目次

[1]フォーム×体づくり×スタビリティ=154キロの土台
[2]指先感覚を活かす「投球術とスライダー」
[3]「世の為、人の為」にこれからも

江陵高等学校 古谷 優人投手 「『自分を変える』を突き詰めて」【前編】から読む

 前編では「メンタル」の角度から古谷 優人選手の変化に迫っていきました。後編では最速154キロを記録した北北海道大会の追想と、剛腕左腕になるまでの取り組み。さらに福岡ソフトバンクホークスでの意気込みを語っていただきます。

フォーム×体づくり×スタビリティ=154キロの土台

古谷 優人選手(江陵高等学校)

 2年ぶりの北北海道大会出場。江陵をけん引する主将としては素晴らしい結果を残した反面、古谷はエースとして悩んでいた。頭に残る帯広農戦の序盤。そんな彼に谷本 献悟監督が救いの手を差し伸べる。

 谷本監督はPL学園中出身。当時、寮内の先輩であり、現在は日大東北の監督を務める中村 猛安監督の縁を辿り、この人を幕別町に招いた。名古屋商科大総監督・中村 順司氏。中村 猛安監督の実父というよりもあのPL学園高黄金期を作り上げた名将という表現が適当だろう。そして、中村氏のアドバイスは単純明快であった。

「投球時に、右手の小指を少し握る感じで投げること」

「だいぶフォームがしっくりきました。フォームのバランスが良くなったんです」
これで古谷が求めていた最後のパーツが埋まった。それは裏を返せば彼が常に様々な観点から自らを突き詰めていたからである。 

 配慮は精神的な点はもちろん、様々な部分にも及ぶ。まずはフォーム。
「全身を大きく振りかぶったワインドアップから、ゆったりと右足を高く上げて、滑らかなテイクバックから一気に体を回旋させる」。これを古谷は常に頭に入れている。その方法論も彼は淀みなく説明する。
「僕が大事にしているのは回旋運動と重心移動をしっかりとできるか。そのためにはしっかりとした軸の強さが必要で、その軸がないと、不安定なまま回転してしまうので、バランスが崩れます。軸の強さがあることで、キレイで無駄のない回転ができる。体幹トレーニングはこだわっています」 

 その種目はいわゆる「スタビリティトレーニング」。毎日自宅ではテレビを見ながら地道に取り組んだ。チームではランニング、スクワット、ランジ系など下半身中心のメニューが中心の筋力トレーニング。谷本監督考案の丸太を持ったまま雪の上を走るランニングや、雑巾がけなど、体の機能性を高めるトレーニングと多彩なメニューをこなし、融合させる中で古谷は強く・柔らかな身体を手にしていった。

 2年時からは食事にもこだわった。西田 つばさ部長の提案で始まった食事計画表により日々の食事内容を記入。量だけでなくバランスにもこだわった。結果、入学時の身長171センチ・体重60キロは最後の夏になると、176センチ76キロまでにサイズアップ。154キロへの堅固な土台はこうして築かれた。

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