目次

[1]進化をもたらした1年冬のトレーニング
[2]140キロ後半の速球を投げられた時の感覚は今までと全く違う
[3]強打者と対戦することは心待ちにしていた

 3月19日に開幕した第89回選抜高等学校野球大会で初日から登場するのが熊本工山口 翔だ。
 最速149キロ右腕は、昨秋の公式戦は8試合を投げて、防御率1.69と抜群の安定感をみせた。入学時は130キロ台だった山口はいかにして、140キロ後半の速球を投げられるまでの投手になったのだろうか。

進化をもたらした1年冬のトレーニング

山口 翔選手(熊本工)

日吉中時代は、軟式野球部に所属していた山口。中学校3年時から最速134キロのストレートを投げるなど、県内では速球派右腕として注目を集めた。熊本工進学のきっかけは、甲子園に出場している私学を破りたいという思いがあったからだ。

「僕が中学3年生の時は城北が夏の甲子園に出場しましたが、当時から熊本は九州学院など私学の学校が甲子園によく出ていました。自分はその私学を破りたいという思いがありましたし、熊本工は昔からの名門。古豪復活を目指す熊本工でプレーしたい気持ちが強かったんです」

 熊本工に入学後、山口は1年秋からベンチ入りするが、1年時の最速は1年生大会で記録した136キロ。
そこから、山口が大きく成長するきっかけとなったのは、1年冬のトレーニングだった。ポール間ダッシュ、腹筋・背筋を1000回ずつ、短・中距離ダッシュが中心だったが、その中で最もきつくて、鍛えられたというのが『丸太走』だ。丸太をもって、ホームベースから、インフィールドラインまで走って一周する。これを30秒以内に20本~30本を走り切る。
「本当にきついメニューです。とにかく全身が鍛えられます。体幹、腕、下半身すべて鍛えられました」

 山口はトレーニングと並行して、フォームの修正を行うためにネットスローも繰り返し行った。コーチから投球動作のトップの位置、そしてトップに入った時の胸の張りなどの指摘を受けながら、フォームを固めていった。春先、足の靭帯を痛めるアクシデントがあったが、その間も焦らずじっくりと治療しながら、トレーニングに励んできた。

 そして復帰してからの練習試合で140キロ台を計測。夏まで調子を維持した山口は、夏の熊本大会八代東戦で16奪三振を記録。
「この試合はストレートでほとんど三振を奪うことができました。ストレートは140キロ台も超えていて内容は良かったと思います」と振り返る。

 準々決勝では2016年選抜ベスト4の秀岳館と対戦。秀岳館打線の印象について山口は、「プロ入りした九鬼 隆平さん、松尾 大河さんはめっちゃ怖い印象しかなかったですね。どこに投げても打たれる雰囲気しかなかったです」

 それでもマウンドに立てば、絶対に抑えてやろうと気持ちが入ったピッチングをみせる。最速144キロのストレートを武器に、秀岳館打線に立ち向かっていく。しかし、熱投を続けた山口の指は攣っていた。
「初めて迎える夏で、本当に暑かったですし、公式戦で1試合投げ抜いた経験が僕にはなかったので、最後は限界でした」

 延長10回で勝ち越し点を許し、2年夏は熊本大会ベスト8で終わる。
「課題は多く残りました。それでも僕がこれまで練習してきたものは出せました」と振り返る。