Interview

木更津総合高等学校 檜村 篤史選手【前編】「『守備力』から『打撃力』へ。そして悔しさの1年間」

2015.05.26

 1963年(昭和38年)の開校・創部以来、千葉県屈指の強豪として鳴らし、1971年にはセンバツ初出場でベスト4の快挙。夏も2003年以降5度の甲子園出場を誇る木更津総合。そこには中日ドラゴンズで炎のストッパーとなった与田 剛亜細亜大~NTT東京など。2009年WBC投手コーチ、現:解説者)や、横浜DeNAベイスターズの躍進を支える井納 翔一上武大NTT東日本・侍ジャパントップチーム)(2015年インタビュー【前編】【後編】)といった豪腕たちと共に、必ず強打者の姿があった。

 古くは亜細亜大3年春で投手から打者に転向すると、日本ハムファイターズ・阪神タイガースで1406安打・180本塁打をマークし、現在阪神2軍監督を務める古屋 秀夫氏。

甲子園出場の際も2003年には矢上(島根)監督としても大きな足跡を残した大島 吉雄早稲田大卒・現・木更津総合コーチ)。2008年には早稲田大でもプロから注目され、現在は東京ガスで活躍する地引 雄貴2012年には三國 和磨高野 勇太(関東学院大3年)、高橋 慎之介(現:巨人育成選手)……。

 そして2013年夏・1人の1年生大型遊撃手が[stadium]QVCマリンフィールド[/stadium]、そして甲子園の右打席で躍動した。

 檜村 篤史。前編ではいよいよ最後の夏を迎える本人から、木更津総合での下級生時代を中心にうかがいました。

確かな守備力で1年夏からレギュラーへ

檜村 篤史選手(木更津総合)

 中学時代は現:巨人選手兼任コーチの高橋 由伸外野手(桐蔭学園慶應義塾大)も所属したポニーリーグの名門・千葉ジャガーズの中心選手だった檜村 篤史。そんな彼が木更津総合への進学を心に決めたのは、中学3年・2012年の夏だった。千葉ジャガーズの先輩たちもベンチ入りしていた木更津総合はこの時、4年ぶり3回目の夏の甲子園出場。

「甲子園に一番近づくなら木更津総合しかないと思って。ここに決めました」

 そして木更津総合入学の門を叩くと、早くも5月からレギュラー選手が集まるAチーム入りを果たす。ただ、この時の理由は「打撃」ではなく「守備」であった。五島 卓道監督が当時を振り返る。
「遊撃手としての守備力、スローイングの確実性、肩の強さは非凡なものを持っていました」
 

 木更津総合は伝統的に春季大会が終わってから競争を促し、チーム力を底上げすべく積極的に選手を入れ替える。1年生を抜擢することも珍しくない。しかも当時は遊撃手の守備力には不安を抱えていた。そこで目に留まったのが檜村だったのである。

練習試合でアピールを続けたことで1年夏から遊撃手でレギュラーの座を獲得した檜村。次は打撃でインパクトを残す。

 高校公式戦デビューの船橋啓明戦で、いきなり3打数1安打1打点。続く長生戦でも3打数1安打の活躍。そして「ひむら・あつし」の名が大きく知れ渡ったのは5回戦流通経済大柏戦であった。
この試合、6回が終わって0対0の投手戦。7回表、満塁のチャンスで、右中間へ走者一掃となる適時二塁打を放ったのは檜村。この一打により、木更津総合は一気に2年連続甲子園へ向かってエンジンがかかる。

「実はそれまで調子は上がっていなかったんですよ。ですが、この試合から自信が持てて、調子も上がってきましたね」

 もう檜村の快打を止める投手は存在しなかった。準々決勝の京葉戦では3打数3安打1打点。準決勝専大松戸戦でも、後に今春、東都大学野球リーグで専修大52季ぶり1部優勝の原動力となった本格派アンダースロー・高橋 礼から2打数2安打。

 決勝習志野戦でも4打数2安打を放ち、千葉大会通算21打数10安打5打点。檜村 篤史は「スーパー1年生登場」の称号と同時に、目標としていた甲子園出場を最初のチャンスで決めたのであった。

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第97回全国高等学校野球選手権大会
僕らの熱い夏 2015
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!
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甲子園で得た課題と収穫、そして壁

檜村 篤史選手(木更津総合)

 甲子園では3試合を戦い、上田西(長野)には打撃戦(試合レポート)、西脇工(兵庫)には投手戦で競り勝つも(試合レポート)、最後は富山第一(冨山)の勢いに屈した木更津総合試合レポート)。10打数2安打2三振1四球の成績を残した檜村 篤史にとっても収穫と課題が相半ばする夢舞台となった。

上田西(長野)戦はだいぶ緊張しました。エラーもあって自分のプレーはできなかったかなと思います。打撃は2本ヒットを打てて良かったですけど、守備で課題を残したと思います」

 具体的には「バウンドの合わせ方」だと話す。
「上手くバウンドを合わせることができずに内野安打にしてしまいました。あと捕ってから投げるまでが遅かった。ですから、この甲子園後にはグラブの芯で捕球し、持ち替えを速くする練習を行うようになりましたね」

 しかし、ここから先の道のりは決して順調ではなかった。秋は千葉県大会1回戦で東海大望洋と激突、1対2で競り負け。2年春の県大会2回戦市立船橋戦で4打数4安打をマークしながら、続く3回戦で千葉英和に2対5で敗退。「満足いくパフォーマンスができない期間」はついに3年連続甲子園を目指した昨夏の千葉大会にまで及んだ。

「この時は夏前の練習試合から全くダメで、そのまま終わってしまいましたね」

 準々決勝専大松戸戦。前年延長13回で敗れたリベンジを期す緑の迫力に、序盤から失点を重ねる木更津総合。ついに9回を戦うことなく、甲子園の夢はついえた。

 収穫と課題を得た1年夏、課題を追究するも悔しさが支配したその後の1年。そして最上級生になった檜村 篤史選手が目指したこととは?後編では新たなライバルから得た練習法や、今後の抱負を聞いていきます!

(取材・写真/河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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