Interview

阪神タイガース 原口 文仁選手(帝京出身) 「大飛躍につながった打撃面のチェックポイント」

2016.10.28

 4月27日、育成契約だった原口は3年ぶりに支配下登録を勝ち取ると、早速その日ナイターで行われた巨人戦に出場。代打で起用され初めて1軍の舞台に立つと、2打席目にはプロ初安打を放った。翌日には初打点を挙げ、その次の日は初のスタメンマスクをかぶる。5月4日の中日戦で待望の初本塁打を放ち、打率.380と爆発した5月は育成選手経験の野手では初となる月間MVPを受賞。

 初出場が4月下旬だったため、オールスターファン投票ではノミネート選手リスト外だったが、中間発表まで捕手部門のトップを快走。投票の際に一手間かかる立場としては異例のことだった。シーズンが進むにつれ中軸を任されることも多くなり、今季最終戦も4番でフル出場。そんな激動のシーズンをどう捉え、今、何に取り組んでいるのか。秋季練習で汗を流す原口に語ってもらった。

今年1年は想像以上の活躍!

阪神タイガース 原口 文仁選手(帝京出身) 「大飛躍につながった打撃面のチェックポイント」 | 高校野球ドットコム

原口 文仁選手(阪神タイガース)

「ホント、自分でも予想してなかったぐらい試合も出れたし、いろんな経験もさせてもらってホントいいシーズンだったと思います」

 107試合に出場した今季を振り返った時、真っ先に出てきた言葉がこれだった。2桁本塁打を放っても、その要因は「一番は試合に出させてもらったことですね。それに尽きると思います」 。95安打を放っても「初ホームランは『あ、打てたんだ』と思いましたけど、自信にはまだまだ。いい感覚で打てたのは覚えてます。ただ感触どうこうよりも1軍で初めて打ったということが大きいと思います」と謙虚な言葉が並んだ。

 伝統球団で4番を務めたことについても、「驚きですよね。それしかないですよね。でもいつも通りという思いでやりました。代役の4番なんで、そこまで意識はしないようにしてたんですけど、いざ打席に立つとやっぱりプレッシャーだったり、いいところで回ってくるんでね、そこで打てないとチームに影響するということは痛感しましたね 」

 かなり高かったはずのチームへの貢献度については控え目に話したが、今後の課題には冷静に向き合っている。
「前半から中盤にかけては、悪くなったら修正出来ていい繰り返しが出来てたんですけど、やっぱり8月、9月はけっこう内角攻めが多くなってきていて、そこで落としてしまったんでね。そこはホント今後の大きな課題だと思います」

 5月に.380だった月別打率は6月が.250。7月に再び.373と上昇カーブを描いたが、8月以降は長打力が影を潜めた。ちなみにシーズン通してのコース別打率はインハイが.300、インコース真ん中も.300、インローが.200。

[page_break:シンプルな打撃フォームは理想な打撃を求めているうちに行き着いた]

 決して苦手にしているわけではない。それでも徹底して突いてくるのがプロの世界。

「シーズン序盤と終盤では(相手の配球が)もう一気に変わりましたね。しつこいぐらいインコース攻められて、それをこっちも打たないとずっと来ると思ったんで、狙いに行ったらファールにもなるし。そこで落とされたり曲げられたりして、相手の術中にはまった感じでやっぱり落ちてきましたね。攻められてる、来るとわかっていても、ボール球まで手を出すんでしょうね。ストライクゾーンは何とか詰まってでも(野手の間に)落とせるという気持ちはあったんですけど、やっぱり良い当たりを打ちたいという欲が出て来て、良くない方向に行ったというのはありますね」

シンプルな打撃フォームは理想な打撃を求めているうちに行き着いた

阪神タイガース 原口 文仁選手(帝京出身) 「大飛躍につながった打撃面のチェックポイント」 | 高校野球ドットコム

原口 文仁選手(阪神タイガース)

 毎日のように試合がありコンディショニングが最優先されるシーズン中と違い、技術向上の練習に集中出来るのがこの秋である。金本 知憲監督も「若手は1番伸びる時期。一冬越した時に伸びてるかどうか。伸びる選手はこの時期に1番伸びる。どういう意識を持って秋季練習するかでホント変わってくる」と話し、原口自身も実りの秋になりそうですか?との問いかけには間髪入れず「もちろんです」と即答。さらなるレベルアップを誓い練習に励んでいる。

「今はバッティングのことが一番ですかね。それとトレーニングに重点を置いて。キャンプに入っていくまでに守備のこともやっていかないといけないんでね」

 フリーバッティング後には金本監督から技術的な指導を受けてもらっている原口選手の姿があった。そして打撃ゲージに入る前には、構えた位置からステップして一旦止まり、トップの位置を確認してから再び始動するというスイングを素振りでもティーバッティングでも繰り返していた。

 現在の原口選手のムダの無いシンプルな打撃フォーム、これは特に誰かを意識したわけではなく理想の打撃を追い求めるうちに自然と行き着いたという。調子のバロメーターは「ポップフライが上がり始めたら良くない傾向があるんで、切り始めたら良くないんで、それが出始めたら違うスイングをして一回修正して元の感覚で打つって感じですね」。

 チェックポイントは「軸で回ること。トップが深く懐を作れているかどうかとかですね。鏡を見てチェックしますね」と語る原口。まさに今、秋季練習で取り組んでいることだ。フリーバッティングでは何度も綺麗な弾道の打球をバックスクリーンに運んでいた。しかし、意外にも長打力アップのために有効な練習を尋ねると返答に詰まる。

「これは難しいですね。僕はそんな長打力がある方ではないと思っていたので・・・そんな意識して長打を打つという感じではなかったので・・・どんな練習をすればというのは難しいですけどでも、自分のスイングをどんなボールが来ても出来るようにというのは心掛けてやってますね。素振りの形をバッティング練習やティーバッティングにつなげるイメージですね」

[page_break:高校3年間はたくさん食べたことが一番の思い出]

 どの打者も素振り通りのスイングが公式戦で実践できるためにいろいろと工夫を凝らす。しかしそう簡単に思い通りにいくことはない。原口が回答につまるのはそのためだろう。だが、原口の今季成績を振り返ると、多くの選手が原口選手の長打力の秘密を知りたくなる。

 今季は318打数で11本塁打。28.91打数あれば一発を放つことが出来る。これはリーグ13位に相当し、チームでも上にいるのはゴメス選手だけとかなり高い確率で本塁打を期待できる選手なのだ。それでいて打率は3割近くと高い。練習法について難しいと話をしながらも、これまでのインタビューを振り返っても原口は、自身の打撃の課題、それに向けてどんな練習法をしているのか、自身の打撃フォームのチェックポイントをしっかりと持っていることが分かる。

高校3年間はたくさん食べたことが一番の思い出

阪神タイガース 原口 文仁選手(帝京出身) 「大飛躍につながった打撃面のチェックポイント」 | 高校野球ドットコム

原口 文仁選手(阪神タイガース)

 最後に原口は自身の高校時代を振り返ってくれた。原口の出身校である帝京はパワーピッチャーと強力打線のイメージが強い。原口の世代には、エースに最速149キロ右腕・平原 庸多(東京ガス)、1学年下に山崎康晃(横浜DeNAベイスターズ)、2学年下に伊藤拓郎(現・群馬ダイヤモンドペガサス)といて、原口の前後を打つ打者は本塁打を打てる強力打者ばかりであった。

 その思い出は「たくさんご飯食べたことが一番ですね。食べられないやつもいたし、もどすやつもいたし。そういうところからチームの団結力につながってると思います。それプラス食べてすぐきつい練習。春、僕たちの代は(甲子園に)出れなかった分そういうのがあったので、最後の夏行けたのは1番嬉しかったですね」

 練習量よりも先に思い浮かんだのは食事量。
「タッパーにご飯を3合入れて来て、お昼みんなで食べるって感じでやってましたね。合宿とか行ったらコーチや監督におっきいお皿に山盛りご飯盛られてカレーかけてみんなで食べるとか。朝からけっこうな量でした」

 帝京での3年間は野球選手としての土台を築き、今の原口の大きな支えとなっている。来季の意気込みを伺うと、
「もちろん、まずはチームが勝たないといけないんで。そこに少しでも守備でも打撃でも貢献していけるようになりたいなと思ってます」

 高校球児へは「私生活が野球につながると思いますし、学校でも野球部は目立つんでそういうところからみんなの鏡になれるようにしていけば、自ずとチームの成績も良くなると思うんで、私生活から鏡になれるように頑張ってほしいと思います」とエールを送った。

 最後まで謙虚に取材に応じてくれた原口。かつて3桁の背番号をつけ、[stadium]鳴尾浜[/stadium]が主戦場だった頃、当時2軍監督を務めていた平田 勝男チーフ兼守備走塁コーチが「原口は打席の中で人間性が出ている。若い頃の俺にそっくりや」と冗談交じりに話していたことがある。その人間性の良さは2軍首脳陣はもちろんチーム関係者の誰もが知るところ。謙虚で努力家の好青年が来季も甲子園を熱くする。

(文=小中 翔太

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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