目次

[1]鹿児島実業に憧れた理由
[2]打率6割よりも海星戦で打てなかったことが悔しかった
[3]選抜では打率8割以上を目指したい

「野球部にきていただいて本当に良かったと思います」

 鹿児島実・宮下 正一監督は言う。川内南中時代の綿屋を2年生で見たとき、中学生離れした打球は魅力だったが、3年に上がったらイップスが出てしまって、まともに内野送球ができなくなっていた。「うちに来るのは厳しいのでは?」と思って、積極的に誘わなかった選手だったが、綿屋自身が「鹿実に行きたい!」と強い願望を持っていた。

 そんな綿屋が昨秋の県九州大会の9試合で残した打撃成績は6割2分1厘、本塁打4本、打点20。全国でもトップクラスの数字である。センバツでも注目打者の1人に挙げられることは間違いない。主将として、主砲として挑むセンバツへの意気込みを聞いてみた。

鹿児島実業に憧れた理由

綿屋 樹(鹿児島実業高等学校)

 イップスがあって厳しいと思われていた中で、それでも鹿実に行きたいと思ったのはどういう心境だったのだろうか?

豊住 康太さん(三菱自動車岡崎)や野田 昇吾(埼玉西武ライオンズ)さんたちのチームを小学生の高学年の頃に見ていて、鹿児島にもこんな強いチームがあることに衝撃を受けました。『ここだったら全国が獲れるかもしれない』と思って『行くんだったら鹿実』と決めていたので、変える気はありませんでした。鹿実のユニホームを着たいという気持ちが強かったので『あきらめろと言われてもあきらめきれない』心境でした」

 そして宮下監督は、鹿児島実のOBであり、綿屋と同じ川内中学校の先輩でもある。宮下監督から一番学んだことは何だろうか。

「監督さんには何より男として成長させてもらったと思っています。少しでも甘いところを見せれば厳しく指摘されます。野球はもちろんですが、それ以上に人間性の面で鍛えられることが多いです。監督さんがよく言われますが『最終的にお前たちはお父さんになるんだぞ』ということで精神的に強くなることを学んでいます。日ごろの練習ではいつもケチョンケチョンに怒られてばかりなので、いつも『見返してやろう』という気持ちで練習しています」

 日ごろの練習の監督さんの言葉は本当に厳しいと感じる。

「練習の時から緊張感をもってやらないと、試合ではもっと緊張することになります。僕らのチームは何でか分からないけど、試合になると点を取られても、何とかなるという気持ちになって、堂々と落ち着いて試合ができます。それもいつも監督さんから厳しいことを言われているからこそだと思います」

 今年のチームを見ていると経験のあるエリート選手はいないけれど、いざというときはガチっとまとまる泥臭さがある。甲子園から帰って間もない鹿児島市内大会では鹿児島戦、鹿児島工戦、かなり危うい試合だったが、ひっくり返して勝つ試合があった。この試合を見て、筆者は謙虚さと自信のバランスがうまくとれているように感じたが、綿屋主将はどう感じているのだろうか。

「あの試合は何点取られても本当に負ける気がしなかったです。僕らは1人1人がバカであまり考えすぎないところがあります(笑)。その中に何人か考えているヤツがいて、そいつの言葉で一つにまとまれる強さを持っています。何か一つのことに夢中になれるがむしゃらさがあると思います。攻撃の前、監督さんが『この回行くぞ!』と言われると、その気になって実際に点が入るとかもありましたね(笑)」

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