Interview

バトルスタディーズ第3巻発売記念!上重 聡さん(日本テレビ)×なきぼくろ先生【PL学園OB対談 第3回】

2015.10.22

「漫画家・なきぼくろ」と「アナウンサー・上重 聡」のPL学園OB対談。第3回は投手と野手が考えるPL学園のエース像や、甲子園でのそれぞれの役割について話していただきました。外野の芝を大リーグ風に刈る妙技は必要だったのか?女子マネはいらないけど、女子マネがいるチームには負けられない!等々の裏話も満載です。

プロ野球以外の選択肢を示す2人


対談の様子

上重 私からするとプロに行った人っていうのは、特別感があって、マエケンのことも本人の前ではマエケンって言えないんですよ。「前田さん」みたいな(笑)。
今江もいないところでは「ゴリさん」っていうけど本人の前ではあまり言えない。やっぱりプロになった人は尊敬しますね、自分が行けなかったので。

編集担当 怪我とかなければ行きたかったですか?

上重 行ってみたかったですけど、PL学園に入る時も一緒ですけど「行くこと」が目的ではなくて、「行って活躍できるか」となると…。プロの基準もやっぱり松坂 大輔になっているんですね。だから今、松坂にどれくらい追いつけているのかなとか思いながら大学でもやっていたので、最後決断する時にやっぱり無理だ、と。すんなり諦められたって感じですね。

編集担当 社会人でもう少しやるっていうのはなかったんですか?

上重 大学入った時に期限を決めて、その4年間で(プロに)行けなかったらその先続けても行けないって考えていました。あと、どこかで野球以外の人生も送ってみたいというのもあって。そういう意味では(なきぼくろ先生に)似ているのかな、というのはありますね。

編集担当 でもいろいろある中でアナウンサーっていう職業は、逆にプロ野球選手になることよりも難しかったりするじゃないですか?

上重 そうですね。なんというか、PL学園横浜の試合もそうですけど、普通じゃ嫌だというのがあって。どうせやるなら「それ無理じゃない?」ってところにチャレンジしてみたいというのがあるんです。アナウンサーはテレビに出る仕事なので多少なりとも影響はありました。なので、「PL学園で野球をやっていたのに野球を辞めた、でも違う選択肢もあるよ」ってこと、「上重さんがアナウンサーで頑張っているから、自分も違う世界で頑張ってみようかな」という風に発信できる立場になれればと、アナウンサーに挑戦してみようと思いましたね。

編集担当 上重さんに影響を受けたの?

なきぼくろ はい!

上重 だからすごい嬉しいです!じゃあ今度はバトルスタディーズ読んで、野球以外の選択肢もあることを考えてもらえればなと。昔よく「野球でだめだったらもう終わり」とか、「野球しかできないんでしょ」とか言われるのが凄く悔しかったので、そうじゃないということを体現できたらいいなと思いますね。

編集担当 確かにPL学園で過ごしてたら普通の生活の中では大丈夫ですよね。社会人って、やはり学歴とかそんなにいらないし、人としてどうかっていう話ですしね。

上重 でも私はPL学園から一番出にくい分野って芸術系だと思っていたんですよ。だから本当に(なきぼくろ先生は)すごいと思って!努力したからって、なかなかできないことだと思うので尊敬します。私が逆に影響を受けてます。

なきぼくろ え!(嬉しそう)

上重 嘘です(笑)。

なきぼくろ えぇ~!(笑)

上重 いやでもホント、絵心みたいなのは野球とはつながっていなかったの?

なきぼくろ 絵心という意味では、外野の芝刈りを担当していたんですけど…大リーグみたいにカッコいい模様をつけていました。

上重 なんだそれ、変わった奴だなぁ!そりゃしばかれるわ。そんな感覚持った奴いないもん!芸術的だわ(笑)。珍しいタイプだね、野球じゃなく漫画家選んで良かったよ。

編集担当 確かにみなさんOBの方は言いますよね。それぞれ、いろいろなことをやるけど、さすがに絵を描く人は現れないって。漫画家って大変な仕事で。これ毎週18ページ描かないといけないんですよ。でもPL学園を出ているだけあって体力は凄いし、甲子園に出場したっていう成功体験を持っているんですよ。だから漫画とか芸術の世界に、もっとアスリート系の人がガンガン来てほしいなって思いますね。

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[page_break:常に締め切りとの闘い!PL学園OBは、実は漫画家に向いていた]

常に締め切りとの闘い!PL学園OBは、実は漫画家に向いていた

上重聡アナウンサー(日本テレビ)

上重 PLで1年生の時って常に崖っぷち。言わば常に締切がある状態で(笑)。だって洗濯物を明日までに乾かさないといけないとか、ボールを磨かないといけないとか。そういう意味では、強いのは当然だって思いますね。

編集担当 そこでいかに時間をコントロールするのかってことも必要ですよね。

上重 そうですね。気持ちのコントロールもそうですし、セルフコントロールはPL学園の寮生活で学びましたね。どうやったら効率よくできて日々を過ごしていけるのか。そこがダメで辞めていくやつが多かったんですよ。野球がダメというよりかは、自分のコントロールができなくて辞めていくことが多い。

編集担当 女子見るの禁止だったらしいですけど、女子マネージャーがいてくれたらな、って思ったことはあります?

なきぼくろ 試合とか野球以外の時は、女の人のことばっかり考えてたんですけど(笑)、野球になると女子マネージャーは特に欲しいと思わなかったです。

上重 でも、女子マネージャーがいるチームには負けたくなかったです!普段良い思いしてるんだろう、って(笑)。
ただ、女子マネージャーがいたら、常にあと10秒くらい速く走れたんだろうな、とは思います。見られてるほうが頑張れるし。

なきぼくろ しんどい顔もしないでしょうしね!

上重 もっとスマートに出来たんじゃないかなぁと。

編集担当 上重さんも、いっぱいファンレターとかもらっていたと思うんですけど、やっぱり17回の延長戦の後が一番すごかったですか?

上重 ファンレターは途中でもらうと勘違いしてしまうので、3年の夏が終わってから一気に全部もらうんですよ。それで「上重、布団の上に置いといたから」って言われてみたらすごい量があって!それが優越感でした(笑)。

編集担当 へえ~3年分ですか!それはどうしたんですか?

上重 返信用のハガキとかが入っているものもあって、それを母親に「全部書きなさい」と。「応援ありがとうございましたって書きなさい」ってことで書きましたよ!(なきぼくろ先生は)ファンレター来た?甲子園出たんでしょ?

なきぼくろ そんなに来てないですね、へたくそだったんで(笑)。キャプテンは一番来るんで小窪(哲也・広島東洋カープ)とかはいっぱい来てました。

編集担当 上重さんの代は、一番誰がもらっていたんですか?

上重 もうダントツ私です(笑)。ピッチャーの特権なんですよね、テレビにも一番映りますしね(笑)。

編集担当 漫画の方でも、今後エースとして成長していくわけですが、そのあたりも描かないとね。

上重 そこもけっこう注目しているんです。ピッチャー出身の思っているエース像と、野手出身が考えるエース像っていうのは、ちょっと違うと思うので。今後どういったピッチャー像を描いていくのかなってことはすごい楽しみですね。

なきぼくろ 僕もその部分は色々話を聞いてみたいです!途中でキャッチャーから外野になったので、勉強していないことがいっぱいあるんです。…知りたいです…。

上重 おまえよくセリフ書けるな(笑)。
でもそうだよね、エース像プラス、「PLのエース像」もあるじゃないですか。「PLのエースたる者は常に、どの試合でも2点以内に抑える」。どれだけ調子が悪くても2点3点に抑えて試合を作る、安心してマウンドに送り込まれてるってことがPL学園のエースだと自分の中では思っているので、なきぼくろ君がどう思っているのかすごく興味ありますね。

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[page_break:MC、日本一のバント職人…それぞれの「役割」を果たした甲子園]

MC、日本一のバント職人…それぞれの「役割」を果たした甲子園

身振り手振りで説明をするなきぼくろ先生

なきぼくろ 投手と野手って別メニューだったりして、普段関わりがあまり無くて、投手陣の関係性がわからないんですよね。最後の夏に「背番号1」が決まった時に、なんか変な空気になってたのは分かったんですよ。でも、どういう戦いが日々繰り広げられていたのかな、ってわかならくて。そこはお聞きしたいところですね。

上重 そうだね。みんなが納得して「1番」を着けているっていうのはエースとして一番持ちたい部分でしたね。

編集担当 ナインから認められて「1番」をつけるってことですか?

上重 はい。例えば9回裏同点で野手がマウンドに集まった時に「お前で負けたら仕方ないよ」っていわれるのが「1番」をつけている証だと思っていて。自分から監督さんに「代わります」って言った時に「お前で負けて納得しないやつはいないと思う」って言われて、「1番を着けている」ってこういうことなんだなって思いましたね!

編集担当 そのお話、すごく良いですね!

上重 あとは「1番」を着けるだけのことを、常日頃やっていなければいけないなと思っていました。「上重がこれだけ頑張っているんだから俺たちも助けてやろう」って思ってもらえるような。チーム内の信頼関係もエースが作るものだと思っていましたね。

なきぼくろ 中学校の時に、(上重さんの)延長17回の試合を見て、元々自分の中でのPL学園の印象は、笑わず表情がないっていうイメージだったんです。けど、上重さんはマウンドでニコニコされていて、なんていうんですか、一人だけ楽しんでいる、余裕があるように見えたんですね。

上重 俺も(PLに)そのイメージはあった!ホームラン打っても淡々とダイヤモンドを回ってくるみたいな。

なきぼくろ (上重さんは)キャプテンみたいに映って、マウンドでも上重さんだけ全員に話しかけるみたいな。

上重 当時からMCだったからね(笑)。私の中では甲子園出るまで苦しもう、出たら楽しもうって考えがあったんです。そこは他の高校と違うところで「ここまで俺ら苦しんだんだから、ご褒美だ!」くらいの感覚でしたね。もちろん、PL学園たるもの1回戦で負けられないってプレッシャーはありましたけどね。それ以降はもうこの場は俺たちのものだ!っていう開き直りがありましたね。どうだった?

なきぼくろ バッターボックスに入ったら足がすくむってずっと言われてたんですけど、全然ガクガクもしなくて。応援歌もこんな感じかーみたいな。

上重 じゃあ余裕はあったんだね!

なきぼくろ はい、でも打てなかったんですけど(笑)。ただ、送りバントはその当時日本一練習した自信があったので全国の中学生が真似できるような「これがバントやで」って気持ちになれましたね。バットを振る時は余裕がなくて、バントの時だけ初めて落ち着けました(笑)。

上重 かっこいいのか、かっこ悪いのか(笑)。でもそれくらいやっぱり練習でやってきたってことだよね。

なきぼくろ はい。外野の守備とバントですね。

上重 だからそれで俺はレギュラーを掴んだんだって自信を持ってやれたし、これが自分のやるべきことだってわかってたことだもんね。でもそれはすごいわかるな~!

 チーム、ライバルに認められて1番を背負う。エースナンバー「1」というのはやはり重みがあるんですね。それにしても、なきぼくろ先生の作り出す大リーグ風の芝模様、少し気になりますね…!
次回は、「1番と10番」「上重さんと松坂大輔投手」など、なかなか聞けないライバルとの関係をみっちり聞いてきました。今後のバトルスタディーズの展開のヒントも!?乞うご期待!


注目記事
・11月特集 オフシーズンに取り組むランメニュー
・2015年秋季大会特設ページ

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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