Interview

東北楽天ゴールデンイーグルス 則本 昂大投手 「東北、そして日本の大エースへの道程」

2015.12.14

 2015年で3年目のシーズンを終えた東北楽天ゴールデンイーグルス・則本 昂大投手。
新人から3年連続の開幕投手。3年連続二けた勝利。2013年度パ・リーグ新人王、2014年から2年連続のパ・リーグ最多奪三振。2014年からは侍ジャパントップチームの主戦。これまで積み上げた実績は、まさに東北、そして日本の大エースに相応しいものといっても過言ではない。では則本投手はいかにしてここまでの野球人生を歩んできたのか。その道程を紐解いていきたい。

「プロ野球選手の物真似」が取り組む姿勢の源流に

則本 昂大投手が高校時代に汗を流したグラウンド(県立八幡商業高等学校)

 滋賀県立八幡商業高等学校時代、則本 昂大を指導した池川 隼人監督は話す。関連コラム:恩師が語るヒーローの高校時代 則本昂大投手

「彼はうまくなるために研究を欠かさず、自分なりに練習の計画を組み立てられる選手で、何も言うことがなかった」。その姿勢の原点は本人曰く、多賀町立多賀小学校の時からだったという。
「僕はプロ野球選手の真似や、観察をするのが好きで、よく参考にしていました」

 パフォーマンスアップの姿勢は多賀中学時代。当時、中学3年時から通っていた地元の野球塾の代表・小寺 学氏がこんなことを教えてくれた。
「練習の合間に松坂 大輔(福岡ソフトバンクホークス)さんや、藤川 球児さん(阪神タイガース)をイメージしながら投げていました」

 八幡商入学後も、則本は変化球を特集した雑誌が出版されれば、すぐに購入。握りを試しながら磨きをかけていった。

 そして1年夏からベンチ入りし、2年春からエースとして登板。3年夏は滋賀大会ベスト4敗退に終わり甲子園のマウンドを踏むことはなかったが、それでも、研究熱心な姿勢は、のちのち花開くこととなる。

凄いストレート、宝刀スライダーを身に付けた大学時代

 さらなる球速アップへ。どうすれば凄い速球を投げられるのか。三重中京大の4年間はその答えを見つけ続けた4年間だった。
最も腕が振れて自分に合ったフォームとは?そこを追求し続けた結果、今のようなダイナミックな動きをするフォームに行き着く。そこに付随して高校時代にはなかなか取り組めなかった体力強化を積極的に採り入れる。

「高校時代は与えられたメニューを漠然とやっていたと思います。また通学時間も長かったですし、体を大きくするということについては、なかなかできませんでした。でも、大学に来て時間が持てるようになりましたし、トレーニングにもじっくりと取り組めました。また食事量も増えて体が大きくなっていきました」

 高校時代、冬しかやっていなかったウエイトトレーニングは、公式戦がない夏の時期にも取り組むようになった。加えて則本は、様々な方向から体力を上げる行動にもこだわる。
「自分自身、ウエイト以外で体を作りたかった思いはあったので、基本的に走り込んだり、食べたりをして、体を大きくしていました。そして公式戦がない時は、1週間に1回、2回はウエイトトレーニングをやっていました」

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[page_break:凄いストレート、宝刀スライダーを身に付けた大学時代 / パフォーマンスを支える相思相愛の用具]

 これにより、フォームもだんだんダイナミックなものに変わっていった。徐々に球速を伸ばしていき、大学2年で150キロに。第59回全日本大学野球選手権では今季、トリプルスリーを達成した柳田 悠岐(福岡ソフトバンクホークス2015年インタビュー)が4年生だった広島経済大とも初戦で激突した。

 試合は三重中京大が9回表に2点差を追いつくも、4番手・リリーフで登板した則本が延長10回サヨナラ負け。この時、彼が実感したのは「ストレートだけでは全国で通用しない」ということであった。
「あの大会が終わってから、同級生にスライダーの握り方を教わったり、投げるコツをアドバイスしてもらって、今では自分のモノになっています」

 則本投手のスライダーは、現在3種類。まさに彼の代名詞といっても過言ではないが、それは大学時代が原点だったのだ。

 こうして研鑽の日々を過ごした則本は最終学年、そして三重中京大にとっても最後の年となった2012年、4年春に覚醒する。
春のリーグ戦では最速154キロを叩き出し、第61回全日本大学野球選手権出場。大阪体育大戦ではチームは延長10回で力尽きるも、則本は大会記録となる20奪三振。この快投により、プロのスカウトから一気に評価を高めた則本は、同年ドラフトで東北楽天ゴールデンイーグルスから2位指名。プロへの世界を切り開いたのである。

パフォーマンスを支える相思相愛の用具

則本 昂大投手(東北楽天ゴールデンイーグルス)

 プロ入り1年目から15勝8敗という成績を挙げ、新人王を獲得。その後も、3年連続で二桁勝利。2年連続の200奪三振を達成。そして自慢のストレートも、ついに最速157キロまで達した則本 昂大。その思考もより広く、深くなってきている。
「より速い速球を投げるために腕を強く振る」。この考えは変わりないが、強く腕を振るための土台に現在の則本は目を向けている。

「どれだけ振れていても土台がしっかりしなければ意味がない。腕が振れても、ぶれがないように、上の力を支える土台が大事だと思います。それは投手にとっては一番大事だと思いますね」

 よって、速球、変化球を投げる上でもそれぞれ土台の部分から意味を見出して取り組む則本。2015年からグラブとスパイクはadidasを選んで使用しているが、用具選びにも、強いこだわりを持っている。

「adidasさんのグラブ、スパイク、アパレルは大学時代からどれもかっこいいと思っていて、いずれは使いたいと思っていました。僕がグラブを選ぶ際のポイントは、『握りやすさ』です。グラブをはめたときに柔らかすぎず、硬すぎないこと。自分がグラブを握ったとき、良いリアクションが出ると感じるものですね。その要望を伝えたところ、すぐにadidasさんは僕の希望に合ったグラブを作っていただきました」

 そして身体の動きを司るスパイクも足型をとった上、軽さとジャストフィットしたものを求めている。
「僕は軽いスパイクが好きなんですけど、今履いているスパイクは軽くて、耐久性があって、少ない歯でも地面を噛めるように設計されているので、良いですね。スパイクの裏も浅いけど、それでいてクッション性もあります。今は履いているのは耐久性がありますし、すごく良いスパイクだと思います」

 最高のグラブとスパイクを手にして、東北楽天ゴールデンイーグルスのエースとしてプロ3年目を戦い抜いた則本の防御率は、チームが厳しい戦いを強いられる中でもキャリアハイの「2.91」。用具からこだわる「土台」の安定性が投球の安定感を生み出した。

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[page_break:成長した自分を想像し、1日1日を楽しく]

成長した自分を想像し、1日1日を楽しく

則本 昂大投手(東北楽天ゴールデンイーグルス)

 則本は今年11月に開催された侍ジャパントップチームの一員として「第1回WBSCプレミア12」にも参加。大会は、準決勝で韓国に惜敗するも、3位決定戦での勝利を経て、日本野球の素晴らしさと日の丸の重みを改めて知ることになる。
「海外で野球をすることになったとき、どれだけ日本が整った環境、素晴らしい環境で野球ができているのかを改めて感じましたし、忘れないようにしなくてはならないと思いましたね。日本の野球は改めてレベルが高いと実感した反面、国際大会で頂点を取る難しさを実感しました」

 そんな今だからこそ。則本は自分の高校時代をさらにシビアに振り返る。
「僕が高校時代の自分を振り返って、今思うことは、もっとストイックに自分を追い込めばよかったなと思います。普段の練習で、休む時間が多かったと思います。その間に、チューブトレーニングをしたりとか、隙間時間で他にも取り組めたことがあったのでは?と、今は思いますね」

 常に自問自答。常に反省。いまや東北、日本を背負う右腕にしてもそうなのだ。球児に向けてのメッセージにも、そんな想いがふんだんに込められている。
「自分がどんな選手になりたいのか、方向性を定めること。この時期、つらいトレーニングばかりで目先の目標がないので、ただ漠然とやってしまいがちなんですけど、この2か月、3か月をしっかりとやって。どれだけ成長した自分が待っているのかと思うと、1日1日を有意義に、楽しく過ごせると思うので、それをイメージして取り組んで下さい」

 先日「4年連続の開幕投手が内定した」と伝えられるなど、来季も大黒柱として4年目のシーズンに臨む則本 昂大。東北楽天ゴールデンイーグルス3年ぶりのパ・リーグ優勝へ。そして2017年第4回WBCへの土台作りへ。豪腕は責任と使命感を持って右腕を振る。

(取材・文/河嶋 宗一


注目記事
・【12月特集】冬のトレーニングで生まれ変わる

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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