横浜DeNAベイスターズ 石田 健大投手(広島工出身)「ボールを使わずにコントロールを伸ばす」【前編】
3月31日に開幕する今シーズンのプロ野球。横浜DeNAベイスターズのアレックス・ラミレス監督は、早々に開幕投手として石田 健大投手を指名した。今回は、そんな石田投手の制球力に注目。プロ野球の第一線で活躍するその源には、とても当たり前で、でもじつはとても難しい基本とそこから派生する応用があった。
身体の動きを自分自身で把握できているか
石田 健大投手(横浜DeNAベイスターズ)
プロ3年目にして開幕投手という大役。プロ2年目の昨シーズン、1年間先発ローテーションを守り「チームで一番安定している投手」と評価を受けた石田投手。その安定性は、キレのよいボールをコーナーに投げ分ける抜群のコントロールによって支えられている。
――もともとコントロールには自信があったのでしょうか。
石田:どちらかといったらそうかもしれません。今振り返ると、高校時代は特別に球速が速かったわけでもありませんし、ストレート以外の球種もきちんとコントロールできていたことが大きかったのかな、と思います。
――ボールのスピードに対して、こだわりを感じたことはありますか。
石田:大学時代に一時期、「球速がほしい」とスピードを追い求めた時期がありました。実際、球速は増したのですが、コントロールが乱れて打たれるケースも多くなりまして。それで“やっぱり球速じゃないな”と感じるようになり、コントロールを重視する考え方に戻して今があるという感じです。
法政大学時代は3年の春に15奪三振を奪い完封勝利(慶大戦/被安打4、1四球)したこともある。「当時はコントロールとスピード、どちらも兼ね備えていた感覚がありました。でもその後、3年から4年にかけてコントロール重視の考え方に戻しました」という。
――自分のコントロールが向上した、と実感したきっかけなどはありましたか。
石田:自分が投げた時、例えば高めにボールがいってしまった時に、「なぜ高めにいったのか」理由が分かるようになってからだと思います、コントロールが良くなったのは。「あ、今は体が突っ込んだからだ」とか、投げた後にすぐ分かるようになって。その感覚を得たのは高校に入ってからです。それまでは…今思うとただ投げてただけでしたね。
――いったい、どういう練習をしていたらそのような感覚を得られるのでしょうか。
石田:まずはバランスよく、身体の動きを自分自身で把握すること。そこが分かっていないと思い通りには投げられない、というのが僕の考えです。ピッチャーならキャッチャーのミットに投げる、ということは誰でも分かっていること。でも、キャッチャーが構えたミットに意識を集中する以前にやることがある。自分の場合、ボールを持たずに取り組んだ練習の方がコントロールの向上に役立ったかもしれません。
ボールを使わずコントロールを伸ばす3つの方法
石田 健大投手(横浜DeNAベイスターズ)
コントロールをよくしたいのであれば、その第1歩は「自分の身体の動きをきちんと把握できるようになること」。そのために有効な「ボールを持たない練習」とは。石田投手が実践したのは以下のメニューだ。
【シャドーピッチング】
石田:ランニングも大事ですが、投げていく上ではリリースポイントなどの「感覚」を養うことも重要になってきます。シャドーピッチングはピッチャーなら誰でもすると思いますが、何を意識するか、が大切。僕はフォームのバランスやリリースポイントは、全部シャドーピッチングで身に付けました。
【ラケット振り】
石田:シャドーピッチング時にタオルではなく、バトミントンのラケットを持って振ることもよくやりました。風の抵抗を受けないぶん、タオルより腕が振れている感覚を得やすいと思います。ラケットだと「手首を返す」作業が増える。ちょっとした違いですけど、大事なことです。
【映像確認】
石田:投球時もそうですが、シャドーピッチングなどをチームメイトなどに撮ってもらって確認することも大切です。僕も高校時代からやっていましたが、最近では決して珍しいことではなくなってきましたし、スマホでも撮影できてスローモーションにもできたりするので、自分の投げ方はより確認しやすくなっているはずです。ただ、撮影映像を漠然と見返しても意味はありません。僕はフォームのバランスだったり、ストレート時と変化球時のリリースポイントはよく見るようにしています。確認するとよく分かるのですが、大体違っているものです。
生まれてからずっと自分の身体を動かしているわけで、思い通りに動けて当然、と思うかもしれない。だが、そんな先入観を一度取っ払ってみる。自分のピッチングフォームなどを撮影して客観的に見てみた時、自分がイメージしているとおりの身体の動きになっているか、細かくチェックしてみよう。細かにチェックできればできるほど、自分の中のイメージと実際の身体の動きを刷り合わせていくことができるはずだ。この作業を続けていくと、「いい球がいったな、と感じた時の映像は見直してもちゃんと思い通りのフォーム、リリースポイントになっている」(石田投手)感覚を得られるはずだ。この感覚をさらに伸ばしていくと、投げ終わった瞬間に「今、身体が突っ込んだ。だからボールが高めに浮いた」といったような分析ができるようになるという。
腕の振り、内角ストレートへの応用
コントロールを向上させるためには、なによりもまず「自分の身体の動きをきちんと把握できるようになること」。
「ボールを投げる以前の練習で理想のフォームやリリースポイントを体で覚える。それからボールを持って投げ始めてみて、体で覚えたことをそのままできるかどうか確認していく、という流れで僕はやっていました。だから、今でもピッチングに違和感を感じれば、初心に戻るではないですけど、シャドーピッチングなどをよくやります」
身体にしみ込ませた通りにボールを投げれば、コントロールは自然と安定するはずだ。また、身体の動きを把握し続けることで、あらゆるピッチングスキルへの応用ができるようになる。例えば、石田投手のコメントでよく出てくる「腕の振り」というキーワードにも関係してくる。
石田 健大投手(横浜DeNAベイスターズ)
――石田投手の報道コメントなどを見返すと、「腕の振り」というキーワードがよく出てきます。ただ、腕の振りをよくすればするほど、逆にボールをコントロールすることが難しくなる側面もあるのではないですか。
石田:僕の中で「腕を振る」ということと「力む」ということは違います。「力む」というのは力任せに100%で投げること。僕の言う「腕を振る」は80%の力です。ただ、どの球種も全て80%の力になるようにする。
――力の入れ具合を調整して投げるというのはできそうで、なかなかできません。身体の動きを正確に把握していなければできないことですね。
石田:大学時代に杉内(俊哉/東京読売ジャイアンツ)投手を見たり、今でも和田(毅/福岡ソフトバンクホークス)投手の映像を見て参考にさせていただいてます。力を抜いて投げることはずっと意識していることです。自分の中で“ちょっとしっくりこないな”と感じたら、脱力しながらで投げる意識に立ち戻るようにしています。
――なぜ80%の腕の振りをそこまで意識するのでしょうか。
石田:個人的には、まっすぐより変化球時の方が強く腕を振っているぐらいのイメージです。バッターと対して重要なのは「どれだけまっすぐに見せられるか」。変化球を投げる時にちょっとでも「まっすぐだ」と思わせることができれば勝ちだと思っています。
後編ではコントロール良くするための方法をさらに語っていただきます!お楽しみに!
(インタビュー/文・伊藤 亮)
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