目次

[1]春日部共栄で得た大きな学び
[2]最後の夏はベスト8
[3]気付きを得るきっかけを

最後の夏はベスト8

高校時代の中村 勝投手

「以来、どの試合でもそれなりに抑えられるようになりました。でも、最後の夏前の一時期、抑えているのですが勝てない試合が続いたことがあったんです。どの試合も0対1で敗戦、というような。その時、練習中に僕が怠慢なことをして監督に怒られたことがあったんです。『お前ひとりで野球をやってるんじゃないんだ!』と」

 正直、怠慢な態度をとっている自覚はなかった。でも、ハッとさせられるものがあった。
「当時は、マウンドにあがったらすごく勝気になって、絶対に負けたくない気持ちばかりが前面に出ていたと思います。でも高校3年間で監督にこっぴどく叱られたのはその時ぐらいだったこともあり、気付かされるものがありました。それから心を入れ替えました」

 そして迎えた高校最後の夏。二ケタ奪三振を記録しながらベスト8へと進む。準々決勝の相手は埼玉栄
「この試合の3回の攻撃時に犠打をして走りだした時、腰を怪我してしまいまして…。でもなんとか9回まで投げ切りました」

 試合は我慢の粘投も実らず1対2で惜敗。中村投手の高校野球は終わった。
「もちろん悔しい思いもあります。ですが、それまで三振をバンバン奪っていた自分が、最後の試合では腰を痛めたこともあり打たせて取った。そこで仲間を信頼して投げて抑えるという経験をして。だから、最後にみんなと一体になれた印象も強いんです」

 それまで三振を取るスタイルだった投手が、突如仲間を信頼して打たせて取るピッチングにシフトチェンジすることはできない。おそらく、中村投手は最後の試合前から独りよがりにならないピッチングを志向していたのだろう。それが、最後の最後、不測の事態が招いたこととはいえ、本当に「チーム一体となること」を体験した。

 この貴重な経験は、プロ入り後もいかされている。
自身が振り返るプロ入り後のベストピッチは、初登板初先発初勝利でも日本シリーズでの快投でもなく、2015年8月23日のオリックス19回戦。この試合で中村投手は1失点完投勝利を挙げている(スコアは5対1)。

「完投した試合は総合的に見ても、いい展開に持って行けたと感じているのですが、ベストは昨シーズンのオリックス戦です。全くランナーを出さなかったわけではないのですが、要所でダブルプレーが取れたり、しっかり三振が奪えたり。バッターとの駆け引きの中で上手く相手を追い込むこともできました。今の僕は、バンバン三振を奪える感じではないので、いかにテンポよく打たせて野手の人に守ってもらうか、が重要。その狙いがピタッとハマった感じがしました」

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