目次

[1]入部当初はプロになるなんて思ってもみなかった
[2]ウエイトで体を大きくしたことが結果につながる / ボールの威力を増すため、より良いフォームを追及
[3]調子が悪いのでなく、体の動きが悪いと認識 / わかっていても打たれないストレートを投げたい

 たとえ試合で結果が出なくても“調子が悪い”の一言で片付けない。この意識の高さが4年春までに20のリーグ通算の勝ち星と、2度の最優秀防御率を獲得させたのだろう。

 もっとも加藤投手は「いくらいいピッチングをしようが、チームが勝たなければ意味がないですし、3年秋の最優秀防御率もチームは3位だったので、素直に喜べませんでした。そもそもリーグ戦は真剣勝負。勝たなければ面白くないので」と話す。最終学年の今年も「最後の年だから、という特別な気持ちはありませんでしたね」と加藤投手。「これまでも常に“勝ちたい”“優勝したい”と思いでやってきましたからね。臨むスタンスは全く同じでした」と続ける。

わかっていても打たれないストレートを投げたい

加藤 拓也投手(慶應義塾大学)

 加藤投手のストレートの最速は153キロ。その球質は重く、今年の秋、加藤投手が東大1回戦でリーグ史上24人目のノーヒット・ノーラン達成した際にバッテリーを組んだ郡司 裕也捕手(1年。仙台育英学園高出身関連記事)は「まるで鉛玉のよう」というコメントを残している。そんなストレートを投げる加藤投手は、どんなストレートを理想としているのだろうか?

「小学生の頃、速い球を待っていたのに、いざその球が来たら打てなかった、という話を聞いて(それって面白い)と思ったことがあったんです。そういう真直ぐ、来るとわかっているのに打てない真直ぐを投げたいですね。では、それはどういうボールかというと、打者からすると“ギャップ”があるボールかと。ここに来るだろうという予測から軌道が、さらには、これくらいの速さで来るだろう予測からスピードがずれているボールです。その軌道は曲がっても、落ちてもいいと思いますが、僕の場合、バットの上を通るスピンが利いた伸びのあるボールを投げたいと思っています」

 加藤投手はこう答えると、次のように加えた。
「プロの世界なら、僕のようなタイプが丁寧に投げたところで、たかが知れていると思うんです。それにプロでは“個性”が求められる気がするので、自分が勝負できるもので勝負したい。それが、来るとわかっていても打てない真っ直ぐを投げることなんです」

 球種は少ない。最近の投手は持ち球が多い傾向にある中、加藤投手は真直ぐの他にスプリットとスライダーがあるだけだ。これは何か理由があるのか?
「僕はあまり器用ではないので…(笑)。それもありますが、少ない球種をしっかり磨いて、精度を上げたいのと、いろいろな球種を投げようとするとフォームにズレが生じる、と考えているからです」

 加藤投手は慶應大に入ってから、慶應義塾高時代に投げていたフォークの握りを浅くした。
「スピードがある変化球を投げたい、と思ったんです。フォークとスライダーの速さがほとんど変わらなかったので、緩急をつけるためにもフォークをスプリットに変えたんです」

 コメントの1つ1つから自分がどういう選手であることを分析し、さらなる上達へ向けて、常に研究を怠らない加藤投手。その探究心は、今年、リーグ優勝を収め、常勝軍団を目指そうとしている広島東洋カープにとって大きな戦力になっていきそうだ。

(取材・写真/上原 伸一)

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