Interview

履正社高等学校 安田 尚憲選手「西日本最強スラッガーが追求する打撃像」【後編】

2016.12.22

 野球との出会いから、2年夏、自身初の甲子園を勝ち取るまでの道程をたどった前編に続き、後編では甲子園での経験と、最上級生としての責任。さらに2017年への抱負を語って頂きます。

好投手たちと出会った甲子園、最上級生の責任

履正社高等学校 安田 尚憲選手「西日本最強スラッガーが追求する打撃像」【後編】 | 高校野球ドットコム

安田 尚憲選手(履正社高等学校)

 安田にとって甲子園は好投手たちとの出会いの場でもあった。1回戦高川学園(山口)戦では140キロ左腕・山野 太一東北福祉大進学予定)と対峙。2回戦横浜(神奈川)戦では、左腕・石川 達也(法政大進学予定)、本格派・藤平 尚真(東北楽天ゴールデンイーグルスドラフト1位)と激突。そして3回戦常総学院戦では左腕・鈴木 昭汰(法政大進学予定)。
「高校生トップレベルの投手と対戦できてよかったですし、何よりも藤平さんと対戦できたことは今後の野球人生に生きると思います」
12打数4安打の成績以上に、安田は大きな経験を得た。
 

 新チーム。最上級生となった安田には大きな期待がかかる。ただ、当初は苦しんだ。「芯でボールを捉えることができないんですよね。自分でもフォームが崩れた要因や、なぜ打ち損じるのかは分かっているんですけど、じゃあ芯で捉えようと思ったらそれができない歯痒さがありました」

 訪れた不調。「僕と若林(将平・2年・左翼手)が引っ張っていかなければ」と旧チームから主力を張る責任感に押しつぶされそうになりながら、それでも安田は履正社を引っ張ろうと奮闘した。 
 

 そんな安田に再び光明が差す。近畿大会出場をかけた秋季府大会準決勝大阪桐蔭戦でフェンス直撃の二塁打と本塁打を打ちスランプを脱出。いわて国体決勝戦でも本塁打を放って左腕・寺島 成輝(東京ヤクルトスワローズ1位指名関連記事)ら3年生に高校最後の公式戦で全国制覇をプレゼントすると、近畿大会では15打数6安打2打点で11年ぶり優勝。そして明治神宮大会決勝戦でも本塁打を放ち初優勝。

大阪桐蔭戦の本塁打は自分にとってもベストホームランですし、神宮大会での本塁打も自分が狙うゾーンを高めに設定して、ちょうど高めのストレートが来てホームランにすることができました。多くの人が注目されている中で本塁打を打てたことは自分にとって自信になっています」
 

 国体明治神宮大会。高校野球史上初となるを秋の全国大会連続制覇を果たした履正社。その偉業は安田なくしてあり得なった。

[page_break:清宮 幸太郎を超え「全冠制覇」へひた走る]

収穫の秋から鍛える冬へ

履正社高等学校 安田 尚憲選手「西日本最強スラッガーが追求する打撃像」【後編】 | 高校野球ドットコム

安田 尚憲選手(履正社高等学校)

 2016年、収穫の秋を終えた安田。現在は、再度技術面を見直し、コーチと一緒にフォーム修正に取り組んでいる。中でも打撃面では新たな追究をしている。その内容とは?
「今まで逆方向への本塁打を打ったことがないので、とにかく左中間へ本塁打が打てるように打撃フォームを改造してみようと思っています。それができるのはこの期間だけなので」
 

 安田自身、レッドスターベースボールクラブ時代から練習では木製バットを使ってきたため、打撃技術はチームメイトいわく「木製バットでも本塁打にできる数少ない打者」との定評を得ているレベル。ただ実際にはレフト方向への本塁打は皆無。そこで安田は将来を見据えてさらなるチャレンジに踏み出した。

「岡田と安田の違いはテクニックの差だと思います。岡田の場合、技術力は高かったですし、右方向だけではなく全方向に本塁打を打つことができていました。安田にはぜひ、逆方向への本塁打を打つ技術を磨いてもらえればと思います」
オリックス・バファローズの和製主砲・T-岡田(岡田 貴弘)外野手を育てた岡田 龍生監督もそんな安田のチャレンジを後押しする。

 打撃だけではない。三塁守備も課題にしており、連日ノックを受ける。
「打球反応、グラブ捌き、スローイング、フットワーク…すべてが課題だと思っています。打撃だけではなく、守備も磨いていきたい」

安田 尚憲に「調整」という二文字はない。攻撃も守備も鍛え続ける冬が続いている。12月末には、大阪府選抜として、台湾に遠征。そこでも木製バットながら長打を連発し、レベルアップした姿を見せている。

清宮 幸太郎を超え「全冠制覇」へひた走る

 このように安田を鍛錬に駆り立てる原動力はやはり「あの男」の存在がある。明治神宮大会決勝戦で直接対決した早稲田実(東京)・清宮 幸太郎関連記事である。
「清宮を意識するなといっても、勝手に意識してしまうもので、負けられない気持ちはあります。彼は本当にすごい打者で、神宮大会でもそのすごさを実感しました。だからこそ春には清宮を上回れる打者になりたいです」
 

 その先に見えるものとは?安田は胸を張って最後に目標を語る。
「センバツに出場することができれば、準優勝に終わった3年前の借りを返すために履正社野球を実現させて、優勝していきたいと思います。春だけではなく、夏も甲子園出場、そして全国制覇を目指していきます。そして、これは高いハードルだと思うんですけど、目標を高く待って来年1つも負けない気持ちで頑張っていきたいと思います」

 目指すはこれまで松坂 大輔(福岡ソフトバンクホークス)をはじめスター軍団を抱えた1997~1998年の横浜しか成し遂げたことのない大偉業「全冠制覇」。10月の「愛顔(えがお)つなぐえひめ国体」まで、履正社安田 尚憲は高みを目指してひた走る。

(インタビュー/河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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