Interview

二松学舎大学附属高等学校 大江 竜聖投手「勢いで投げていた1年夏と投げる怖さを知った2年夏」【前編】

2016.11.18

 2014年~2016年の東京都の高校野球を盛り上げた大江竜聖。小柄ながら、負けん気の強い投球で、二度の甲子園出場。最速149キロのストレートと切れ味鋭いスライダー、チェンジアップ、カーブと1つ1つの球種の精度は高く、さらに展開に応じて力配分ができるクレバーさもある。そんな大江は10月20日に行われたドラフト会議で、読売ジャイアンツから6位指名を受けた。仮契約を結び、ジャイアンツの一員としてスタートする大江の3年間の歩みを追った。

とにかく楽しいという思いで投げた1年夏の投球

大江 竜聖投手(二松学舎大学附属高等学校)

 中学時代はヤング侍に所属していた大江竜聖二松学舎大附に進んだのはヤング侍のOBで2学年上の宮下幹太選手がいたことがきっかけだという。そんな大江が二松学舎大附に進んで最初に苦しんだのは、考え方の違いだった。
「中学は投げたり打ったりするだけの世界ですけど、高校は結果を出すための考え方とか精神的な部分を問われることが多く、そこについていくことに精一杯でした」

 その中でも少しずつ高校野球に順応していった大江は市原 勝人監督から登板機会を与えられ、練習試合で先発をしていく。しかし打たれる毎日だった。それでも使ってくれる市原監督のために、大江はなんとか結果を出したいと思っていた。
「あの時は抑えるために先輩たちに話を聞いたり、指導いただいたりしていました」

 そんな大江が練習試合で結果を残すようになったのは、1年夏の大会直前のこと。しばらくは先発として投げていた大江だったが、リリーフに配置転換。リリーフとして好投を見せた大江は、ベンチ入りを果たす。東東京大会でも大江はリリーフとして好投を見せ、チームも優勝し、甲子園出場を決めたのだった。

 大江は甲子園大会でもリリーフとして好投を続けた。まず2回戦の長崎海星戦では5回途中から登板し、4.1回を投げて無失点の好投。さらに3回戦沖縄尚学戦では3.2回を投げて被安打5、2失点だった。この大会について大江は、「あの時は本当に勢いで投げていたので楽しかったです」と振り返る。その勢いのまま、大江は1年秋にエースとなり、早大学院戦で延長15回を投げ切るなどエースとして大活躍を見せ、東京都大会準優勝に貢献。その実績が評価され、二松学舎大附翌年春の甲子園にも出場。大江は二度目の甲子園出場を決めた。

[page_break:2年夏は楽しそうに投げているのを装っていた ]

2年夏は楽しそうに投げているのを装っていた 

大江 竜聖投手(二松学舎大学附属高等学校)

 とにかく楽しかった1年夏の甲子園と違い、2年春の甲子園は嫌な雰囲気があった。初戦の相手は21世紀枠の松山東。大江は16三振を奪う快投を見せたが、納得いく投球はできなかった。
松山東の打者たちはこの球を狙っているんだろうなというのを感じて、投げていてとても嫌らしいチームでした」

 結果5失点を喫し、初戦敗退に終わった。その後の春から夏までの投球は、大江にとって全く満足のいくものではなかった。春の都大会では、準々決勝日大三に9失点を喫し、夏の東東京大会では、4回戦堀越戦で6回表まで4対1とリードしていたものの、堀越の猛反撃に遭い、サヨナラ負け。三季連続の甲子園出場はならなかった。この時期、大江は自分の投球に苦しんでいた。

「あの時はどう抑えれば打ち取れるのか。その打ち取り方が分かっていませんでした。楽しそうに投げているのを装っていましたが、実際は投げるのが怖かったですね」

 投げるのが怖い。そんな状態からどう克服したのだろうか。克服のカギは最上級生になる責任感だった。
「やはり最上級生になるので、自分が責任をもって投げないとという責任感から、怖さはなくなっていきましたね」

 上級生としての自覚を持つことで、怖さを乗り越えていったという大江が次に着手したのは、投球フォームの修正だった。今までは強く腕を振ろうと意識するあまり、上半身に頼った投げ方だったが、キレのあるストレートを投げるために体の回転を意識したフォームに修正。すると球速が一気に上がり、それまで140キロ前後だったのが、一気に145キロ前後まで速くなった。それは大江にとっても驚きのスピードアップだった。こうして、少しずつ状態を上げて秋の都大会に臨んだ大江だったが、初戦となる2回戦でいきなり清宮 幸太郎関連記事擁する早稲田実業と対戦する。

[page_break:早稲田実業戦と関東一戦で見せた大江のハートの強さ]

早稲田実業戦と関東一戦で見せた大江のハートの強さ

大江 竜聖投手(二松学舎大学附属高等学校)

「清宮を打たせたら早稲田実業は絶対に乗るので、何としてでも抑えるつもりだった」と、大江は清宮のときだけ一気にギアを上げた。普段、大江はノーワインドアップだけで投げるが、清宮のときに限りワインドアップで投げた。そうして気持ちも自然に乗っていった大江は、投げるたびに雄たけびを上げていた。

 しかし清宮に2安打を打たれてしまう。清宮の印象について大江は「本当にバットに当てる能力が非常に高い選手で、抑えるのが本当に大変な選手でした」と語る。

 それでも9回表には清宮を三振に抑え、雄たけびを上げる大江。延長10回の激闘の末サヨナラ勝ちを収め、3回戦進出を決めた。大江も調子を上げていき、チームも勝ち進み、ついに都大会決勝関東一戦を迎える。大江は、140キロ台中盤の速球とキレのあるスライダーのコンビネーションで関東一打線を抑え込む。しかし8回表に同点に追いつかれ、9回表に2点を勝ち越され、あと一歩で優勝を逃してしまった。この試合はまさに関東一打線の粘り強さが光った試合だが、ポイントとなったのは大江の配球だ。

 勝ち越しを許した大江は、最速148キロを計測した剛速球でビシバシと投げ込んでいた。この時のことを、4点目となる内野安打を放った関東一宮本 瑛己に大江の印象を聞くとこう答えていた。「あの時の大江君のストレートは本当に速くて、とにかく当てて何とかしようと思っていました。それで、スライダーがきたらごめんなさいという思いで打席に立ちました」

 宮本は何とかバットに当てると、自慢の快足で内野安打にした。この時、大江は変化球を投げることは一切頭になかったという。
「あそこは勝負にこだわっていました。スライダーを投げて抑えても、何か逃げているのが嫌だったんですよね。ストレートを投げて点を取られましたけど、僕は勝負したことに後悔はありません」と言い切った大江。投手としてのプライドの高さをのぞかせるコメントであった。

 悔しさで終わった2年秋。そこから大江投手はどんな課題をもって冬の練習に取り組んだのか?後編では冬の取り組みや3度目の甲子園を目指して夏へ向かった大江投手の様子を描いていきます。

(文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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