Interview

麗澤瑞浪高等学校 赤塚 瑞樹投手【後編】「この夏は両投げ投手としての集大成を見せたい」

2015.07.07

 前編では両投げ投手誕生までの道のりについて描いた。だが、ただ両投げで投げるのと、両投げで投手として勝負するというのは全く次元が違う。その中で、赤塚投手はどう乗り越えていったのか、最後に、同世代の高校球児へ向けてメッセージをいただいた。

右で押して、左でかわす。左右で異なるピッチングスタイル

 ストレート主体で押しチェンジアップで仕留める右と、コントロール重視で変化球を交えながらかわすタイプの左。左右で投球スタイルは異なり、捕手・窪田 卓也(3年)も
「右の時はとにかくまっすぐで押したい時はテンポが良くなるように、左は変化球を使ってコントロールで打ち取るように」
というリードを心掛ける。

赤塚 瑞樹投手(麗澤瑞浪高等学校)

 球種は左右共通でスライダー、カーブ、チェンジアップの3種類。赤塚 瑞樹は左右の投げ分けについて
「基本的には右打者には右で、左打者には左で投げます。でもランナー一塁なら左の方が盗塁されにくいし、クロスファイヤーで打ち取りたい時、前の打席右でジャストミートされたバッターはタイミング変えるため左で投げたりいろいろ工夫しながらやっています」
と話す。

 打者からすれば非常にやっかいだ。相手投手の持ち球にカーブがあると分かっていても左右では軌道が逆になる。場合によってはネクストバッターズサークルで見た情報は全く当てにならない。マウンド上でスイッチすると初めて見る相手チームからは驚きの声が上がる。

 ただ、このレベルに達するまでには人並み以上の苦労もあった。
「右の方がすぐ力がついて左との差がついちゃうこともあったんです」

 その差を少しでも埋めようと食事の時は箸を左手で持ち、授業中ノートをとるのも制服のボタンを留めるのも左手を使う。努力の甲斐あってスピード、コントロール、牽制、フィールディングなど全ての面でレベルアップし、スライダーしか投げられなかった変化球も3種類にまで増えた。入学時に右10に対し6と言われていた左の評価は8にまで上昇。しかも右打者の膝元に決まるカーブは抜群のウイニングショット。右には無い左ならではの武器も身につけた。

 今春敗れた準々決勝の強豪・大垣日大戦では、右のまっすぐが走らずコントロールも悪く左を多用した。本来はコントロールに優れたタイプだが、この日は9四死球を与える苦しいピッチングで2対2の6回に押し出しなどで一挙に6点を失う。それでも
「左右でやっていることによってタイミングが合っていませんでした。大量失点の回以外は楽しかったです」

と両投げのメリットを生かし最後までマウンドに立った。

 春季大会後の練習試合では好投が続く。特に右のストレートの走りが良いという。冬場に左の球速が増したがこれでまた差が開く形に。この辺りをどう乗り越えるのか、どう利用するのか。お手本や明確な答えがほとんど無い両投げ投手は高いレベルでの課題と向き合っている。


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最後の夏に両投げとしての完成形を披露する

赤塚 瑞樹投手(麗澤瑞浪高等学校)

 赤塚は両投げ投手としての話題ばかりが先行するが、実は打者としても両打ちだ。バットコントロールとミート力に優れた安定感のあるタイプで、昨年から5番を務める。これも父の影響で、始めたのは小学校1年の後半。
両投げの前に両打ちとしての挑戦をスタートさせていた。
足は特別速いわけではないが、ランナーとしての状況判断に優れるなど全てのプレーにクレバーさが光る。学業面も優秀で国公立大学を目指す選抜クラスに籍を置く。将来の夢は高校野球の監督だが、その前に両投げについての研究をしたいのだという。

「苦労したこと、うまくいったこと、体の動きも含めて自分にしかわからないことがあると思うので、研究してその後監督を出来たらいいなぁと思います」
両投げでの公式戦デビューは2年の春、父の勧めでボールを持ち替えた日から形になるまでに約10年の歳月を要した。それまでに賛否両論があったのも事実。

 ただ、プロ野球で二刀流として活躍する日本ハム・大谷 翔平関連記事がそうであるように、いつの時代もパイオニアには批判的な意見がつきまとうもの。頭の良い赤塚はおそらくそういうことも十分に理解した上で最後の夏へ向けて、
「両投げとして完成した形で結果を残したいです。賛否両論あったんですけど、支えて下さった方に恩返ししたいなと思います」

 と活躍を誓う。両投げに挑戦する未来の高校球児にも、
「辛いことも反対意見もあると思うけど、くじけるんじゃなくて自分で決めたことを、信念を持ってやってほしいです。賛成して下さる方もたくさんいるので、その方々の期待に応えられるようにがんばってもらいたいです」
とエールを送った。

 今春に地元新聞のネットニュースと高校野球雑誌で取り上げられたことで注目度が増したが、寮もグラウンドも学校の敷地内にあり赤塚本人がそのことを実感する機会はほとんど無い。ただ、この夏に見せるのは両投げとしての集大成のピッチング。本物のフィーバーを巻き起こす可能性を十分に秘めている。

(取材・文=小中 翔太


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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