Interview

流通経済大学 生田目 翼選手【前編】「投手としての姿勢をもう一度見直した」

2016.01.28

 最速155キロを計測し、ドラフト候補として注目される生田目 翼投手(なばため つばさ・流通経済大)。流通経済大が所属する東京新大学リーグには、2016年のドラフトの目玉として注目される田中 正義創価大)がいる。そんな田中に対抗心を燃やす生田目投手の高校時代を振り返りつつ、流通経済大に入学し、成長をもたらした出会いを振り返る。

高校、大学も最初は野手をやるつもりだった

水戸工時代の生田目 翼選手

 大学に入るまではプロへ行く気持ちもなく、そして投手として強いこだわりもあるわけではなかった。むしろ打撃の方が好きで、昨秋、肘の故障で関東地区大学野球選手権大会で登板できなかった生田目は、野手として2試合出場した。その姿について、率いる中道 守監督は、「ずっとバットを握っていなかったので、ウキウキしながらバットを振っていましたよ」と語る。

 そんな生田目を、常陸大宮市立第二中学時代から振り返ると、当時から打撃が好きだったという。この時の生田目は投手、捕手、遊撃手を兼任する立場で、打順も3番だった。
そして中学卒業後は水戸工へ進学。当初のポジションは遊撃手だった。遊撃手が好きな理由は、生田目の兄である駿さんが遊撃手だった影響がある。だが生田目はその後、投手の道へと進む。それは入学当時、監督が新入生全員に投球練習をさせたことからはじまる。

「そこで投手になる選手を決めていくのですが、僕はいきなり129キロを出して、その時はまだ投手ではなかったのですが、また一か月後に投球練習をしたら、134キロも出たんです。そこで監督から投手をやってくれ!と言われて、投手をやることになりました」

 こうして投手を始めた生田目。「まずは140キロを目指そうと思ってやってきました」と、走ることやトレーニングを重ねた。速いボールを投げるために、フォームもテイクバックも大きくダイナミックなものになり、一冬明けた2年春の最初の練習試合では140キロを計測したが、「140キロを出してから、スピードについてはいいかなと思っていました」と、スピードではなく、チームが勝つことにこだわって投げてきた。打者としても主軸を打ち、2年秋はベスト8、3年夏もベスト8に進出。投手としては145キロを計測する速球投手へと成長し、また打者としても打力を買われ遊撃手を兼任するなど、投打ともに県内を代表する選手として注目された。

 そして高校野球が終わると、多くの大学からの誘いを受けた。水戸工は卒業後に就職する生徒が多く、生田目も野球を続けず就職するつもりだった。だが兄の駿さんからの一言で硬式野球を継続することを決意する。
「兄からまだ4年間もできるチャンスがあるなら、野球やり切ってみろと。その言葉から僕は大学野球をやる決意をしました」

 進学先に流通経済大を選んだのは二刀流としてプレーしたかったから。数多いオファーの中で二刀流として可能性を示したのが流通経済大だった。

 入学から投手の練習と打者の練習を同時に行ったが思うようにいかない日々が続く。
「高校の時の延長でやっていましたけど、それが全く通用しないということが分かりました。打者としても自信は全くないわけではありませんが、自分よりもミートが良く、飛ばす打者が多くいました。それであれば投手で生きようと思いました」
 投手で生きることを決意した。

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投手としての姿勢、実力をすべて見直した

生田目 翼選手(流通経済大学)

 自ら投手として生きることを決意した生田目だが、これは投手、野手も同時にやっていいよと勧めた中道 守監督からすれば実はしめたものだった。

「高校の時は、投手だけではなく、クリーンナップも打って、さらにショートもやっていて、投手としての位置づけが彼の中で薄かったと思います。投手専任の選手なら、投手として能力を伸ばすことだけに集中すればいい。高校は兼任でもなんとかなりますが、大学ではそれは難しい。
投手、野手のどちらに将来性があったかと思えば、145キロを投げられた投手としてです。あれだけ速いボールを投げられるのだから、投手としての技術をしっかりまとめていければ、面白いと考えていました」

 周りは投手が良いと思っても勧めても、本人がその気にならなければ意味がない。投手として生きることを決意させるまでの流れが実に上手かったといえるだろう。

 このような経緯があり、本格的に投手に専念した生田目だが、いろいろなものが足りないと気づかされる。
「練習量、投球術、制球力、変化球の精度、姿勢ですね。一番指摘を受けたのは姿勢面です。僕は投球がうまくいかないと表情に出ることが多くありました。高校の時は最悪で、もろに出していました。先輩やコーチの方からそれはいけないよと指摘を受けまして。大学に入ってから冷静に自分を振り返るようになってきて、それじゃいけないよな、恥ずかしいよなと考えるようになりました」

 投球、打撃でうまくいかない時は一人でイライラしていたと振り返る生田目。大学に入って、周りにどう見られているのかを感じるようになり、マウンドでも表情を出さないようセルフコントロールすることが必要と考えた。

 そして生田目は、自身を大きく成長させる投手コーチに出会う。まずは1年の時にコーチだった高橋 直樹氏。プロ通算169勝と偉大な実績を残した高橋氏から学んだことは何だろうか。
「インコースの使い方を教えてもらいましたね。三振をとるのもいいけど、投球数を多くせずに打ち取る投球を教えていただきました。ツーシームを投げるならば、右打者の懐へ投げて打たせて取る。そしてスライダーを左のインコースに投げると良いところに決まれば空振りが取れるということも教えていただき、それを実践できるようにしていきました」

 高橋氏からそれまで学んでこなかった投球のイロハを教えてもらった。少しずつレベルアップしてきた生田目は2年春から先発として活躍し、春は4勝、防御率2.59と好成績を残す。しかし抑えたという実感はまだなく、「野手の方にしっかりと守ってもらい、しっかりと打ってもらったから、このような数字が残せたと思います」と振り返る。春より内容が良かった振り返る秋季リーグでは10試合に登板し、3勝、防御率1.88。さらに10月18日の共栄大戦では9者連続三振を達成するなど、徐々に頭角を現していった。しかし、3勝という数字には満足はしてなかった。

「10試合登板しながら、3勝しかできない。そこは物足りないと感じましたね。エースとして勝つにはどうすればいいのかと考えて、もう一度、トレーニングや、投球の完成度を高めることを努力していきました」

 オフになり、もう一度自分を追い込んで、ウエイトトレーニング、走り込みを重ね、投球に磨きをかけてきた。そして昨春2月から赴任した玉田 淳コーチとの出会いが生田目を大きく変えることになる。

 前編では生田目選手に高校時代から大学2年までを振り返っていただいた。後編では玉田コーチと出会って何が変わったのか、そして昨年の大学選手権を振り返るとともに今年にかける決意を語っていただいた。

(取材・写真:河嶋 宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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