Interview

阪神タイガース 新井 良太選手「フルスイングを実現する軸回転の秘密」

2015.07.29

 広島東洋カープの新井貴浩選手の弟として注目され、2005年に中日ドラゴンズ入りすると、阪神移籍2年目となった2012年に11本塁打を放ち、ブレイク。2013年も13本塁打を放ち、スラッガーとしての階段を上っている。今回は新井良選手の長打力の秘密を探ってみた。

長打力の源は軸回転

新井 良太選手(阪神タイガース)

 大きな声と大粒の汗が印象的な阪神1の元気印、新井 良太。豪快なバッティングが持ち味で、ジャストミートした際には派手にバットも投げ飛ばす。ただこれは意識したものではなく自然に出るものだという。
「ホント無意識ですね。振り抜いた時にああいう風になるって感じで。振り抜いて収まりが良い時に自然と投げちゃいますね」

 大歓声に包まれる中、打球が外野フェンスを越える、スラッガーだけに許された至福の瞬間を味わうために大事なことは、
「自分の軸でしっかり回ることだと思います」
という。この”軸”が新井 良太のバッティングを支えている。

 バッティング練習では打撃投手の方に外角に投げてもらい、それを右中間に大きく打ち返すイメージで行っているが
「軸が前にズレたりとかその場でしっかり回らないと逆方向には飛ばないと思いますね」
とここでも軸を意識している。

 大振りとフルスイングの違いは紙一重としながらも、やはりここでも軸の大切さを説いた。
「軸と壁だと思うんで。軸と壁が崩れて力ずくで振るのが大振りで、前の壁が残って軸で回れた時がフルスイングだと思いますね」

 長打力とは対極にあるように思われるコンパクトなスイングという言葉、これについても
「重複しちゃうんですけど、タイミングが合って軸で振れた時はコンパクトに見えるんですね。見えるし、自分でもそういう感覚になるんで、みんなそう言うんじゃないですか?」

 新井 良太が大振りをせずコンパクトなスイングでも遠くに飛ばせる理由はここにあった。投手側の立場に立てば、この軸をいかにズラすかがピッチングの肝。緩急をつけたピッチングでタイミングと軸をズラしにかかる。
「僕も緩急苦手なんでね(笑)。僕の場合は張って打つっていうんですかね。前の打者の兼ね合いとか配球がすごい大事だと思うんで僕は狙って打ったりします」

 前の試合ではどういう傾向があったのか、その日の状態はどうなのか。ストライクを取るのに苦労しているのか、決め球は何なのか。試合前にインプットしたデータとその日グラウンドレベルで感じた感覚とをすり合わせてから勝負に挑む。打席の中で必要なことが軸回転ならば、打席に入る前に必要となるのが事前の情報だ。


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使うバットは重さも形状も長距離打者用

 時には投げ飛ばされる相棒、商売道具のバットは重さなどの微調整はあるがプロ3年目から現在までほぼ同じ物を使っている。昨年末アドバイザリー契約を結ぶミズノの担当者に出した希望は、1枚だけ薄くして欲しいというごくわずかな変更だった。道具はパフォーマンスに影響するか、との問いに即答で力強く「もちろんですね」と答えるプロだからこそ、細部にまでこだわる。

 バット素材で有名なのはメイプルと青ダモ。メイプルは固いから弾きが良く、青ダモは感覚的には竹に近いところがありバットをしならせて打つことが出来る。

 合う合わないの個人差はあるが、基本的にはボールをバットで払うタイプの打者はメイプルを好み、乗せるタイプの打者は青ダモを好むことが多い。新井 良太のバットはメイプル製で長さは34インチ。重心はヘッド寄りにあり重さは920~930g。プロ野球選手が使用するバットは900g前後のものが多いから重めのバットだ。しかもヘッドに重心を置くタイプだから重量感は更に増す。もちろん扱うにはより大きな力を必要とするが、その分遠心力を利用しやすく、当たった時には飛距離が出るこだわりのバットだ。

感謝の気持ちを忘れずにプレーしてほしい

新井 良太選手(阪神タイガース)

 新井 良太は広島の名門・広島広陵出身。甲子園を狙える学校であることと、中井 哲之監督の人間力が進学の決め手だった。大声を張り上げ盛り上げる姿勢は当時からのもので、1年秋にベンチ入りし2年秋からはレギュラーに。4番・ファーストと打線の中心を担う一方、時には投手を務めることもあった。甲子園には3年春の選抜出場は果たすが、夏は県大会の準決勝で敗退、それだけに最後の夏の思い出は「悔しかった」という言葉を繰り返した。

 もし高校時代に戻れるなら、
「当時も考えて練習ってことを言われてやってましたけど、もっと効率良く出来たんじゃないかって今はそう思ってます」
自主練習を重視する学校で在学時はティーバッティング、近い距離から緩い球を投げてもらってそれを打ち返すハーフバッティングなどとにかく早朝と練習後にバットを振り込んだ。

 近年はプロの世界でも大阪桐蔭OBの活躍が目立つが、3年前に引退した金本 知憲氏を始め、広島広陵出身の選手も数多い。
「技術うんぬんよりもまず人間力が磨かれるんで。技術ももちろんですけど、人間形成を厳しく指導していただきましたんでそれもあるんですかね」

 人間力を磨く3年間を過ごしたからこそ、現役の高校球児にも
「やっぱり甲子園に向かって皆さんやっていると思うし、でもそれが全てじゃないと思うんで。野球をやらせてもらっているという点に感謝して、あとチームメイト、メンバーに入れなかった人達の思い、そういうのを汲んで、ホント感謝の気持ち忘れずにプレーしてほしいですね」
とメッセージを送った。

 アマチュア時代のスター選手が底辺にいるのがプロの世界。新井 良太も広島広陵、駒澤大学と名門校で4番を務めたが、現在もレギュラー争いを続ける立場にある。ナイターの日でも午前中には球場入りし、ランニングやトレーニング、若手に混じっての特打を行う。全体練習が14時頃から始まるため13時半過ぎにクラブハウスからベンチ裏に向かうが、その時点で大粒の汗をかいている。1日に使うアンダーシャツは7枚以上。感謝の心を重んじる男は今日も大粒の汗をかきながら一心不乱にバットを振る。

(取材・文=小中 翔太


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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