Interview

バトルスタディーズ第3巻発売記念!上重 聡さん(日本テレビ)×なきぼくろ先生【PL学園OB対談 第4回】

2015.10.22

「漫画家・なきぼくろ」と「アナウンサー・上重 聡」のPL学園OB対談。第4回は「1番と10番」「上重さんと松坂 大輔投手」など、なかなか聞けないライバルとの関係をみっちりお聞きしました。今後のバトルスタディーズの展開のヒントもあるかも!?

エースと二番手。「1番」と「10番」の関係


 

編集担当 たとえば「1番」と「10番」の関係ってどうなるんですか?ピッチャーってやっぱり「1番」取りたいじゃないですか。ユニフォーム渡されたあとの関係とか。

上重 そこに納得感がなかったりだとか、「なんでお前が1番なの?」っていう空気を作っちゃいけないと思うんですよ、1番をもらう人間っていうのは。だからそこはすごく意識していましたね。練習試合でも結果を残さなくてはいけないですし、練習でもランニングで自分が1番で走らなくてはいけないと思ってたので。そこはプライドを持ってやっていました。
しかも僕の時の「10番」は小学校からずっと一緒にやってきた奴なんです。そいつが先発する時に「俺いけるとこまでいくから、あとはお前が!」って言ってくれて。エースってやっぱり投げなくても、そういう存在でいなければならないと思っていますね。「アイツがいるから!」って。

編集担当 その話を16歳とかで、やりとりしていたんですね!それがすごいなって思います。1番を背負うことは辛くなかったですか?

上重 僕は逆に、その1番を背負えなかったというコンプレックスが小学校、中学校でありました。常に誰かに1番を譲っていた。だから10番の気持ちはすごくわかるんですよ。ずっと1番になりたかったけど、なれなかった。だから1番を付けた時は、背負っているプレッシャーが楽しいと言いますか。責任感があることに居心地の良さを感じるというか、そういったことはあるのかもしれないですね。

編集担当 さっきからお話を聞いていると、上重さんってすごくアナウンサーに向いている人だなって思いますね。

上重 本当ですか?

編集担当 演じる自分をすごく楽しめる人って、なかなかいないかなって思いますね。

上重 「アナウンサーをやっていて楽しいことって何ですか?」って聞かれると「生放送の緊張感です!」って答えるんです。そのドキドキ感ってピッチャーに似ているんですよね。どう組み立てていくか、そのための準備をどうしていくか。それを考えてからキャスターとしてカメラの前に出るのは、マウンドとすごく似ているんです。ここに上がったらやるしかないって。あとは自分の責任じゃないですか。声を枯らすことと、肘を壊すことが共通しているのであれば、その調整が悪かった訳であって。

編集担当 生放送って一発勝負ですもんね。

上重 はい、マウンドも一発勝負ですからね。立ち上がりが難しいんですよ、番組も。意外に一番最初の「おはようございます」が難しい。それって第1球目と似ているんですよ。その「おはようございます」がその番組の色というかスタートの感じを作っていくんです。

編集担当 上手くいかない時ってあるんですか?僕見ていて全然わからないですけど。

上重 はい。ありますし、あえて暗いニュースが多い時はちょっと声のトーンを低めにしていこうかなって、そういったことも考えてますね。エラーすることもあるじゃないですか。例えばVTRが上手く出なかったりだとか、それもそこでカバーし合うことが仕事ですし、ピッチャーに似ていますよね。

編集担当 じゃあ常に頭が相当回転していないといけないですよね。

上重 それが好きなのかもしれないですね。この場面どうしよう?っていう。マウンドもそうでしたからね。

 

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[page_break:PL学園流、練習試合のキャスティング]

PL学園流、練習試合のキャスティング

上重 聡アナウンサー(日本テレビ)

編集担当 アナウンサーって冷静に現場を回さないといけないじゃないですか。それってすごく大変だと思うんですが。

上重 時には感情的になってもいいと思うんです。嬉しいことがあったら「やったー!」って。実はそれが一番伝わりやすいのかもしれないですし。
マウンドでも、がっくりきた時に「膝から崩れ落ちる」って私もアナウンスで言ってたんですけど、本当になる。(打たれたシーンは)実際に自分でプレーしている時、投げる瞬間からスローモーションになりましたね。スローの映像と共に「危なーい!」、「わー!」みたいな。だから、ゴールがあってそこに吸い込まれたんじゃないかって思っていますね。

編集担当 あらかじめストーリーがあって?

上重 はい。だから怪物が勝つっていうストーリーがあったんだと思いますね。(僕らの代が)甲子園ベスト8っていうのも必然だった。

編集担当 確かに、怪物視点ではあの死闘があったから準決勝の逆転があって、そして決勝のノーヒットノーランがある。出来過ぎですよね。漫画が現実になっちゃった感じです。その怪物・松坂 大輔選手も今はケガがあったりと、少し厳しい状況ですよね。

上重 今35歳で過渡期というか、締めくくり方を考える時期に来ていると思うんですね。みんな結構苦労していますし。だからやっぱりプロの世界の人たちって厳しいですし、あとはみんなどういう価値観を持っているのかなと思いますね。スパッとやめる人もいるでしょうし、粘って最後までやり続ける人もいるでしょうし。その辺、我々はやっぱり見届けるという義務はあると思いますね。私はアナウンサーを仕事としているので、その心境も聞いていければと思います。

編集担当 確かに上重さんの世代は、現役の引き際にもなってきてるんですね。

上重 あっという間ですよね。仲間やライバルが引き際を迎えているんですから。ライバルということを考えると、(バトルスタディーズは)甲子園も出るからストーリー展開というか、キャラクターも難しいですよね。対戦校とかもやっぱりいい味を出してくれるわけじゃないですか。

編集担当 はい。今はチーム内でのライバルなんですけど、そこから外へ出ていかないといけない。上重さんが小学校、中学校と一緒にやってきて高校になってからライバルになったという選手はいるのですか?

上重 我々の時によく言われていたのは、ボーイズリーグのメンバーがほぼPL学園に入って、シニアのメンバーが横浜に入ったので「この代の決勝はPL学園横浜だね」って感じでしたね。

編集担当 ストーリーとしては、ここから決まっていたんですね。

上重 今思うとそうですね。あと私が好きなストーリーは地方の山奥にすごい奴がいる!みたいな(笑)。

編集担当 なんかそういう人いました?

上重 PL学園って、「地方の聞いたことない高校だけど、ピッチャーが凄いから対戦しておこう」みたいなことが多いんです。我々の時も、一つ上ですけど能見(篤史・阪神タイガース)さんと対戦したりだとか。そういったことも素敵なストーリーだなっていつも思いますね。
PL学園って練習試合とかも東京帝京とやったり横浜横浜とやったりっていうイメージだと思うんですけど、名門校と対戦したことはあまりなかったですね。

編集担当 それよりもすごい選手と戦うといいますか。仮想・大阪桐蔭というような感じにもなりますかね。

上重 はい、その方が良い練習になって免疫になるっていう考えでしたね。

 

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[page_break:ライバルを作れ!同級生ライバルは一生の宝になる]

ライバルを作れ!同級生ライバルは一生の宝になる

なきぼくろ先生

編集担当 ところで松坂さんと上重さん(の関係)って何なんでしょうね。恋愛みたいな(笑)。

上重 みんな言ってましたね、「お前気持ち悪いよ」って(笑)。何なんですかね、ファンですかね。ファンというか好きになってしまったというか。不思議な感覚なんですよね。
恋愛感情ではないんですけど、憧れもありますし、ライバルとして負けたくないっていうのもありますし、どっかで応援している部分もありますし。いつまでも、すごい人でいて欲しいんですよね。新聞で「松坂完封!」とか書いてあるのを見るだけで、どこか燃えてくる部分もあって。刺激を与えてくれる存在であったりだとか、特別ですね本当。

編集担当 そういうのって、人間関係であまりないですよね?

上重 ないですし、巡り合える人も少ないと思うんですよ。そういう意味ではラッキーですし、大学で苦労したりだとか完全試合が出来たのも多少なりとも松坂の存在があったからだと思いますね。
同級生って、なんか特別ですよね。一つ上、下とも違う。同級生というだけで特別なんですよね。

なきぼくろ 僕は漫画界では、まだ出会えていないですね。

上重 同じ年齢、同期。ここは意識すると思いますし、意識した方がいいと思いますね。

編集担当 それが自分にも返ってきますもんね。メッセージとしては「ライバルを作れ」ってことですね。

上重 はい、バトルスタディーズでもライバル関係っていうのはすごい面白いところだと思いますし、日本人は好きだと思うんですよね。圧倒的なライバルがいてそこに立ち向かっていくっていうのはわかりやすい構図ですよね。

編集担当 漫画の中だと、このDL学園のライバルっていうのが横浜横浜高校になっていくと思うんです。上重さんのお話は、今後の作品にも役立っていくと思いますね。

上重 技術的なところって入れたりするんですか?これまで自分が培ってきたものとか。

編集担当 やっぱり技術的なものは入れたいですよね、作品の中には。

なきぼくろ そこで弱みは、自分がそこまでスタープレーヤーではなかったというのがあるんです。だから自分ひとりの脳みそだけでは書けない部分も多いので…。

上重 でもね、プロ野球の実況やったり、監督とかコーチの話を聞いたりすると、スタープレーヤーよりも苦労している人の方が野球を考えてるし、よく知っていると思うんです。
だからいざ言葉で表現しようと思うと、スタープレーヤーの人ってうまく話せない。感覚でやっているから。でも苦労した人は、いろいろなトライの仕方を知っていて、そこに辿り着いているから表現した時にすごいわかりやすかったりするんだよね。だから逆に、なきぼくろが描いた方が技術論は伝わるかもしれない。

なきぼくろ 嬉しいです!!

編集担当 今後もこうやって上重さんたちに、お話を聞けたらありがたいですね。今日だいたい1時間半くらい(対談中なきぼくろ先生が)テンパっていたんで(笑)。

上重 でも逆に自分が5つ上の先輩、例えばサブローさんとか松井 稼頭央さん2015年インタビューとかに話を聞けって言われたら緊張しますもんね(笑)

編集担当 是非、今後ともよろしくお願いします。

上重 はい、是非!今後私が登場してくれるのであればいつでも!(笑)

なきぼくろ よろしくお願いします!

 4回に渡って配信してきた「なきぼくろ先生×上重 聡アナウンサー」のPL学園OB対談も今回で最終回となりました。これまで、高校野球について、PL学園について、松坂大輔投手について、ライバル、野球以外のお仕事などなど幅広い内容のお話を聞かせていただきました!
今回の対談中、終始上重さんのお話を聞くなきぼくろ先生の目が輝いておりました!この対談から今後の「バトルスタディーズ」のストーリーのヒントを得たのでしょうか。お二人の活躍とともに、ますます盛り上がりを見せる「バトルスタディーズ」からも目が離せません…!


注目記事
・バトルスタディーズスペシャルサイト
・【11月特集】オフシーズンに取り組むランメニュー

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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