Interview

福岡ソフトバンク 東浜巨投手(沖縄尚学出身)「制球力を高めるにはイメージできることが大事」【前編】

2017.04.06

 昨季は1軍登板23試合中20試合に先発。自己最多の9勝をマークし、ソフトバンクが誇る強力先発投手陣の一角を担った東浜巨投手。入団後3年間で6勝にとどまったドライチ戦士が果たした4年目の飛躍の背景、そしてアマチュア時代から定評のあるコントロールの極意をうかがった。

コントロールのことばかり考えていた子どもだった

福岡ソフトバンク 東浜巨投手(沖縄尚学出身)「制球力を高めるにはイメージできることが大事」【前編】 | 高校野球ドットコム

東浜 巨投手(福岡ソフトバンクホークス)

「『どうやったら狙ったところに投げられるんだろう』ということを常に考えていた子どもでした」
 練習終了後、メイン球場のバックネット裏の一室に登場した東浜投手。この日のインタビューテーマが「コントロール」と知るや、自身の小学生時代に記憶の目盛りを合わせ、当時の考え方や練習法を語ってくれた。

「壁当てをおこなっていた壁にストライクゾーンの枠をスプレーで描き、その枠内に投げ込む練習をひたすら続けました。枠内に投げ込めるようになると、次は枠の四隅をピンポイントで狙うようにし、難易度をあげていった。『自分の狙ったところに投げるためには、どう体を使えばいいのか、どういうフォームで投げればいいのか』ということを常に考えていた気がします」

 野球を始めたのは小学2年生の時。すぐに投手を務めるようになり、「連続写真等が載った野球雑誌を読み漁り、いろんな選手の真似もした」と東浜投手。その取り組みが実を結び、小学生時代からコントロール面で苦労することは一切なかったという。

「速い球を投げたい気持ちがなかったわけではないですが、いくら速い球を投げても狙ったところに投げられなければ意味がないという思いが小学校低学年の頃からありました。球威で押して空振りを奪うよりも、狙ったアウトローに投げ込んで見逃し三振を奪うほうに快感を覚えるタイプでしたし、『狙ったところに投げたい!』という気持ちが子どもの頃からものすごく強かった。逆球で空振りを奪っても、まったく喜べませんでした」

 野球ライターの職に就いて以来、速い球を投げることに執念を燃やしてきた選手には数多く出会ってきたが、幼少の頃から、これほどに制球力にこだわってきた話は初めて耳にした。そのことを伝えると「これはもう性格なんでしょうねぇ…」というフレーズがリラックスした笑顔とともに返ってきた。

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狙う場所を明確にすることから全ては始まる

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東浜 巨投手(福岡ソフトバンクホークス)

「インステップ、もしくはアウトステップしてしまい、狙った方向に対して真っすぐ前足を踏み出せていない投手はコントロールが定まりにくいケースが多い気がします」

「コントロールが悪い投手にみられがちな傾向は?」という問いを投げかけると、東浜投手はそう答えた。

「はたから見ていて、どこを狙って投げているのかがよくわからない、漠然と投げている印象を受ける投手もコントロールが悪い確率が高いですね」
制球力を身につけていくための重要ポイントは「普段のキャッチボールの段階からコントロールを強く意識すること」と力説した。

「キャッチボールの延長線上にピッチングがあるわけですから、キャッチボールで思うように投げられない投手がマウンドで狙ったところに投げられるわけがない。『あそこにいってくれ』ではなく、『あそこに投げるんだ!』という強い意識をキャッチボールの段階から持つ。

 相手の胸を狙うだけじゃなく、右半身を狙ったり、左半身を狙ったりと目標も変化させていく。ぼく自身、子どもの頃から現在まで、『あそこに投げる!』という強い意識を持ちながらキャッチボールに取り組んできました。狙う場所が明確でなければ、そこに投げるための体の使い方は永遠に身についてこないと思うんです」

 制球力を身につけるためには、「投げ込み」のような量を伴った反復練習が有効とされる風潮が日本球界にはある。東浜投手は「自分はそのタイプ。投げ込んで制球力を身につけてきた」と証言する。

「でも、ただやみくもにたくさん投げればいいというわけではない。きちんと1球1球考えて投げることが大前提です。『体のここを意識して投げたらこういうボールがいった。じゃあ今度はここを意識して投げてみよう』といったことを毎球考える。その意識を積み重ねていける投手は後になるにしたがってどんどん内容がよくなっていくものです。そして、その日のうちにどれだけいい感覚を得られるかが、大事になってくる。いい感じになってきたけど続きは明日やろう、という姿勢では、いつまでたっても未体験の境地に辿りつけないんです」

 量をこなすことでスキルを身につけるメソッドにはオーバーワークによる故障の心配がつきまとうが、東浜投手は「投げ込みといっても、必ずしも全力で投げる必要はない」と注釈をつけた。

「必ずしもバッテリー間の距離で投げる必要もないですし、実際にボールを投げることにこだわる必要もない。シャドーピッチングやネットピッチングの反復でもいいんです。大事なのは毎球考えながら、投球動作を反復する作業と向き合うこと。その積み重ねで得られる新たな感覚が制球力のいいフォームを作り上げていくんです」

[page_break:東浜巨流・投球メカニクス]

東浜巨流・投球メカニクス

福岡ソフトバンク 東浜巨投手(沖縄尚学出身)「制球力を高めるにはイメージできることが大事」【前編】 | 高校野球ドットコム

【写真1】安定感のある「1」を作る

「ぼくの投球フォームを真似すれば誰しもがコントロールがよくなるという単純な世界ではないんですよね…」
話題は「コントロールがよくなるフォームとは?」というテーマに移った。

「身体の大きさも動き方も一人一人異なりますし、合う、合わないという要素は必ず出てくる。理想のフォームは各個人が模索しながら構築していくもので、コントロールをよくするための万人共通のフォームはない」と語る東浜投手。

 コントロールがよくなるための万人推奨のフォームを紹介するという意味合いではなく、「東浜投手が投球の際に実際にフォーム面で意識していること、イメージしていることを紹介し、球児のヒントの材料にしてもらう」という主旨でテクニカル論を語ってもらう運びになった。

東浜:ぼくはまず、左足を上げて、右足一本で立った時の感覚を気にします。一本足になった時の状態はいわばスタートの段階。数字でいえば「1」の状態です。スタートの段階で時に自分の中でしっくりくる感覚が芽生えないとその先にきちんと進めないので、まずはしっかりと安定感のある「1」をつくることを強く意識しています。(写真1参照)

――プレートの上でしっかり立った後はどのような意識の中で体を捕手方向へ移動させていくのですか? 「右の股関節など、体の右サイドのどこかの部分で体を押すイメージで前へ出ていく」という表現をよく耳にするのですが。

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【写真2】両足の内転筋に意識をおく

東浜:右サイドで押す感覚は多少はありますが、ぼくの場合はあまり右サイドを意識しすぎると、早く体が開きながら前へ移動してしまうので、両足の内転筋に意識をおき、内側にしめた状態でホーム方向へ向かって並進運動をおこなうイメージを持つようにしています。(写真2参照)

――両足を内側に締めるイメージで前に出ていく。

東浜:マウンドには傾斜があるので、少し右サイドで押すだけで体は前にいきます。両足の内転筋に意識を置きながら並進運動をおこなうと、自分の場合は早く体が開くことなく、横を向いたまま、目標方向にまっすぐ踏み出せる。左足が着地したらあとは身体を回転させてターンするだけで自分の狙ったところにいく感覚が生まれます。

――両足の内側に意識を置くことで開きの遅いフォームを生んでいる。

東浜:そうですね。やはりコントロールが悪い人はえてして体の開きが早い傾向がある。開きが早いため、どうしても手先で操作しようとしてしまう。それでは再現性が低くなり、同じところに続けて投げることは難しくなってしまいます。

――東浜投手はグラブをはめた左手を引かずに左胸の前でうまく収めることで、早い開きを押さえている印象があります。

東浜:投手指導の際に「グラブ側の手は引け」と一般的によくいわれますよね。ぼくにはその感覚がよくわからないんです。引いてしまうと早い開きを誘発してしまうと思いますし、コントロール面でもマイナスに作用すると思いますので。

――東浜さんの意識下ではどのようなイメージで左手を使っているのですか?

東浜:引くのではなく、わきをしめて左胸の前で止める、というイメージですね。止めて、後は勝手に体がターンする感覚です。

後編ではコントロールを突き詰めるうえで大事な考え方を東浜投手に語っていただきます。お楽しみに!

(インタビュー/文・服部 健太郎

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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