目次

[1]腰の怪我をプラスに変えた
[2]昨秋、理想とするピッチングが実現
[3]選抜ではコントロールとキレのあるストレートを投げるところを見てもらいたい

 春の選抜大会の注目左腕の一人・池谷 蒼大。昨秋は14試合を投げて、防御率1.63、投球回99.1回を大きく上回る114三振を奪うなど、2年ぶりの選抜出場の原動力となった。今回は、そんな池谷の歩みを振り返る。

腰の怪我をプラスに変えた

池谷 蒼大投手(静岡)

 浜松市立積志中時代、軟式野球部に所属し、最速134キロ左腕として活躍していた池谷。当時から池谷の投球を見ていた静岡高校の首脳陣の評価も高かった。「池谷に関しては、投球フォームが完成されていたので、フォームの指導をしたことはありません」と話す栗林 俊輔監督。それでも、池谷自身、高校入学当初は周りのレベルの高さに驚かされたという。特に侍ジャパンU-15代表入りした竹内 奎人を見て、「自分はずっと2番手投手のままなのかなと思っていました」と振り返る。

 そんな中、慣れない硬式球を投げ続けたことが影響したのか、池谷は1年生の6月に腰を痛めてしまう。診断の結果、「疲労性の腰痛」ということが判明した。分離症など重症ではなかったのが幸いだったが、栗林監督は復帰に向けて急がせなかった。

「池谷は1年秋での公式戦デビューを考えていて、1学年上の村木 文哉(現・筑波大)との二枚看板で考えていました。腰の故障もそこまで重症ではなかったのですが、将来がある子でしたので、まずは完全に治すことを優先させました」

 高校1年生の時は、リハビリとトレーニングを中心にメニューを組み立てた。怪我が再発しないように食事面にもこだわり、学校に訪れる栄養士と相談しながら、量と栄養バランスを重視した食事を摂った。練習試合デビューは1年生の11月。そして、1年目の冬のトレーニングは、腰の状態が完治したことで、本格的に取り組むことができた。

「がっつりとトレーニングができてよかった」と一冬越えた2年春。いきなり練習試合で、最速140キロを計測。池谷も手ごたえを感じる投球であった。

「腕が振れる感覚、体重が乗る感覚。すべてが1年生の時よりも良いといえるものでした」(栗林監督)
これで主力投手としてフル回転するかと思われたが、栗林監督は腰の故障を再発させたくないという思いから、池谷を慎重に起用した。まず3月の練習試合では1イニング限定。そして4月に入ってからは2イニングと、1イニングずつと増やしていき、夏の大会前の練習試合でも、4~5イニングだけで完投はなかった。池谷は順調にステップアップし、夏の大会前の練習試合では、最速144キロを計測するまでに速くなった。

PHOTO GALLERY フォトギャラリー

写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。