Interview

初の甲子園に導いた髙田 萌生投手(創志学園) 「『人差し指』に秘められた剛腕への過程」

2016.07.25

 7月22日・岡山大会準々決勝・岡山理大付戦で自己最速を3キロ上回る154キロをマークするなど、1勝をあげたセンバツから、さらなる進化を続ける創志学園(岡山)の絶対的エース・髙田 萌生(たかた・ほうせい)がついに初の夏の甲子園出場を決めた。センバツ時点で178センチ75キロと投手としては決して大きくない身体からなぜ、あのようなスピードボールが投げられるようになったのか?今回「高校野球ドットコム」では独占インタビューで探っていくことにした。

 前編は野球をはじめようと思った「あの投手」との遭遇から、最速151キロに達した剛腕への過程を追う。

「MLB・松坂 大輔投手」との遭遇から「創志学園入学」まで

髙田 萌生投手(創志学園高等学校)

――まずは月並みですが、髙田投手が野球を始めたきっかけは?

髙田 萌生投手(以下、髙田) 岡山県新見市立西方小学校3年の時に当時、ボストン・レッドソックスでプレーしていた松坂 大輔さん(現:福岡ソフトバンクホークス)のピッチングを見て「カッコいい」と思ったことがきっかけです。横浜高校時代の松坂大輔さん映像はその後に見ました。

――松坂投手のどこに憧れたのですか?

髙田 当時はMLBで活躍している日本人投手が少なかったのに、1年目から成績を残したこと(15勝12敗)がまず、すごいと思いました。横浜高校の映像を見ても存在感やオーラが他の投手と違うものを感じて、野球をやってみようと思ったんです。ただ、地元の新見市立西方小学校にはソフトボールとバスケットボールしかスポーツ少年団がなかったので、まずはソフトボールをすることにしたんです。

――西方スポーツ少年団でのポジションは?また、ソフトボールをしたことで今に活きていることはありますか?

髙田 最初は外野手でした。でも、ソフトボールでもピッチャーをやりたかったので、練習して小学校4年からは投手と外野手になりました。今、地肩が強くなったのはソフトボールの影響が大きいと思います。ソフトボールは軟式のC級より大きくて、少し重い。そこで肩が鍛えられました。

――中学は明徳義塾中(高知)に進学します。その理由は?

髙田 はじめは松坂さんの中学時代(東京・江戸川南リトルシニア出身)のように硬式のクラブチームに行こうと思っていましたので、父親に探して頂いたんです。その過程の中で、父の知人から「明徳義塾中は軟式だけど強豪だし、寮生活で鍛えられる」という話を聞いたんです。「寮生活」というのが魅力的でした。

――それは意外な話ですね。

髙田 プロを目指すのであれば、それくらいした方がいいと思ったので、明徳義塾中に進むことにしたんです。学校見学に行って山の中にある環境も知ったんですが、さほどは気になりませんでした。その時は「自由を奪われる」ということは考えずに(笑)、野球ができればいい、うまくなればいいと思っていたんです。

――入学すると6時半起床。すぐに駆け足でグラウンドに集まり、校歌に国歌、ラジオ体操に最後は行進の朝礼から始まる生活が始まりました。ここで学んだことはありますか?

髙田 人間性を学びました。学校では道徳的な話も多く受け、ゴミを拾うことなども明徳義塾中でしっかり教えて頂きました。野球以外の部分も含めてよかったと思います。

――同時に野球の技術面でも様々な学びがあったと思います。

髙田 入学当時は宮岡 清治監督で3年春に神谷 洋隆コーチが監督になったんですが、野球自体本格的にするのがはじめてだった僕に対して、基本的なことを教えてもらいました。逆に投手の技術的なことはあまり言われませんでした。

⇒次のページ:創志学園で「勝てる投手」への鍛錬励む

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髙田 萌生投手(創志学園高等学校)

――当時の高知県中学軟式野球は中学3年春には全国制覇も果たした高知中の全盛期でした。

髙田 僕はもう1人の投手と交互に投げていたのですが、高知中はとにかく強かった。特に投手・吉村 大輝(現:高知3年・投手)は本当にすごいと思いました。ストレートのスピード自体は僕も負けていない自信があったんですが、ストレートのキレや変化球、フィールディング、けん制などは中学生離れしている。いつも刺激を受けていました。

――ということは髙田投手にとって最初のライバルは高知中の吉村投手ということに……

髙田 そうですね。投手としてずっと意識している存在でした。僕は中学自体ストレートのスピードだけだったので、総合的な投手になりたいと思っていました。

――そのスピードは中学時代どれくらい?

髙田 3年冬明けに計測した時には133キロでした。

――全国大会には出場できませんでしたが、他に中学時代の思い出はありますか?

髙田 2年秋に高知中を除いた軟式選抜強化合宿メンバーに選ばれて、練習試合をした思い出があります。

――そして、高校進学。いろいろな選択肢がある中で創志学園という進路を選びました。

髙田 もちろん、明徳義塾に残れば甲子園出場の可能性は高いことは解っていましたし、中学でできなかった高知へリベンジを果たしたい考えもありました。その一方で2011年のセンバツ初出場で創志学園の存在を知って、しかもそれが地元・岡山県のチームということで印象に残っていたんです。「地元に戻るならこういうチームでプレーしたい」と思っていました。

 そしてもう1つ。野球を始めたきっかけになった松坂大輔さんへの憧れから横浜高校にも進みたいと思って、まずは横浜を第一希望にしたんです。ただ、明徳義塾中では横浜高校のような私学高への進学は認められていないので、いったん、地元の新見市立新見第一中に転校してから横浜の練習を見学しました。

――憧れの横浜高校、グラウンドはどうでしたか?

髙田 渡辺 元智監督(現:同校終身名誉監督)や小倉 清一郎コーチもいらっしゃって、すごい雰囲気でした。練習を見ても流石だと思ったんですが、この時にはスポーツ科の推薦が埋まっていて、練習には遅れて参加することになってしまう普通科しか枠がなかったんです。となると野球をするには厳しい。そこで横浜はあきらめて創志学園に入学しました。

創志学園で「勝てる投手」への鍛錬励む

――そして創志学園での高校野球生活が始まりました。硬式野球もはじめてになります。

髙田 入学当初最初の投球で138キロが出ました。硬式球は軟式よりも投げやすかったです。

――高校入学前に硬式ボールは握っていたのですか?

髙田 中学3年の秋に地元へ帰ってきて以降、鳥取県にあるベースボールアカデミーで室内投球やトレーニングもすることができました。ここで硬式ボールを投げる力を付けられたことが、高校入学当初からの138キロにつながったと思います。入学後すぐの紅白戦で登板しても打たれる感じはなかったです。しっかりと準備ができていました。

⇒次のページ:剛腕・髙田 萌生のポイントは「人差し指」

[page_break:剛腕・髙田 萌生のポイントは「人差し指」]

――夙川学院(兵庫)女子ソフトボール部で16度の全国制覇を果たし、2005年には神村学園(鹿児島)をセンバツ準優勝に導いた長澤 宏行監督からはどのようなことを学びましたか?

髙田 先生にいつも言われているのは「勝てる投手になれ」。(長澤)先生はプロ野球選手も(神村学園では野上 亮磨(埼玉西武ライオンズ投手)、創志学園では奥浪 鏡(オリックス・バファローズ内野手)も輩出しているので、プロに行くために必要な打撃や人間性や性格も含め「勝つ投手」になるための要素を教えて頂いて、成長できました。

――「勝つ投手」について、髙田投手の考えをもう少し掘り下げていきたいと思います。「心」の部分では先ほど言った部分になると思いますが、「体」の部分ではどのように考えますか?

髙田 松坂 大輔さんが横浜高校3年の時に春夏連覇された時は連投しても延長になってもバテない体力・スタミナがありました。マウンドを他の投手に譲らない体力を持つ投手が「勝つ投手」だと思います。

――そんな投手像に近づくべく、これまで取り組んできたポイントはありますか?

髙田 まずは「走る」ことを毎日続けること。そして「投げ込み」。この2つを重視してきました。走る部分ではポール間走やショートダッシュ、坂道ダッシュ。投げ込みでは強いボールをシュート回転を抑えながら投げることを意識していました。尻から出て、左肩を少し中に入れて、横向きのまま体重移動をする意識を持っています。

剛腕・髙田 萌生のポイントは「人差し指」

ワンシームに近い握りをする創志学園・髙田 萌生投手のストレート

――そこに変化球などの「技術」が加わってきますね。

髙田 高校入学当初はカーブが苦手だったので、ストレートとスライダーだけを投げていました。実はスライダーも中学時代と握りも違うんです。打者の手元で変化させるために、いろいろと考えて回転数を上げるため、縫い目に人差し指をかけて横に滑らせるように、投げるようにしました。

――これは、菅野 智之投手(読売巨人軍関連記事)が投げる「ワンシーム」に近いですね。

髙田 はい。変化球を投げるには人差し指がポイントなので。カーブもそこを支点にして親指をずらせて最後に人差し指をかけるイメージです。ストレートも普通に握ってから最後に人差し指で押す。僕の中では人差し指が一番力がかかるので。この話はあまりしないんですけど……。

――この「人差し指」理論に行きついたのはいつごろですか?

髙田 昨年の夏・岡山大会決勝戦が終わった後です。それまではスライダーも捻って投げていたりしたんですが、打者に見極められやすいボールでした。そこで回転数について考えるようになったんです。夏に気付いて、中国大会を制した秋に投げはじめて、調子が悪かった明治神宮大会の反省を踏まえて、冬に練習を積んでセンバツで完成させた。そんな流れです。

 髙田投手、創志学園の皆様!初の甲子園出場おめでとうございます!!インタビューはまだまだ続きます!!26日公開の後編もお楽しみに!!

(文=寺下 友徳


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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