Interview

安本 竜二選手(静岡高-法政大)「名門・静岡のユニフォームを身に纏うために努力したこと」【前編】

2016.12.13

 今春、東京六大学の名門・法政大に、高校時代から注目を集めていた逸材たちが入学した。静岡高出身の安本竜二選手もその1人。2年秋の東海大会で3本塁打を放ち、強烈な印象を残したのは記憶に新しい。甲子園には春夏合わせて3度出場し、3年春のセンバツではベスト8に進出。
レギュラー獲りを目指し、オフも黙々とトレーニングに励む安本選手に、高校時代を振り返ってもらうとともに、法政大でのエピソードなどを語っていただきました。

■高校最後の春を迎えた安本選手のインタビューはこちらから

「自分の目標へ勝負の選抜!」

「名門」の洗礼に猛練習で立ち向かった高校時代

安本 竜二選手(静岡高-法政大)「名門・静岡のユニフォームを身に纏うために努力したこと」【前編】 | 高校野球ドットコム

安本 竜二選手(法政大学)

 90年以上の歴史を誇り、人気、実力ともに大学野球の最高峰に位置する東京六大学。その中にあって法政大は、リーグをけん引する存在であり続けている。通算リーグ優勝回数は1位・早稲田大の45に次ぐ44。「怪物」とうたわれた江川 卓氏(作新学院出身。元巨人)や、「ミスター赤ヘル」こと山本 浩二氏(廿日市高出身。元広島)ら、球史に名を残す選手も多数輩出している。

 全国から逸材が集まる名門中の名門。安本は入部早々、その洗礼を浴びたという。
「先輩方とはプレーの質はもちろん、体力的にも大きな差がある、と痛感させられました。高校野球を引退してから自分なりに準備してきたつもりでしたが、取り組みが甘かったようです。木製バットにも対応できなかったですし…法政大は描いていた以上のレベルでした」

 実は安本は、静岡高でも、同じような経験をしている。地元では「しずこう」の愛称で親しまれている静岡高も名門だ。甲子園出場回数は春夏合わせて39回を数える。これは静岡県最多で、1926年夏には優勝を、1960年夏1973年夏には準優勝を果たした。また今年の北海道日本ハムの日本一に貢献した増井 浩俊投手(駒澤大-東芝関連記事)など、何人もの選手をプロに送っている。

 安本は安倍川中2年の時に三塁手で県準優勝。その実績を引っ提げて静岡高の門を叩いたが、「入ってみるとレベルの高い選手ばかり。同期も硬式チーム出身者が多く、軟式だった僕と違って硬式の扱いにも慣れていて、差を感じました」

 どうすれば差が縮まり、県内選りすぐりの選手の中でレギュラーになれるのか?そのためにはやはり、人一倍練習するしかなかった。
「こういう選手になろう、というのはなく、日々ガムシャラに練習に取り組みました。いま思うとムダなこともしていた気もしますが、とにかく数をこなさないと、と。少しでも多く練習しなければ立場は変わらない、と思っていました」

 猛練習を支えたのが、野球を始めてから大きなケガとは無縁の強い身体だった。
「僕は当時も今も、体の柔らかさやしなやかさに欠けるのが短所。ですがその分、子供の頃から身体が強く、人よりもパワーがあるのが長所だと思っています。たくさん練習できたのも、身体が頑丈だったからかもしれません」

[page_break:プロ入りした投手との対戦で目線がさらに高く]

プロ入りした投手との対戦で目線がさらに高く

安本 竜二選手(静岡高-法政大)「名門・静岡のユニフォームを身に纏うために努力したこと」【前編】 | 高校野球ドットコム

静岡高時代の安本 竜二選手

 ひたむきな努力が実り、安本は1年の秋には外野のレギュラーに。大会後に小学時代から守り慣れた内野(ショート)にコンバートされると、打撃力にもより一層の磨きをかける。
「自主練習では、土日の練習試合やシート打撃での反省点を修正するようにしました。たとえばタメがないな、と感じたら、ティーやハーフでしっかり軸足に体重を残して打つ練習を、キレがない時は連続ティーをやりました」

 恩師である栗林 俊輔監督からは「狙い球」を絞るよう、叩き込まれたという。
「栗林監督によく言われたのは『この状況ならどの球を狙うのか?』、そして『この投手のどのボールを狙うのか?』。漠然と来た球を打つのではなく、練習試合からこうしたことを踏まえて打席に立っていました」

 2年夏の静岡大会では打順は下位ながら、26打数10安打7打点とよく打ち、夏は3年ぶりとなる[stadium]甲子園[/stadium]出場の大きな力に。甲子園では五番に座り、チームは星稜高との1回戦で逆転負けを喫したが、安本は現・千葉ロッテの岩下 大輝投手(当時3年)から2安打を放った。ただ本人からすると「まともな打撃はできなかった」ようだ。

「岩下さんのストレートはあの時、145~146㎞。静岡大会ではもっぱら軟投派と対戦していたので、そんなボールは見たこともなく、速く感じましたね。変化球に食らいつく感じでなんとか2本ヒットは打てましたが、このままでは全国レベルの投手は打てない、と思い知らされました」

 自分の「現在地」を認識した甲子園から帰ると、さらに目線を高くして練習に打ち込んだ。すると主将として臨んだ2年秋、安本の打棒がさく裂する。東海大会では同学年で、プロ注目の日大三島高・小澤怜史投手(現・福岡ソフトバンク関連記事)からのバックスクリーン弾を含む3本塁打。打点も7挙げ、優勝の立役者になった。2年秋の公式戦11試合での打率は.447。この活躍をきっかけに周囲からプロ入りを勧める声が出始め、安本も「プロに行きたい思いが強くなりました」と振り返る。

[page_break:センバツでの不振から復活するも大学では新たなカベが]

センバツでの不振から復活するも大学では新たなカベが

安本 竜二選手(静岡高-法政大)「名門・静岡のユニフォームを身に纏うために努力したこと」【前編】 | 高校野球ドットコム

安本 竜二選手(法政大学)

 ところが、プロ入りへの試金石となる翌春のセンバツ。チームは前評判通りに勝ち進み、ベスト8になった中、安本のバットは湿ったままだった。終わってみると3試合での打率は.182で、6三振。本来の姿とはほど遠い状態で、それが影響したか、失策も3と守備でも精彩を欠いた。

「僕はもともとホームランバッターではないのに、秋の公式戦で4本打ったことで、長打を求めるようになってしまったんです。センバツ前からフォームを崩していて、甲子園でも打てるイメージはありませんでした。いま思うと(プロ入りにつながるチャンスだったのに)もったいないことをしたな、と。これではプロには行けないと、進路も大学進学へとシフトチェンジしました」

 持てる力を発揮できなったセンバツの後、安本は「長打を狙うのではなく、狙い球・甘い球を逃さずにシンプルに振る」という、前年秋までの打撃に立ち帰る。センバツのままでは終われない―。なお一層、バットを振り込んだ安本は最後の夏、予選で23打数9安打8打点と面目躍如の数字を残す。甲子園では1回戦で、接戦の末に東海大甲府に敗れたが、安本は1安打1打点と気を吐き、高校野球に別れを告げた。

 しかしながら、進化を重ねていった安本の打撃も、木製バットの大学野球には、なかなか適応できなかった。
「理に適った正しいフォームなら、金属でも木製でも打てると思うんですが、僕はそういうカタチで打てていなかったんです。高校の時はとにかく強い打球を打とう、の一辺倒で、そのためにどうするか、というのを深く考えたこともなかったですし…ムダな動きもしていたと思います」

 安本によると、身体の強さが理に適った動きを妨げていたところもあり、“木製バットの利点を生かした打撃”をするのには、時間を要したという。だが「ここに来て、だいぶ体に馴染んできた」そうだ。
「プロの選手はフォームの動きが小さく、軸もぶれません。それを考えるとまだまだですね。僕の場合、軸がぶれて、バットヘッドが出てこないことも少なくないので…打撃だけではなく、三塁か一塁を守ることが多い守備でも課題が多いです。フットワーク、ハンドリングの柔らかさなど、まだまだ勉強中です」

 それでも、静岡高で持ち味の身体の強さを生かしてレギュラー獲りを実現したように、法政大でも自分の武器で勝負するつもりだ。
「法政大もそうですが、大学野球では右打ちで長打が打てるタイプが少ないんです。そのあたりをアピールポイントに、来年の春のリーグ戦では、対左投手で起用してもらった時に結果を出し、出場機会を増やしていきたいと思っています」

 後編では静岡高校の3年間で得た財産であったり、大学時代の取り組みについて語っていただきます。

(インタビュー・文/上原 伸一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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