Interview

阪神タイガース・青柳 晃洋投手「”クオータースロー”誕生秘話」【前編】

2017.06.14

 2015年秋、阪神タイガースのドラフト5位指名を受けプロ入りを果たした青柳 晃洋投手。アンダースローよりも上、サイドスローよりも下の位置から腕が振られる投球フォームは「クオータースロー」と称され、独特の投球軌道を描く。ルーキーイヤーの昨季は13試合に登板し、4勝、防御率3.29をマーク。ローテーションの谷間を埋める貴重な役割を果たした。

 今回は2年目の飛躍に挑む青柳投手に「投球メソッド論、制球アップ術」というテーマをぶつけると、「あまり自分はコントロール良くないのですが…。それでも自分がやっていることが参考になってもらえれば」と、これまでの歩み、取り組みを話してくれた。

「クオータースロー」が誕生した背景

阪神タイガース・青柳 晃洋投手「

青柳 晃洋選手(阪神タイガース)

「高校野球ドットコム、知ってます!」
インタビュー場所に指定された一室に現れるや、嬉しいことを言ってくれる青柳投手。穏やかな佇まいと、はにかんだ様な笑顔が印象的な23歳だ。

「野球を始めたのは小5の時でした」
横浜市の少年野球チーム「寺尾ドルフィンズ」に入団し、青柳晃洋の野球人生は幕を開けた。

「下手だったので最初の1年はほとんど試合に出れませんでした。でも肩だけは強かったので、小6に上った頃、指導者から『ピッチャーやってみなよ』と勧められたんです」

 周りの投手たちのように上手から投げてみるも、指導者の評価は「ぎこちない」。あるコーチのアドバイスで腕を大きく下げてみると、やけにしっくりきた。

「そのコーチいわく、『すごくフォームがきれい。合ってるんじゃないか』と。下げた腕の位置は今と同じクオータースローです」

 しかし、青柳は「最初はこのフォームで投げることには抵抗があった」と述懐する。
「横から投げることがかっこ悪いという意識がありました。周りにそんな投げ方をしているピッチャーが誰もいないので、参考にできる人もいなかったし、こうなりたいと憧れる存在もいなかった」

 憧れていた投手は当時西武ライオンズに在籍していた松坂大輔。平成の怪物と称された松坂のような豪快なオーバースローで投げたいという願望は常にあったという。

 横浜市立生麦中では軟式野球部に所属。チーム内には速球自慢の投手が揃っており、中には120キロ後半から130キロ台のスピードをマークする投手もいた。周囲のスピードに刺激された青柳は中1の時に自らの判断でオーバースローに転向。しかし、すぐにヒジを痛めてしまう。

「ヒジが治った頃にはさらに差がついてしまってて…。自分はやっぱり横から投げる投手なんだという覚悟が定まりました。以後、一度も腕の位置を上げたことはありません」
 中学時代の最速スピードは115キロ。3番手投手で終わった。

[page_break:制球力の改善を呼び込んだ「プレートの踏み位置の変更」]

制球力の改善を呼び込んだ「プレートの踏み位置の変更」

阪神タイガース・青柳 晃洋投手「

青柳 晃洋選手(阪神タイガース)

 高校野球の舞台として選択した川崎工科では1年秋から主戦を務めた。甲子園出場こそ叶わなかったが、3年時には激戦区神奈川で春夏連続16強入りを果たした。
「体も大きくなり、スピードも上がった。コーナーをつくような細かいコントロールはなかったけど、フォアボールはそれほど多くなかったです」。

 高校時代に抱いていた「高卒でプロに行きたい」という夢は叶わず、帝京大学に進学。ツーシームを習得後、勝ち星に恵まれるようになり、4年秋には6勝をマーク。ベストナインに輝く活躍を見せた。

 しかし、ことコントロールに関しては「投手人生で一番悪かった」という。
「大学では甘いところにいくと打たれてしまうのでコーナーを狙うのですが、精度がともなわないため、はずれてボールになる、というケースが多かった。一試合に9個四死球を出してしまうこともありました」

 タイガース入団後も荒れ球ピッチャーのイメージが強く、デビュー当初はフォアボールが多かったが、登板を重ねるごとに与四球率は改善されていった。その要因をたずねると、「一番大きかったのはプレートの踏む位置を三塁側から一塁側に変更したこと」という答えが返ってきた。

「横の角度がつき、右打者に対して恐怖心を植え付けられるという考えでずっと三塁側を踏んで投げてきたのですが、球が抜けると右打者の方向へボールがいってしまい、デッドボールになることも多かったんです。そこで、香田勲男コーチのすすめでプレートの踏み位置を一塁側に変更したところ、抜けたボールが右打者のインコースいっぱいのストライクになったりする。

 リリースポイントがプレートの幅の中に収まるので、ストライクがとりやすくなった上、ツーシームも右打者の内角に食い込む軌道を描くようになった。同じ投げ方なのに踏み位置を変えただけでここまで結果が劇的に変わるとは思いませんでした」

 香田コーチの助言を受けるまでは「一塁側を踏む発想なんてまったくなかった」と苦笑いする青柳。至高のアドバイスによって、大学時代から抱えていた課題の改善に成功した。(後編に続く)

(インタビュー/文・服部 健太郎

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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