Interview

北海道日本ハムファイターズ 大谷 翔平投手 vol.2「ボールを自分に合わせる」

2015.12.20

 第1回では大谷翔平投手が電話嫌いな理由や目標設定の仕方などを伺いましたが、それは大谷選手ならではの独特なものでした。第2回は速球の投げ方について語っていただきました。その内容はとても参考になるものでした。

大谷 翔平投手インタビュー【vol.1】はこちらから!

ボールに合わせる作業は応用でしかない

大谷 翔平投手(北海道日本ハムファイターズ)

 この取材前、練習を拝見させてもらった際そのキャッチボールの丁寧さが印象深かった。一球一球、時間をかけて投げ方を確認するようにボールを放る。ここにヒントがある、と個人的に感じていたが――実際は違った。

「僕はフォームチェックや素振りに重点を置いているので、ボールを使う作業に関して、大事にはしていますけど最重点ではありません。正しい投げ方をしていれば、正しいところにいくと考えていますので」

 ここからは投手だけでなく、野手の方も参考にしてもらいたい。

「バッティング練習などで球を打つと、来る球によってスイングが違ってきます。つまり、球にとらわれすぎてスイング自体に集中できない。さらに、いい打球が飛べばそれがいいスイングだとか、逆に不本意な打球だから打ち方が正しくないとか、そう判断しがちですけど、自分の中では違って。打球には、たまたまの部分もありますから。それより本当に“基本の基本”部分をしっかり見つめるには素振りの方がいいと考えています。打つにしろ投げるにしろ、ボールに合わせる作業は応用でしかないと思っているので」

 打者なら素振り、投手ならシャドーピッチングというのは誰でもやることだ。では、何千、何万という反復を経て実際に打席、マウンドに立った時、何人の人がその通りの形を反映できているだろうか。きっとどこかで、ボールに合わせていることが少なくないのではないだろうか。だから力みが生じたり、バランスが崩れたりする。当たり前だが、野球はボールを使う競技だ。だから、ボールに対応することが最も重要であることは間違いない。

 だが、大谷翔平選手の発想は真逆といっていい。最も効率的な自分の投げ方、打ち方を徹底的に追い求め、その形を打席、マウンドにそのまま当てはめる。「自分をボールに合わせる」というより、「ボールを自分に合わせる」イメージだ。そんなに簡単にできることではないが、いかなる時も安定したスイング、フォームを維持するには納得の考え方といえる。

「僕のようになる必要はないですけど、誰でもいいので“この人のようになりたい”“こういう選手になろう”という目標やお手本があるだけで全然違ってくると思います。高校球児のみなさんには、ただ漠然と練習している人が多い中で、意味のある練習をしてほしいなと。それには目標なりお手本があった方がいいのではないかと、個人的には思います」

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[page_break:「外見」は自分の内面が最も出る部分]

「外見」は自分の内面が最も出る部分

大谷 翔平投手(北海道日本ハムファイターズ)

 ここからはさらに大谷 翔平選手の“人となり”に迫っていきたい。というのも、プレーはもちろんのこと、選手としての立ち振る舞い、メディアの受け答えなど、たたずまいひとつとってもプロフェッショナルに徹しているように見えるからだ。すでに社会人として訓練を受けた後のような模範的な態度が、21歳の若者から…いや、もっといえば高校生時から感じられた。

 かといって無理をしているようにも見えない。練習中はチームメイトと軽口を交わすこともあれば、大笑いもする。いたって平常心、自然体、等身大なのだ。これだけ注目される身でありながら、セルフコントロールの術はいったいどうやって身に着けてきたものなのか。

「今もできているとは思ってはいませんけど…。ただ、僕は幼いころからプロ野球選手に憧れていて。そういった選手の存在って、ある意味、総理大臣といった方より影響力が強かったりするじゃないですか(笑)。憧れる側からすれば、それこそ神様みたいな存在になってしまいます。すると、その憧れの人の行動や言動というのが、時として正しくなかったとしても正しいように見えたり聞こえてしまったりする。影響力を持つ立場の人間は、そのことに細心の注意を払って行動や発言をしなければいけないと考えています」

 自然体のようでいて、実は「見られる立場」であることを理解し、責任を感じている。言葉からはそう受け取れる。
「責任を感じて意識しているかというと…。人間なら誰でもイライラする時はあります。それを表に出すと、周囲も気にしますし、不快な思いをさせてしまうこともあるかもしれません。そうならないように感情を抑える人の方が多いと思いますし、誰でもする配慮をしているだけです」

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[page_break:衣:適切な場所に適切な恰好]

衣:適切な場所に適切な恰好


大谷 翔平投手(北海道日本ハムファイターズ)

 本人はあっけらかんと言うが、感情の起伏やバイオリズムがある以上、平常心の自分を保つことは並大抵のことではない。それができるのはやはり、大谷選手のひとつの才能であり、プロフェッショナリズムといえるだろう。その証拠として、ハイパフォーマンスを維持するために普段から努めていることを、「衣・食・住」というジャンルに分けて説明する。

 まずは「衣」=ふだんの身だしなみについて。
「身だしなみには気を付けています。選手は外見じゃないという考えもありますが、一番簡単に自分の性格、内面、好みが出てしまい、しかも一目でそれがわかってしまうところなので。髪型ひとつとっても、例えばひげにしても気を付けなければならないところです」

 例えばユニフォームを着るときは、ボタンは全部とめるようにすることを心がける。大谷選手には清潔感あふれるイメージがあるが、それは本人の意図するところでもあるのだ。
「僕は男性も女性も、ちゃらちゃらしたタイプの人はあまり好みではないので、そう見えないようにしたいな、とは思っています。別に自分の部屋に一人でいる時はどんな格好をしてもいいと思いますけど、適切な場所に適切な恰好で臨むことは大事だと」

 インタビューの際に着ていたのはジャージ。インタビュー画像を振り返ればデサント社製のジャージを着ていることが多い。本人のお気に入りだそうだ。
「僕は高校の頃からずっとウェアはデサントさん、用具はアシックスさんにお世話になってきました。ウェアは着心地もすごくいいですし、総合的に素晴らしいと思っていて。実は他のメーカーさんのものはほとんど着たことがないぐらいです」

 大谷が気に入るデサントは、同じチームの中島 卓也選手など多くのプロ野球選手をサポートしている。大谷の言葉にもあったように、着心地の良いウェアもこだわって選んでいるが、たとえばサッカーの世界的スター選手であるクリスティアーノ・ロナウドは、都会的な若者のシンボルとしてふさわしい髪型を考え服装も選んでいる。このセルフ・プロモーションによって、世界中のファンの中に象徴としてのイメージが形作られていく。さわやかなイメージがある大谷選手も、プロアスリートに必要なセルフ・プロモーションの術を身に着けているといえる。

 パフォーマンスだけではなく、清潔感のある立ち居振る舞いで、一層、超一流に見える大谷翔平選手。Vol.3(1月3日公開)は、プロ野球選手にとって欠かせない『食事、睡眠』などのコンディショニングに関するこだわりを伺いました。

(インタビュー・文/伊藤 亮


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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