Interview

日本ウェルネス高等学校(東京) 渡部健人選手 「かっ飛ばせ!神宮のスタンドへ!」 

2016.07.19


渡部健人選手

 

 この春、初の春季東京都大会出場でいきなりベスト16!そして夏もベスト16と快進撃を続ける東京日本ウェルネス。そのチームを引っ張るのが主砲の渡部健人である。4回戦の独協戦で二打席連続本塁打を放ち、高校通算25本塁打とした渡部。その渡部はかつて横浜商大高に在学していて、1年夏からレギュラーを獲得するなど、将来を嘱望されていた選手だった。横浜商大高を退学して、その後、なぜウェルネスに進んだのか、そしてウェルネスに入学して成長したことなど、渡部の3年間の歩みを追っていく。

まだまだ野球を諦めきれなかった

渡部健人選手(日本ウェルネス)

  渡部は、名門・中本牧シニア時代から騒がれていた逸材だった。同期には石川達也(神奈川横浜)、高橋敦彦横浜隼人)(関連記事)と名だたる選手と一緒にプレー。渡部の期待度は中本牧シニアの選手の中では誰よりも高かった。
 横浜商大高に入学した渡部は与えられたチャンスの中で、アピールに成功。1年生ながら名門・横浜商大高のレギュラーを獲得。1回戦で横浜隼人とぶつかったが、渡部はこの試合で、6番セカンドでスタメン出場。レフトフェンス直撃の二塁打を放つなど、神奈川の高校野球ファンに存在感を示した渡部は今後の神奈川球界を担うスラッガーとして注目された。その年の秋も活躍を残し、175センチ105キロとは思えない軽やかな二塁守備、豪快な打撃が光っていた。しかし渡部は一身上の都合により2015年1月に退学していた。それでも渡部は野球を諦めなかった。

 選んだのは通信制・東京日本ウェルネス。きっかけは、中学時代の野球部の仲間だった水上虎之介がいたことだ。水上は渡部が日本ウェルネスに入学することについて、驚きだった。
「最初はとてもびっくりだったんですけど、でもまた渡部と一緒に野球ができると思ったので、嬉しかったですね」
中学時代、準レギュラーだった水上は、渡部とあまり会話を交わすことはなかったが、転校して間もない渡部にとって水上は頼れる仲間となっていく。

 渡部は転校生ということもあり、1年間は公式戦には出場できなかったが、チームとしての雑用、スコアラーもこなした。これまでいたチームとは全く環境が違うが、それでも渡部は野球ができる喜び、ウェルネスの仲間と野球ができる喜びをかみしめていた。そして青森山田で監督経験のある美齊津忠也監督のきめ細かな指導も渡部には合っていた。
「先生はいろいろなポジションの細かいところまで知っているんです。そして、試合の中で起きるプレーを教えてくれるんですが、それが本当に起きるんです!」

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人間的に大きく成長したウェルネスの2年間

 渡部が美齊津監督に、「ついていく」と決めたプレーがこれだ。
「ある練習試合で、二死二塁で、僕はショートを守っていたのですが、先生から『打球が飛ぶぞ!』と。でも、一塁が間に合わないから、その時、二塁走者が三塁ベースを飛び出すから、そこでアウトにしろと指示があったんです。実際に一塁でアウトにできない打球が来て、二塁走者が飛び出していたのでアウトにできたんです。先生の指示は的確で、本当にすごいなと思います」

 渡部にとって、美齊津監督の指導、また野球観はすべてが新鮮だった。そして美齊津監督の提案により、中学時代以来となるショートに復帰。そこでも175センチ105キロとは思えない身軽な守備を見せている。この守備も高校に入って上達したようで、主将の水上は「中学時代と比べると驚くほど成長を見せています。守備面の視野も広くなって頼りになります」と信頼を寄せている。

 そして守備だけではない。渡部は副主将に就任したことで、周りを見る機会が増えた。チームとしてどうまとめるか、そして副主将として主将の水上を支える立場となった。渡部は、ただ自分のためだけにプレーをする選手ではなく、チームのために動くことができる選手へと成長していた。そんな渡部の成長ぶりに、周囲は驚いていると美齊津監督が明かしてくれた。

「中学時代はスーパースターだったと思いますが、うちではただの転校生ですから。いろいろ下積みをしたことで、周りが見えるようになってきたのではないでしょうか」
 心身ともに成長した渡部。春の大会ではベスト16入りしたものの、打撃面は絶不調でほとんど安打がでなかった。安打が出たとしても、ボテボテの当たりばかり。本人にとっても人生で一番打てなかった時期だったと後に語っている。春季大会後、渡部は一からフォームを見直し、打撃改造に取り組んできた。そして、この夏の大会へ向けての意気込みをこう語った。

「最後の夏、何が何でも打って、自分の道を切り開いていければと思っています」
この夏、渡部は春の不振を取り返すかのように、これまでの2試合、8打数4安打5打点、2本塁打と当たりに当たっている。次は、優勝候補と目される帝京との対戦。相手に不足はない。

 迎え入れてくれた仲間たちのためにも…。神宮球場へ大きなアーチを描く。

(文=河嶋宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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