Interview

柳 裕也投手(横浜-明治大)「横浜高時代に取り組んだ猛練習漬けのトレーニング」・前編

2016.11.11

 今年のドラフトで2球団競合の末、中日から1位指名を受けた明治大柳裕也投手。明治大では1997年の川上 憲伸(元中日、元ブレーブス)以来となる投手兼主将は、春夏合わせて5回の甲子園優勝を誇る横浜高から、今秋39回目のリーグ優勝を果たした明治大へと、アマチュア野球の王道を歩んできた。東京六大学リーグ通算での防御率は、抜群の安定感を示す1.84。歴代8位となる通算338三振を奪い、23の勝ち星を積み上げた。

 大学入学後、3年秋から5勝、6勝、5勝と、順調に成績を伸ばしていった柳投手に、トレーニングに対する考えや、これまでどのように自分を高めてきたかなど、じっくりお話を聞かせてもらいました。

名将と名指導者の下で走りに走った高校時代

柳 裕也投手(横浜-明治大)「横浜高時代に取り組んだ猛練習漬けのトレーニング」・前編 | 高校野球ドットコム

柳 裕也投手(明治大学)

 宮崎出身の柳投手は中学時代、都城シニアに所属。3年夏には全米選手権で優勝し、サイヤング賞(最優秀投手賞)を受賞するなど、当時から名の知られた投手だった。いくつもの名門、強豪から声がかかった中、柳投手が進んだのは名門中の名門の横浜高だった。

「子供の頃からよくテレビで甲子園の試合を見ていたのですが、横浜高のカッコよさは別格でした。憧れていたので、あの『YOKOHAMA』のユニフォームを着たいな、と。それと、横浜高は松坂大輔投手(現・福岡ソフトバンク)や涌井秀章投手(現・千葉ロッテ)をはじめ、何人もの好投手を輩出したところ。そこで野球を学んでみたい、という思いもありました」

 横浜高に入ると“猛練習漬け”の毎日が待っていた。投手はとにかく走れ、走れ。柳投手は「いかにその日のメニューを乗り越えるか。それで精一杯でしたね。とにかく必死でした」と述懐する。松坂投手や涌井投手も鍛え上げた横浜高の走り込みは半端ではなかったという。

「投手のトレーニング方法はいろいろありますが、走ることが一番大事、というのが横浜高の考えでした。ウエイトは一切やりませんでしたね。メニューは全て覚えていますが(笑)、練習でまず行うのが『ダービー』です。グラウンドを1周何秒以内と、タイムを計って、10周くらいします。次に100mダッシュが20本ほど。その後、(横浜高名物の)アメリカンノックを受けながら、ポール間を走ります。ノッカーの小倉 清一郎さん(元部長、当時はコーチ)は、捕れるか捕れないかのギリギリところに上手く打つので、これが本当にきつかったですね。

 ただ苦しそうにしていると「松坂や涌井はこれくらいで根を上げなかったぞ」と、ゲキが飛ぶので、こちらも負けられない、となる。これが終わるとタイヤ押しなどをして、暗くなったら今度はゴロでのアメリカンノックを受けます。締め括りはスクワットなど自体重を使っての、下半身のトレーニング。なにしろ夏場も、準々決勝の前くらいまでは調整などなく、ずっとこういう感じでしたからね。

 オフになると、『ダービー』が20周、30周になるなど、走る量がもっと増えました。走り込みの成果でフォームが安定したのは確かです。ですがユニフォームのサイズが変わるほど、下半身が大きくなった、というのはなかったですね(笑)。きっと絞りに絞っていたからでしょう。明治大でももちろん走っていますが、あんなに走ることはもうないでしょうね。厳しかったですが、あれだけ走れたのは、追い込んでもらったおかげだと思ってます」

[page_break:大学でトレーニングに対する意識が高くなった]

大学でトレーニングに対する意識が高くなった

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柳 裕也投手(明治大学)

 横浜高では甲子園通算51勝(歴代3位タイ)の名将・渡辺 元智前監督(現・同高終身名誉監督)から、投手としての基本的な考え方を伝授され、名参謀として名高い小倉元部長からはフィルディングやけん制など、投手に必要な技術もみっちり仕込んでもらった。

「渡辺監督(当時)からはいろいろなことを教わりました。特に印象に残っているのが『マウンドからホームベースまでを1本を橋と思い、そこから落ちないように投げなさい。落ちないように投げるには、いかにホーム方向に最大限の力を加えるか。腕が横振りになるなど無駄な動きがあれば、橋から落ちてしまう』と言われたことです。これは今も自分のフォームを考える上での基盤になっています。

 一方小倉さんの指導は厳しかったですが、本当に野球の知識が豊富な方で、ピッチング以外の投手に必要なこともいろいろ教えてもらいました。これは財産になっていますね。渡辺監督や小倉コーチ、それと平田 徹部長(当時、現監督)と出会えた横浜高での3年間が、僕のベースを作ってくれたのは間違いありません」

 横浜高では走り込みがトレーニングの中心だったが、明治大では体幹のトレーニングやウエイトも行うように。上半身、下半身ともまんべんなく鍛えた結果、筋力がアップして、体も大きくなった(現在84㎏)。体幹が安定したことで、フォームの軸も安定するようになったという。

「入部してすぐにトレーナーの方から体幹の重要性を教わり、それから1年生の間はもっぱら体幹のトレーニングをしていました。ウエイトが加わったのは2年生になってからです。もちろん、高校の時ほどではないものの、ラン系のメニューは継続してやっていました。明治大に入ってからトレーニングに対する意識は高くなりましたね。

『メイジ』は向上心の高い選手が集まっているチームで、それに刺激されたところも大きいと思います。入ったばかりの新入生の頃は、最上級生だった関谷亮太さん(日大三高出身。JR東日本を経て現・千葉ロッテ関連記事)が熱心にトレーニングしている様子を見て、トレーニングに向き合う姿勢を学びました」

 柳 裕也選手のインタビューは後編に続く!!

(執筆・写真/上原 伸一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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