Interview

神宮をどよめかせた天才ショートストップ!嶋谷将平の華麗なる守備の秘密

2016.11.12

嶋谷将平選手

 11月12日、神宮大会2日目。この日、宇部鴻城のショート・嶋谷将平のパフォーマンスに魅了された高校野球ファンは多いのではないだろうか。広い守備範囲に、難しいバウンドを捌く球際の強さ、持ち替えが速い捕球技術、確実性の高いスローイング、さらに深いところからでも刺せる強肩とどれをとっても一級品。好守備を連発するたびに観客をどよめかせた。

中学時代は捕手!高い意識で中国地区ナンバーワンショートと呼ばれる存在に

 中国大会では、16打数10安打と大当たりしたバッティングだけでなく、好守備を連発し、中国大会優勝に貢献した嶋谷将平。宇部市立恩田小、宇部市立常盤中(軟式)を卒業後、「山口県で甲子園に最も近いチーム」として宇部鴻城に進学。まさに宇部市で生まれ育った選手だ。中学では、チームの事情で捕手だったという嶋谷だが、なぜ高校でショートをやることになったのか。

 それは宇部鴻城の尾崎監督の方針がある。
「うちは選手が希望するポジションをやらせます。自分が好きなポジションだったら覚悟を持ってやってくれますからね。嶋谷はショートを希望していましたが、最初から守備は光るものを持っていました」
 嶋谷自身も、入学時から守備に対して自信を持っていた。嶋谷が特にこだわっていたのが持ち替えを速くすることだ。嶋谷の守備を見ると捕ってから投げるまでが早い。中国大会決勝の後にも嶋谷は話してくれたが、キャッチボールから意識しているという。
「普段からそういうことをやっていると、いざというときにすぐに縫い目をかけて投げることができます。逆にゆっくりとやっているとうまく握れないことがあります。だからキャッチボールからそれをやれば、縫い目にかけやすくなり、良いボールが投げられるんです」

 常に高い意識で守備を磨いてきた嶋谷は前チームからレギュラーに。2年春には山口県を代表するショートに成長し、そして2年夏は5番ショートとして山口大会を戦ったが準優勝に終わり、あと一歩で甲子園で届かなかった。その悔しさがこのチームの原動力となった。そして新チームスタートと同時に主将に就任した嶋谷。宇部鴻城は主将を投票制で決める。投票の結果、嶋谷が満票で決まった。尾崎監督は「野球に対する取り組みはもちろんですが、チーム一の努力家でありますし、それは私だけではなく、チーム全員が認めています」と話すほど。その嶋谷が束ねたチームは秋季県大会で優勝を収め、中国大会でもがっちりと噛み合った投打をみせ見事優勝。嶋谷は準決勝決勝の2試合で8打数7安打と固め打ちで、攻守ともに優勝に貢献。

 バッティングでは、相手バッテリーの配球をつかんでから事前に狙い球を絞り、そしてタイミングもネクストバッターサークルで合わせる作業をして、しっかりと準備する姿も。攻守ともに意識の高さが高次元のパフォーマンスを生んでいた。

[page_break:神宮では嶋谷の守備を見て何度もどよめきが起こった]

神宮では嶋谷の守備を見て何度もどよめきが起こった

 そして迎えた神宮大会。[stadium]神宮球場[/stadium]でプレーするにあたって嶋谷が準備をしていたことは、
「[stadium]神宮球場[/stadium]は人工芝で土よりも打球が速いので、深めに守り、そして2年前に神宮大会でプレーした先輩たちの話を聞いて、まずはしっかりと捕球してから送球に移行しようと思いました」
 この日、嶋谷が見せたプレーはすべてスピード感があった。それはいつも持ち替えが速い守備を意識しているからであろう。そして2安打を打った打撃については、「相手は低めに変化球が集まるので、高めに合わせて、それを狙って打つことができました」と振り返った。また、尾崎監督は「夏を戦った選手なので、その疲れで秋季大会序盤は振れていなかったのですが、今はバットが振れるようになってだいぶ良くなりました」と話した。
 しかし神宮大会初戦でチームはサヨナラ負け。試合後の嶋谷は険しい表情で、
「しっかりとチャンスを作りながらも攻めきれなかったところに課題が出ました」とチームとしての課題を語った。尾崎監督も、「今回の悔しさが原動力となってくれるでしょう」と現在のチームに期待を込めた。

 最後に嶋谷は神宮大会でプレーしたことについては、
「これだけお客さんが集まった球場でプレーすることは初めてでした。その分、楽しんでプレーができたらと思いました」この試合で楽しんだのは本人だけではない。嶋谷のプレーを見た高校野球ファンたちも彼に存分に楽しませてもらった。試合中、周囲から嶋谷を絶賛する声が相次いだ。来春、選抜甲子園出場が実現したら、その舞台で全国ナンバーワンショートと呼ばれるような活躍を見せたいところだ。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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