Interview

立教大学 飯迫 恵士選手 「常に首位打者を目指せる選手になりたい」

2015.12.17

 2014年、夏では初の甲子園出場を掴んだ神戸国際大附。そのチームの中心選手だった飯迫 恵士(けいと)。
主に5番を打ち、甲子園では適時三塁打を放つ活躍を見せた選手だ。
今では東京六大学リーグの立教大でプレーしている飯迫選手に、高校時代の振り返り、甲子園の思い出を語ってもらった。

打撃センスを発揮し、不動の一塁手に

飯迫 恵士選手(立教大学)

 神戸市西区出身の飯迫にとって、甲子園は身近なところだった。
岩岡中学校では軟式。2学年上には嶌 直広智辯和歌山-法政大)がおり、嶌の姿を見るために甲子園に行ったこともあった。それをただの憧れにせず、自分も選手として甲子園のフィールドに立つために、高校の進学先として選んだのは、神戸国際大附だった。

「甲子園も狙える学校ですし、自宅から近くて、自由な雰囲気でやっていたところが気に入りました」

 基礎体力を付けさせるために1年生にボールを握らせない学校もある中、神戸国際大附は1年生からでもボールを握って練習することができる。
もちろん基礎体力を付けるのは大事。1年生へ向けてのランメニューがあり、飯迫も入学時80キロと太めだったが、これにより一気に68キロまで痩せた。
ただ一プレーヤーとして、ボールを握れない期間が長いのはつまらないことだ。最初からボールを扱えるのは、飯迫にとって気持ちの良いものだった。

 入学時は投手を務めていた飯迫。しかし同期のレベルが高く、追いつこうと努力をしていたが、ケガをしてしまった。
それでもたびたび試合の中で投げていたが、ある時、コーチから「お前、野手に向いている」と言われてから野手に転向。そしてたまたま入ったノックで、一塁の守備が上手かったことから、本格的に一塁手へ転向した。1年の夏のことであった。

 またこの時、かなりやせたこともあって、青木 尚龍監督のススメで、寮に入ることになった。
「お前、痩せているな、寮に入って体大きくしようや、と監督に言われて寮に入ることになりました。寮生活ですか?そりゃつらかったですよ(笑)」

 神戸国際大附は遠方出身者やレギュラークラスの生徒が寮に入る。寮生と自宅通いの生徒では、自主練習の時間の長さだけではなく、食事量も大きく違っていた。飯迫自身、最も苦にしていたのは食事であった。なんと朝からごはんを1キロ。そして監督がいる時は、1.5キロにもなった。おかずは最低限のおかずのみ。それだけでは物足りないので、ふりかけをたくさん買って、食べていく。

「量を食べろといいますけど、この量はちょっと(笑)。一度、大阪から来ている選手の入れ替わりで、寮を出たことがありますけど、また寮に入ることになって。本当に寮生活はきつかったですね」
と振り返る飯迫。

 ハードな練習、徹底した食事量。こうして飯迫は実力をつけていった。

絶対に行きたい気持ちで甲子園へ

 公式戦に出場するようになったのは1年秋から。不動のレギュラーの座を掴んでいった。
この頃、神戸国際大附はかなり期待されていたが、なかなか甲子園に届かず、1年時、2年時ともあと一歩のところで敗れてきた。

 そして迎えた3年夏は主に5番ファーストとして出場。初戦の加古川東戦で4打数2安打と好発進し、チームはその後も快調に勝ち進んだが、飯迫自身はなかなか安打が出なかった。
そして迎えた決勝戦。相手は2013年秋季県大会準々決勝で対戦し、2対3で惜しくも敗れた三田松聖だった。

「秋敗れていて、負けられないと思っていました」
さらに家族も来ていた。
「スタンドには自分の親戚もいっぱい集まっていて、おぉ!と騒いでいるんですよね。気分が上がりましたね」

 この日は6打数3安打1打点の大活躍。チームも15安打を放ち、11得点の快勝。見事に甲子園初出場を決めたのであった。

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[page_break:三塁打を打った時の歓声は今でも忘れられない]

「本当に感無量でしたね」
と振り返る飯迫。甲子園に行けた要因は何だったのか。
「やっぱり『絶対に行きたい気持ち』だったと思います。それは僕だけではなく、全員が持っていたと思います。レフトの邨瀬 裕斗はそれまであまり試合に出ていなかった選手だったのですが、夏へ向けて本気を出して取り組んでレギュラーを獲りましたし、主将の西 俊洋が一時期、一塁を守っていて、調子がぐっと良くなって、レギュラーの座を脅かされそうになりました」

 多くの選手が甲子園に行きたい!という気持ちで臨んで一気にレベルアップを遂げ、そして飯迫もその選手たちに刺激を受け、実力を伸ばしてきたのであった。

三塁打を打った時の歓声は今でも忘れられない

神戸国際大附時代の飯迫 恵士選手

 甲子園期間中の生活も兵庫県代表ならではのものだった。
49代表校は必ずホテルに入らなければならないが、グラウンドはいつもの神戸国際大附グラウンドだった。

「ホテル暮らしはご飯もおいしかったですし、居心地は良かったですけど、さすがにホテルからグラウンドまで行くのは面倒かなと思いましたね(笑)。練習が終わったらまたホテルへ帰る(笑)」

 そして迎えた初戦聖光学院戦。甲子園のグラウンドに立った時の感想を聞くと、
「人の多さにびっくりしましたね。外野席にも人がいっぱいいて、気持ち悪いなと(笑)」

 この試合で、身体の奥底まで味わったその得も言われぬ感動を臨場感たっぷりに語ってくれた。

 立ち上がり、打線は聖光学院の先発・今泉 慶太のチェンジアップに苦しむ。3回裏に1点を先制され、その直後の4回表、二死二塁で飯迫が打席に立った。
「チェンジアップが来ることは分かっていたので」
3ボール2ストライクから6球目。高めのチェンジアップを捉え、左中間を破る三塁打を放った(記録は中3)。

「打球が飛んで、ボールがグラウンドに落ちた瞬間に一気に歓声がどわっと湧いてきました。そして塁上を走っているときも、すごい歓声が聞こえてきて、それが本当に気持ちよくて。そして三塁に滑り込んだ瞬間、一番歓声が沸きました。塁上で立ち上がったときの胸の高鳴りは忘れられません。ベンチにいる仲間たちがガッツポーズを何度もしている姿を見て、テンションも高くなっていきました。あぁ、やっぱり甲子園は違うなと」

 この飯迫の三塁打で同点に追いついた神戸国際大附だったが、その後勝ち越し点を許し、あと1本が出ず1対2で敗れた。甲子園を振り返って飯迫は

「一瞬の出来事でしたけど、楽しい甲子園でした」

 甲子園に出場してから1年以上経った今でも、自分が打った場面をこれほどリアルに振り返られる。それだけ飯迫にとって思い出深い甲子園だったのだろう。

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[page_break:常に首位打者を狙える選手へ]

常に首位打者を狙える選手へ

飯迫 恵士選手(立教大学)

 今年、東京六大学リーグの立教大へ進学した飯迫。環境は大きく変わった。

 高校ではこれまで寮、学校、グラウンドで完結してしまうような生活だったが、立教大では、キャンパスが都心の池袋にある。大学生になり、少しずつファッションも意識するようになったが、野球部は授業に行くときは制服と決まっているため、みんなが私服の時、制服だと野球部だけ浮いている気分になってしまう。
そんなとき、ほっとできるのは寮内だ。自主練習や寮内では自分が選んだウェアを着ることができる。

「その時はやっぱりかっこいいウェアを着たくなりますよね。今は冬なんで、着やすくて暖かく感じられるものを着用していますね。今、着ているのは本当に暖かいです」
と自分が着るウェアについて語った飯迫。

 東京六大学野球に飛び込んだ飯迫は、そのレベルの高さを実感した。
最初は打撃面の調子が悪く、なかなか結果が出なかったという。そこで飯迫は打撃フォームを改めた。
下半身の動きを安定させるために重心を低く、小さなステップで打つ方法に変更。この打撃フォーム変更は功を奏した。

 今秋、レギュラークラスのピッチャーが投げるシート打撃に入る機会があった。そこで、飯迫は快打を連発。その姿を見ていた首脳陣から「ベンチに入れ」といわれ秋季リーグからベンチ入りするようになった。
そして10月10日の法政大戦(試合レポート)で初出場。この試合で初打席に立ち、無安打に終わったが、凡打でも手応えある一打だった。

 その内容を評価されたのか、10月12日の法政大戦でスタメンデビューし、4打数1安打とまずまずの活躍を見せる。その後もスタメン出場が続き、10月25日の東京大戦でリーグ戦初本塁打を記録する。
飯迫自身驚きの本塁打だった。

飯迫 恵士選手(立教大学)

「上手いこと打てたと思ったら、入っていました。本塁打は練習でも打ったことが無くて、本当にびっくりでした。先輩たちもみんな驚いている様子でした」

 こうして1年秋のリーグ戦を終えて、14打数4安打、1本塁打1打点、打率.286の成績を収めた飯迫。
この数字を振り返って、
「思った以上に順調に来ていると思います。リーグ戦が終わっても良い調子が続いていますし、このままいけば」
とさらなる打撃力アップを誓っている。

 今の期間は素振りとウエイトトレーニングを中心にパワーを付けている。そうして目指すは不動のレギュラーだ。

 また飯迫自身、ファーストでレギュラーを取ることを考えている。
打撃のウエイトが高くなるファーストでレギュラーを取るのは容易なことではない。
普通ならば選択肢を広げるために外野手を守ることを考えるが、飯迫の場合は確固たる打撃力を付けながらも一塁でのレギュラーを取る。それは自分自身に対してプレッシャーをかけるためでもあった。

 その壁を乗り越え、目指す選手像は、毎年首位打者を狙えるアベレージヒッターになること。
1999年秋季リーグ以来、遠ざかっているリーグ優勝を果たすために、甲子園で見せた勝負強い一打を見せ続けていきたい。

(取材・文/河嶋 宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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