キロ上がって、上がった!って(笑)そこから右肩上がりにスピード上がっているんで、そういう喜びがあるから頑張れるというのはあります。
――自信を持つようになったのはいつぐらいですか?
東:3年の秋ぐらいですかね。1年秋に防御率1位(リリーフとして8試合に登板し防御率0.39)取ったんですけど、それは勢いとうか、若さとかがあったと思うので、先発をやって自信をつけ始めたのは3年の秋からですね。
――3年春にノーヒットノーランを達成しています。これも大きかったんじゃないでしょうか?
東:嬉しかったですけど、その時はケガが完治してなかったので騙し騙しやっていたので嬉しい反面、早く交代して楽になりたかったっていうのはあります(笑)
――それが1年後の関大戦にもつながりましたね
東:4年春に2回目ノーヒットノーランした時は状態としては完璧な状態だったので、そっちのノーヒットノーランの方が遥かに嬉しかったですね。
目標はヤクルト・石川投手のように小柄でも勝てる投手
東 克樹(立命館大)
――自分の投球スタイルはどんなタイプですか?
東:今はスピード出てそっちに注目されて152キロ左腕って言われますけど自分自身、そういうパワーピッチャーではないと思っているので。コントロールで要所要所を締めて、打たせて取るタイプだと自分では思ってます。
――大学ジャパンではエースとして活躍しました。選ばれた時からそういう立場にあると思っていたんですか?
東:全然無いです。上には上がいると思っているので。代表クラスになると各リーグからすごい選手が集まってくるのでみんながエースというか、それぞれの個性を出し合って勝つイメージがあったんで。エース、エース言われてましたけどちょっと止めて欲しかった(笑)恥ずかしいというか自分で良かったんかなって。試合で投げ始めて結果として周りにちゃんと投げてるところを見せられたんで、それは良かったかなと思います。
――外国人選手と対戦して学んだこと、得たもの、何かありますか?
東:自信はつきましたね。海外の選手に対してこれだけ投げれたっていう自信と代表で自分が主戦として投げさせてもらった自信は帰ってきてからすごい大きなものでした。
――この秋のピッチングはいかがですか?
東:(代表から)帰ってきて最初は調子良く行けてたんですけど、ケガもあって本調子でない最後のシーズンになったんで、悔いは残ると思いますけど次のステージがあるのでそこで悔い無く野球人生が終われればいいなと思います。
――最後の立同戦が迫ってますが心境は?
東:最後なので、優勝もなくなりましたし。勝って笑顔で終わりたい、楽しめればいいかなと思います。
――もう先発出来る状態ですか?
東:出来る状態です。
――プロではどんな投手になりたいですか?
東:ヤクルトの石川投手のように小さいながら、あれだけ勝てる投手になって、自分も石川投手から小さいながらでもあれだけやってると勇気をもらったので、自分が次は子供たちに勇気を与えられればいいかなと思います。
(インタビュー/文・小中 翔太)