Interview

市立明石商業高等学校 吉高 壯投手「チームの命運を握る立場だからこそ1球に意味を込めたい」

2016.03.03

 勝負どころで三振を奪うと雄叫びを上げ拳を握り締める。
2球で追い込んだ時、捕手の藤井 聖也が1球アウトコースに外して様子を見ようとサインを出しても首を振って3球勝負を要求する。気迫全開のマウンド捌きからくりだす140キロを超えるストレートと鋭く落ちるSFFが武器の右の本格派、吉高 壯今春選抜での注目投手の1人だ。

 吉高は1年秋から背番号1を背負い2年夏に兵庫準優勝、
はチームとしても初めて兵庫を制し近畿大会でもベスト4入り。チームの選抜初出場に大きく貢献した。これまでどんな道のりを歩んできたのだろうか。

ウイニングショットに自信を持ったのは昨夏から

吉高 壯投手(市立明石商業高等学校)

 今や近畿を代表する本格派右腕となった吉高だが、入学当初はセカンド。同時にサードの練習もこなしていた。
投手が本職となったのは1年の夏前。入学前にも投手経験はあったがこの時点での球種はカーブだけ。同学年は55人と部員数が多く、投手だけでも10人以上。そんな環境の中で「練習はきつかった」と明石商業の第一印象を話す吉高は特別目立った存在ではなかった。

 身長170センチと決して大柄ではなく、周りに追いつこうと、とにかく食べた。
その結果、入学時60キロだった体重は現在75キロ。捕手の藤井によれば「最初はそこまで速くなかったですけど、1年の冬練が終わって低めの球が伸びるようになりました」
本数だけでなくタイムも設定されているランニングメニューと、意識して取り組んだ食事トレーニングによって確かな成長の跡を見せ始めていた。

 そして持ち球は緩急の二択だけと、狙い球が絞られやすい投手を脱却しようと新球に挑戦。高校入学後最初に覚えた変化球こそが現在のウイニングショットでもあるSFF。フォークより浅く握り、滑らせるように投げるという。打者の手元近くまで落ちず、ストレートと見分けのつかないこの球種を修得するまでには時間がかかり、自信を持てるようになったのは2年夏だった。

「それまではワンバウンドになったりしていたんですけど、夏に安定してストライクが取れるようになって、カウント球にも決め球にも使えるようになりました」

 昨夏明石商業は育英報徳学園神戸国際大附と優勝候補を次々と破り決勝進出。惜しくも甲子園出場は逃したものの、2010年から5年連続準々決勝敗退だったチームの歴史に新たな1ページを刻んだ。

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[page_break:夏を糧に秋に好結果を残す]

夏を糧に秋に好結果を残す

吉高 壯投手(市立明石商業高等学校)

 ただ吉高はの結果に全く満足していない。

「悔やんでも悔やみ切れない。保護者やOBの方が期待してくれたのに、悔しい思いの方が強いです」
いい球を投げるが1本打たれるとすぐ2本目を許し、四球や味方の失策の後も簡単に打たれてピンチを広げてしまう。それが吉高の悪癖であった。

 
昨夏も全試合で完璧なピッチングを披露したわけではないが、「連打されたけど、あそこまで勝ち上がったのが自信になっている。先輩達が打って逆転してくれた。1戦1戦、日に日に成長してるのが見えた夏でした」と狭間 善徳監督が話すように激戦区・兵庫のトーナメント表を1番高いところまで登ったことが大きな経験になっている。
そして昨秋、夏に続いて
決勝まで勝ち進むと吉高は報徳学園を6安打完封、2対0で下し初優勝を飾った。

 は「連投が効かなかった」と振り返っていた吉高だが昨秋準決勝
決勝を連続完封。
最初はカーブとストレートしか投げられなかったが、現在はカーブとSFF以外にもスライダー、チェンジアップ、縦のスライダー、シュートを操り、ストレートのMAXはすでに140キロ超え。

 投手を任せたとき、球速135キロ前後のまとまりのある投手、それなりに試合を作れる投手になるかな、という監督、コーチ陣の予想だったが、それを大きく超える存在となった。
また、選抜では負担軽減のため打順は6番となることが濃厚だが、クリーンアップも打てる打力の持ち主。
昨秋の近畿大会準決勝大阪桐蔭戦では初回の失点を自ら取り返さんとセンターオーバーの2点タイムリースリーベースを放っている。50メートル走は6秒台前半と足も速い。

 明商(めいしょう)のエースは投げるだけ、ではないのだ。

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[page_break:初の甲子園で投げ込む第1球にチームの命運が懸かっている]

初の甲子園で投げ込む第1球にチームの命運が懸かっている

狭間 善徳監督と吉高 壯投手(市立明石商業高等学校)

 狭間監督は秋の全試合のビデオとスコアブックを見直し、ミスや失点パターンが同じであると指摘した。
良い時はストレートが走ってSFFがいいところから落ちていたが、悪い時はストレートが走らずSFFもストライクからボールになるのではなく、ボールからボールに。そのため見極められカウントを悪くし、甘く入ったストレートを狙われていた。

 この冬、吉高に課した課題はストライクからストライクの変化球でカウントを作ること。変化球が外れた後、ストレート待ちしている打者に対してもう1球変化球を続けてストライクを取れるようになること。そしてSFFが速い変化球なら、同じく縦の変化でタイミングを外すチェンジアップにも磨きをかけようというものだ。

「下半身強化と球の質、精度を上げること」。冬を前にそう話していた吉高にさらに高いレベルを求めた。
このハードルを超えた時、彼の投球術はもうワンランク上がる。

 選抜1ヶ月前にして捕手の藤井は「変化球の精度が去年より上がってコントロールが良くなって、安定感が増しました」とすでに冬の成果を感じ取っている。

 数々の好投手を育成した狭間監督の考える好投手の条件は「150キロ投げるけどたまに打たれて負けるより、ランナーを出しても連打されない辛抱出来るピッチャーかな」だった。だからこそ選抜で吉高に期待するピッチングは「連打されないピッチング。そういうピッチングをしてくれたら勝てるかな。悪い時は連打される。切り替えて辛抱してくれれば。初球にストライクを取ってほしい。そうすれば幅広いピッチングが出来るのがいいところ」

 吉高自身も初球の入りの重要さはもちろん承知しており、しかも調子のバロメーターはその日投じる第1球だという。
「プルペンで悪いと思っても1球目良かったら調子上がるんです。マウンドに立って1球目が一番緊張します」

 秋季近畿大会で敗れた大阪桐蔭(試合レポート)は、初回に大量失点を喫したものの2回以降は無失点。強力打線と言えどもリズムを掴んだ彼を攻略するのは容易では無い。

「ここまで来れたのも保護者やOBの方のおかげ。感謝の気持ちを持ってマウンドに立ちたい。粘り強いピッチングが持ち味なので、最後まで諦めず味方を信じて投げたいです」

 初の甲子園で投げ込む第1球、その出来がチームの命運を握っていると言っても過言では無い。

(取材・文/小中 翔太


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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