Interview

九州産業大学付属九州産業高校 梅野 雄吾投手「内野手から最速151キロ右腕へ変貌を遂げた軌跡」

2016.01.05

 2016年度の高校生は非常に才能あふれる投手が多いが、その中でも最も速いストレートといわれるのが九産大九産梅野 雄吾だ。2年秋までの最速は151キロと藤平尚真横浜・2016年インタビュー【前編】 【後編】)に並ぶスピードである。そんな梅野について平川 剛監督は「彼は鼻っ柱の強い野球小僧で、意識も高い選手ですね」と評する。

 監督室に登場した梅野の姿を見て、平川監督の言葉がすぐに納得できた。顔立ちから、一目で強気な性格をしていそうな雰囲気がプンプンと伝わってくる。しかし、じっくり話を聞くと意識も高く、誰にも負けたくないという気持ちが伝わってきた。
このキャラクターが全国の舞台に出てきたら、話題になるかもしれない。今回はその梅野のストーリーを紐解いていく。

わずか1年で143キロに到達

梅野 雄吾投手(九州産業大学付属九州産業高校)

 梅野は中学時代まで内野手だった。入学前の憧れは本多 雄一選手(福岡ソフトバンク2014年インタビュー)のような内野手を目指していたようだ。中学時代(佐賀フィールドナイン)のプレーを見ていた平川監督が言う。

「あの時、梅野が在籍していたチームのエースを目当てに見ていたのですが、その時、その監督さんから薦めていただいたのが、梅野でした。確かに守備を見ていても、機敏な動きをしていますし、右打ちも上手い。野球センスは抜群で、これは内野手として楽しみだと思いました」

 その梅野は入学前、平川監督に「投手をやったことはあるか?」と聞かれたことがあった。そこで梅野は「少年野球の時に少しだけやったことがあります」と答えたという。平川監督は、梅野が中3で見たときよりも身体が少しずつ大きくなっているのを感じており、当初は梅野を内野手として考えていたが、この代は投手があまりいなかったということもあり「じゃあ投手をやってみたらどうだ」と勧めた。これが投手・梅野 雄吾のスタートだった。

 入学時の梅野は、まだ165センチ64キロしかなかった。しかしこの時期は成長期だったのか、身長もみるみる伸びて、身長170センチ台になり、さらに寮に入った梅野はしっかりと食事をとったことで、より大きくなっていた。

 デビューは、1年秋のローカル大会。まだ125キロぐらいだったが、コントロールには自信があった。しかしこのままのスピードではダメだということで、1年冬は懸命にポール間走、ウエイトトレーニングではスクワット、さらにどんぶり飯も1日3杯~4杯をとることを意識。そのサイクルを繰り返して冬を過ごした。

 さらにキャッチボールでも指先にしっかりと力が伝わったリリースを意識。鍛えた体をフルに生かせるように技術も磨いてきた。そして一冬明けて春には143キロまでレベルアップ。この急成長には平川監督も驚いた。
「驚きでしたね。3年生の投手があまりいなかったというのもあり、梅野がエースになっていましたね」

 そして梅野は夏で2キロ更新の145キロを計測し、1年で20キロのスピードアップに成功した。梅野は夏も妥協することなくトレーニングに取り組み、174センチ72キロにまでサイズアップ。秋はさらにレベルアップを果たし、県大会準々決勝希望が丘戦で最速148キロを計測。そして迎えた準決勝では、プロ注目の最速146キロ右腕・濱地真澄擁する福岡大大濠と対戦した。

「濱地には絶対に負けたくないと思いましたね」と意気込んで臨んだ一戦。1回表に1点を先制した後、梅野は調子を上げていき、3番に座った濱地に対しギアを上げ、最速149キロを計測した。さらにキレのある変化球をコントロール良く投げ分け、ノーヒットノーランを達成し、九州大会出場を決めたのであった。

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[page_break:最速151キロ計測も、追求するのはエースとして勝てる投手]

 その投球に平川監督も「まるでプロの投手を見ているかのような投球でした」と絶賛。敗れた福岡大大濠八木 啓伸監督も、「準決勝前の梅野君は結構ボールが荒れていたのですが、この試合に限っては全く制球に乱れがありませんでした」と脱帽した様子だった。そしてチームメイトで主将の柴田 大雅もそんな梅野を絶賛。「良い時の梅野は身長以上に大きく見える。あの試合ではいつもより大きく見えました」

 取材日に梅野の投球練習を見ることができたが、174センチ以上に大きく見えた。それは本人にとって大きな武器といえるだろう。梅野は続く決勝戦小倉戦でも快投し、県大会優勝を果たした。

最速151キロ計測も、追求するのはエースとして勝てる投手

梅野 雄吾投手(九州産業大学付属九州産業高校)

 迎えた九州大会初戦の相手は九州学院。強打者・村上 宗隆など打線がウリのチームに対し、梅野は粘投を見せた。2失点完投勝利を収め、続く準々決勝では鹿児島実と対戦。しかし鹿児島実に打ち込まれコールド負けを喫した。

「力の差を感じました」と振り返る梅野。全国レベルの対応力を誇る鹿児島実打線と対戦して学んだことは何だろうか。
「僕は『1、2の3』のテンポで投げていて鹿児島実打線も『1、2の3』で合わせていて、僕の投球の間合いが一緒だったんです。だからそのタイミングを外す投球ができればと思っています」

 相手打者のタイミングを外して投げる重要性を実感したという。ただこの試合、梅野にとって1つ収穫があった。この試合を見ていたNPBスカウトのガンで最速151キロを計測し、ついに「150キロ」の大台に達したのであった。

 九州大会後の梅野は力で押すのではなく、技の部分を追求をしている。それが現れているのはフォームに対する意識の変化だ。上半身の動きが強かったが、今では下半身主導のフォームで、ボールを前で離すことを意識している。取材日の投球練習でも体全体を使ったダイナミックなフォームから、実に素晴らしい回転をしたストレートを投げ込んでいた。

 本人は最速155キロを目指しているというが、それ以外にも求めるのは140キロ前半でも空振りが奪えるストレート。それはU-18ワールドカップで最優秀防御率賞を獲得した上野翔太郎中京大中京関連コラム)が影響したという。
「136キロぐらいなのに次々と空振りを奪っていて、凄いなと思いました。あんなストレートを投げられたら理想だなと思いました」

 そしていずれは大瀬良大地投手(広島東洋カープ2013年インタビュー)のように直球で押せる投手になることを目指している。中学時代までは内野手のスペシャリストともいえる本多選手を憧れとしていた梅野が、わずか2年で目標とする選手像が若き剛腕投手へと変わっていくのだから、高校生の成長というのは素晴らしいものがあるだろう。

そして、ストレートを生かすためにも変化球を磨くことにも力を入れており、現在の球種はスライダー、カットボール、カーブ、チェンジアップの4種類だが、フォークの習得を目指しているという。

 1977年以来の夏の甲子園出場へ、勝ちたい思いは誰よりも強い。だからこそこの冬は大事になる。
「僕にとって野球人生をかけた一番大事な冬だと思っています」

 今年はエースとして連戦、連投ができる投手へ、また連投になってから調子が上がる投手を目指している。そのために、この冬は今まで以上に自分を追い込んで鍛えている。2016年度の意気込みを伺ったところ、
「僕を誘っていただいた監督さんを甲子園に連れていきたいと思いで、ここに入学したので。そのためには自分の世代の投手では誰にも負けない投手になることですね」

こう言いきった梅野。これほど他人に負けたくない気持ちを持った選手はなかなかいない。チームを引っ張っていく強い意志を持っていて、そんな発言ができる実力も備わっている。

 2016年世代の主役となるべく、自分が目指す投手像を実現させ、1977年夏以来となる甲子園出場を成し遂げる。


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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