Interview

県立岐阜商業高等学校 高橋 純平投手「悔いしか残らなかったラストサマー だからこそ見えてきた投手像」

2015.10.13

 9月8日、プロ志望届けを提出した高橋 純平選抜後、再び甲子園の土を踏むことを目標に夏の大会に臨み、それに向けての準備をしてきた。

準決勝敗退に終わった夏の岐阜大会、そしてU-18ワールドカップでの戦いを振り返ると、彼にとっては悔いしか残らなかったラストサマーだったといえる。しかしこの舞台で見出した課題もあり、また目指す投手像も明確になってきた。

 そんな高橋に夏をふりかえっていただきつつ、プロ入りへ向け、現在どんなことを意識してトレーニングに取り組んでいるのかについても伺った。下記より高橋投手の動画インタビューもチェック!

悔しい開幕前のアクシデント

高橋 純平投手(県立岐阜商業高等学校)

 選抜前の取材で、「夏では自分の内容よりも、とにかくチームが勝つことにこだわりたい」と話した高橋 純平。その姿勢は選抜が終わっても変わりはなかった。
「練習試合でもとにかく勝つ。そういう意識を持たせてチームを作り上げようとしていました」

 そして勝てる投手になるために、高橋は色々なタイプの打者に対応するために投球のバリエーションを増やすことをテーマに取り組んだ。まず投球フォームではクイックで投げたり、ゆったりと投げたりと変化をつけたりした。

また日々の投球では小川 信和監督と太田 郁夫投手コーチがチェックをしつつ、3人でプランを立てながら、夏に完成形に持っていけるよう着実に準備をしてきた。

「大会前まではうまくいっていたと思います」と高橋が語れば、小川監督も、「あのままいけば、凄い投球ができていたと思いますよ」と語るように、夏前までは順調に進んでいた。しかし、春より進化した姿を見せられると思っていた矢先にアクシデントが起こる。

 大会2日前、高橋はベースカバーの際に足を痛めてしまう。病院で診断を受けた結果は左太もも裏の肉離れだった。それは高橋にとっても、チームにとっても、痛恨の出来事であった。
大会ではベンチで選手たちへ声援をかけるだけ。そんな高橋が登場したのは準々決勝の中京戦だった。だがその試合、やや立ち投げのフォームで140キロ台の速球を投げた姿を見て、小川監督はこれ以上投げさせるのは無理と判断したという。

「立ち投げという負担がかかるフォームで速い球を投げても故障するだけなので。将来もある子ですから」
と1回3分の2を投げて無失点に抑えたが、これがこの夏、最初で最後の登板となった。そしてチームは準決勝で敗れ、夏の甲子園出場はならなかった。だが夏が終わって、高橋はすぐに動き出した。

選抜後に、U-18の代表候補に選んでいただいたので、もし代表に選ばれて合流した時は、いつでもしっかりと投げられるように準備をしてきました」

 夏休み中は、無理をせずブルペンでの投球練習を繰り返し、準備をしてきた高橋 純平。そして代表20名に選ばれた高橋は、24日の近畿大戦で復帰登板を果たした。

「まだ100ではないですけど、投げられたことは良かったです」と振り返る高橋。そして26日の侍ジャパン大学代表との試合(試合レポート)では9回表から登板した。
「やっぱり[stadium]甲子園[/stadium]のマウンドは気持ちよかったですね。ナイターということもあって見える景色が違いました」
とモチベーションを高めた高橋は、最速148キロのストレートを武器に2三振を奪う好投を見せ、復調した姿を見せたかのように思えた。


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[page_break:挽回のチャンスをもらったが、100の投球ではなかった]

挽回のチャンスをもらったが、100の投球ではなかった

高橋 純平投手(県立岐阜商業高等学校)

 だがU-18ワールドカップの投球は高橋にとって納得のいく出来ではなかった。この大会、高橋はクローザーとして待機。3試合を投げて無失点だったが、高橋らしいインパクトある投球に欠けた。ストレートのスピードにはこだわりがないと話す高橋だが、選抜では150キロを超えたストレートがU-18では1球もなく、完全復活とはいかなかった。これについて高橋はこう振り返る。

「夏あまり登板出来なかった分、挽回するチャンスだと考えていました。しかし100の投球ができず、期待に応えられなかったことについて申し訳なさと感じるとともに、自分の実力不足を実感させられた大会でした」

 思うような投球が出来なかった原因として、フォームの乱れが挙げられる。高橋は踏み出す左足が右打者側にインステップ気味になってしまう癖がある。これだと右打者のインコースには速いボールを投げることができるが、外角には逆の動きになるので、動きがロックされてしまう。この癖は春まではカバーできていたものだが、故障明けということで、その癖が再び出てしまった。内外角へ精度の高いストレートをしっかりと投げて投球を組み立てたい高橋にとって、インステップは克服するべき課題だった。

 自身の課題が見つかりつつも、高橋にとっては、U-18を経験したからこそ得たものもある。
U-18代表の投手陣はみんなレベルが高かったですし、それぞれ特色があって、それを生かすことができていました。自分の武器は何なのかを振り返る良い機会だったと思います」

 特に代表投手で最も刺激を受けたのが、この大会で最優秀防御率賞を獲得した上野 翔太郎中京大中京U-18関連コラム)だった。
「海外と日本の投手を比較してみると、海外の選手は馬力があって、癖のある投げ方でも威力あるボールを投げることができます。対して日本の投手は綺麗な投げ方から、伸びとキレのあるボールを投げることができます。特に上野は130キロ台のストレートでもコントロール、キレが良いです。そして打者のタイプに応じてどんな攻め方をすればよいのか、その意図通りに投げることができれば、突出したスピードがなくても抑えられるということを証明してくれました。上野の投球スタイルは理想ですね」

 常々、高橋は投球術にこだわる発言をしてきた。制球力抜群の投球で、世界の打者たちを抑える上野の姿には大きな感銘を受けたことだろう。そして高橋はこう語る。
「やはり上野のように、すべて全力を出すのではなく、打者に応じて力の入れ加減を工夫しながら、最低限のストレートで抑えられるようにしたいです」

 新たに自分の投手像を見出した高橋。現在、最低限の力で投げるストレートを更にレベルアップされるために取り組んでいるのが体作りだ。


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[page_break:今の悔しさをバネにプロでの活躍を誓う]

今の悔しさをバネにプロでの活躍を誓う

高校3年間を感謝と表した高橋 純平投手(県立岐阜商業高等学校)

 U-18ワールドカップを終えた直後の9月8日にプロ志望届けを提出した高橋。代表投手との体格差を実感し、体作りのためのトレーニングを行っている。
「僕はまだまだ細いと実感しました。今は冬にやっていることを前倒ししてやっていますね。現役の時にできなかった水泳トレーニング、またウエイトトレーニングも始めています。冬になったら今より忙しくなって、あまりできないことが多いと思うので、しっかりと体力をつけていきたいです」

 今よりも体に秘めるエンジンを大きくするとともに、課題のインステップの矯正に取り組むなど、プロ入りに備えている高橋。投手は先発・中継ぎ・抑えとさまざまな役割がある。U-18ワールドカップではクローザーとして投げた高橋だが、
「もともと先発で投げてきて、今回、クローザーとして投げましたが、1回~2回だけではなかなかエンジンがかからないことが分かりました。とはいえ、監督にここを任せたと言われれば、そこでしっかりと投げられる投手になりたいです」

 先発に憧れを抱きつつも、監督に求められたポジションを100パーセント全うするつもりだ。

 高橋は今年のドラフト候補でも上位候補として期待されている。近年は大谷翔平花巻東-北海道日本ハムファイターズ関連記事)、藤浪晋太郎大阪桐蔭-阪神タイガース)、高橋 光成前橋育英-埼玉西武ライオンズ2014年インタビュー)と高卒1年目から活躍する投手が多くなっている。そんな投手について、高橋の目にはどう映っているのだろうか。

「やはり凄いですし、1年目からそんな投球ができれば理想的ですし、田中 将大投手2013年インタビューのように日本のプロ野球で活躍して、MLBで活躍するという道もあると思いますが、理想ばかり追ってはいないです。自分の現状からして、まずは日本のプロ野球のトップレベルについていけるだけの力をつけることがまず一番。だから1年目に一軍で活躍できなかったからといって焦るつもりはないです。今できることをやるしかないです」

と語るように焦る様子はなく、しっかりと自分の目標に向けてスタートしていた。

 この夏、活躍が期待された高橋。しかしその姿を見せることなく終わってしまったことには今でも歯痒い気持ちを持っている。だが高橋は焦ることなく一歩ずつ進んでいる。

 夏に見せられなかった、進化した姿を見せるのはプロ入りしてからになるだろう。
観察力があり、しっかりと吸収し計画的にトレーニングに取り組める高橋 純平ならば、技術、体力が格段に高く、また知識も豊富な選手が揃うプロ野球の世界で揉まれることで、我々の想像を超える投手になっていくかもしれない。そんな姿を多くのファンは待ち望んでいる。

(取材・写真/河嶋 宗一

高橋選手のこれまでのインタビューはこちら
【前編】「152キロを生み出した環境、出会い、過程に迫る」
【後編】「自分はスピードだけの投手ではないところも見てほしい」


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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