目次

[1]60パーセントの力で100パーセントのボールを投げる
[2]自分に合ったフォームは年々変わっていく
[3]手術明けの1年で球速も出なかったけど、その分引き出しが増えた

 今季10年ぶりの日本一に輝いた日本ハムの大きな原動力となったのが、人材豊富な中継ぎ陣だ。その中で入団以来、9年連続50試合以上登板という、とてつもない記録を続ける宮西 尚生投手(31)は、今季史上2人目となる通算200ホールドを達成し、さらには39ホールドで最優秀中継ぎ投手のタイトルも獲得。フル回転の活躍で日本一に大きく貢献した。侍ジャパンにも選出され、日本ハム投手陣の精神的支柱でもある鉄腕左腕は、オフをどう過ごし、どんなトレーニングをしているのか、迫ってみた。

60パーセントの力で100パーセントのボールを投げる

宮西 尚生投手(北海道日本ハムファイターズ)

 180センチ75キロと、決して体格に恵まれているという訳ではない。一見すると“変則左腕”という、あまり選手寿命が長くはなさそうに感じるタイプだが、宮西にそんな通念はあてはまらない。今季は左ひじの手術明けのシーズンだったにもかかわらず、入団以来続けてきた50試合以上登板を楽々とクリアする58試合のマウンドに上がり、最優秀中継ぎ投手のタイトルまで獲得するおまけつき。打者190人に対して1本の本塁打も許さず、防御率1.52という成績は、誰もが認める優勝の立役者の一人だ。

「今季はすべてがうまくいったという感じです。いや、うまくいき過ぎたんじゃないですか」
という言葉にだまされてはいけない。築き上げてきた数字には、もちろん確固たる裏付けがある。

 シーズン中、勝利の方程式の一翼を担う左腕は、ほぼ全試合で必ず1度は肩を作る。「毎試合登板する可能性がありますからね。マウンドに上がった時にどこかが張っていたり、ランニングをしすぎて疲れていたり、ウエイトトレーニングで筋肉痛になっていたりというのは通用しない。常に100パーセントのコンディションでマウンドに上がりたいんで、シーズン中は最低限のトレーニングしかしない」というリリーフならではの調整法の中で、これだけの成績を残し続けられている理由は、オフの過ごし方にあった。

 まずシーズンが終わってすることは、心身ともにリセットすること。1週間はスッパリと野球から離れ、完全休養にあてる。「本当にまったく何もしません。もちろんノースローですし、体も一切動かしません」。半年以上にも及ぶペナントレースの中で、パンパンに張りつめていた心と体をゼロに戻すことから、中継ぎエースの自主トレは始まる。その後は、宮西の「原点」ともいえるランニングを開始する。

「走るといっても“基礎の基礎の基礎”というぐらいのレベルのジョグですね。有酸素運動で血流を上げて、痛んでいるところの回復力を上げるのと同時に、体をちょっとずつ目覚めさせていく」とランニングの時間は30分程度だが、これがキャンプに入るまでの必須メニューとなる。

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