Interview

北海道日本ハムファイターズ 大谷 翔平投手 vol.3「超一流の習慣を支えるもの」

2015.12.20

 第2回ではボールを合わせる作業や身だしなみについて伺いました。3回目は食事や睡眠のこだわり、最後に目標に向かって真剣になるための秘訣を伺いました。

【これまでのインタビューは以下から】
■第1回:目標に向かって真剣に
■第2回:ボールを自分に合わせる

食:効果を実感すると楽しみが生じる

大谷 翔平投手(北海道日本ハムファイターズ)

 次に「食」=アスリートの食事管理、についてである。「食はトレーニング」という意識は高校生時から持っていたというが、意外だったのは193センチ、90キロの大柄な体格の持ち主でありながら少食だということだ。
「甘いものが好きなので食べる時は食べます。今は食べた後にトータル面で調整しますが。でも、できるなら食べたくないですね。普段の食事は、コーンフレークとかでいいです(笑)」

「階級別みたいでした」と笑うように、花巻東では、体重別で選手が何を食べるか決まっていたという。おかずも決まっていて、とにかく白米をおかわりしてかきこむ。

「僕は目一杯食べて目一杯動けみたいな教えでした。幼いころから少食で、体もすごく細かったからです。でもトレーニングをして食べて体が大きくなってくると、自分の体を作ることに対して楽しみが生まれる。すると食事に関しても積極的に取り組めるようになりました。トレーニングと食事の組み合わせで成果が変わってくるのが面白いですし、技術に比べてフィジカルは取り組んだ成果、効果が目にも見えやすく実感しやすい。ですから楽しみは得やすいはずです」

 体ができる以前は、食べても食べなくても体重に変化が生じなかった。だから「できるなら食べたくないと思っていましたね、普通は逆かもしれませんが」と振り返る。それが今では「食べなければ減るし、食べれば増える。単純なことになってきているのでコントロールしやすい」という。その理由は徐々に体が作られてきて、トレーニングなどの取り組みが奏功したからだ。ちなみに、プロテインは高校時代から摂取してきた。

「チーム単位で取り組んでいた食事とは違い、個人的に飲んでいました。監督さんやトレーナさんとトレーニングをしていく過程で、プロテインを摂らないとせっかく自分を追い込んでも効果が減るかもしれないという旨のことを言われたので。それ以来今もずっと飲み続けています。プロになってからはザバスさんと契約したので、サプリメントも飲むようになりました。そういう取り組みも、体重をコントロールしやすい体になった一つの要因かもしれません」

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[page_break:住:もはや当たり前になっている遠征時の習慣]

住:もはや当たり前になっている遠征時の習慣

大谷 翔平投手(北海道日本ハムファイターズ)

 最後に「住」。ここでは本人も「大好き」と公言している「寝ること」にクローズアップして話を聞いていく。
「高校生の時はよく寝ていました。ケガをしていた時期もあったというのもありますが、“寝なければいけない”ということは言われていて。おそらく1日8時間以上は寝ていたかと。就寝時間は早かったですけど、そのぶん当時は起床も早かったですから」

 いつでもどこでも寝られる、というのは特技でもある。ちなみに、高校時代はじゅうぶんに睡眠時間を確保していても「眠い時は多かった」という。例えば授業中。
「できることならしたくはなかったですけど…(居眠りすることは)多々あったかな(笑)」
というのはご愛敬だ。

 現在は、そんなに多く睡眠時間を確保することもないのだとか。
「だんだん、寝るのがもったいなくなってきまして(笑)。最近であれば、試合日は別としてコンディショニングなど関係ないオフの時などは、そんなに睡眠に時間を割かなくなりました」

 人によっては同じ枕でないと眠れないこともある。しかし大谷選手には関係なし。そもそも枕を使うことがないという。さらに、プロ以前であれば布団の上でなくても――例えば畳の上――眠ることができたという。

 何かこだわりはないのか。その時、以前松井裕樹(東北楽天ゴールデンイーグルス)投手にインタビューした時、「遠征時に専用マットを持ち歩いている」という話を思い出した。その話を振ってみると――

「それは僕も持っています。持っている人は多いですね。遠征時に泊まるホテルによってベッドのサイズや布団の柔らかさが全然違うので、なるべく統一したいと考えている人は多いです。僕もできることなら同じ状況で眠れるに越したことはないと考えているので使っています。やはりというか、当然体にかかる負担は少なくなっていると感じます」

 筋肉は超回復を経て成長する。つまり休養はコンディショニングだけでなく、トレーニングの大事な一環であることは広く知られているが、きちんと理解し実践できている人は多くはない。それが20歳代前半の若者が実践できている。しかもごく当たり前のこととして――。

「マットはプロ2年目になってから使いだして。年間通して大きなケガをしたこともないですし、使わなかったことで何かひずみが生じるかはわからないですけど、少なくともここまで順調に来ている要因のひとつではあるかなと思います」

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[page_break:目標に向かって真剣になるということ]

目標に向かって真剣になるということ


大谷 翔平投手(北海道日本ハムファイターズ)

「僕、映画などを見て涙を流したことなどがないので(笑)、最近涙を流した記憶というと…ちょっと思い出せないくらいです。野球では泣きますし、怒りますし、イライラもしますが、私生活は、寮生でもあるのでそんな感情が大きく揺さぶられることも少ないのかもしれません」

 いついかなる時も平常心でいられる、いようと心がけて実行できるのは、生まれつきの性格による部分もあるだろう。それでも、見られている立場を認識し、適切な対応、行動を続けられるのはプロフェッショナルに徹しているからこそだ。

 ここまで紹介した衣食住に関しても、ある期間の範囲が決まっているのであればできる人もいよう。しかし、これがずっととなると話が変わってくる。たまにはいつもと違ったことをしたい、と思うであろうし、感情を爆発させたい時もある。そういった衝動のようなものが人に備わっていることは、言わずもがなだ。しかし大谷選手が、たった一度それをしてしまえば、たいへんな話題になってしまう。それを高校時代から一度も表出することなく、ずっと続けられるのは、ひとえに「目標」に向かって邁進しているからだろう。

 同時進行で物事を進めたいと考えることも、正しい形をなにより大事にすることも、身だしなみに気を遣うことも、苦手な食事に取り組むことも、就寝時のケアも――すべては自分の立てた目標を達成してさらにその先にへ進むために。大谷選手が言う「いかに目標に向かって真剣にできるか」ということは、つまりは、こういうことなのだ。

(インタビュー・文/伊藤 亮


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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