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第276回 初芝橋本高等学校 黒瀬 健太選手 「全国区の強打者が目指すは、誰もが信頼する打者」2015年03月19日

【目次】
[1]当たれば飛ぶ、から全国区の強打者へ
[2]人間性を大きく成長させたキャプテン就任
[3]本塁打量産の秘訣はタイミングとポイント / ラストイヤーにスマイルを全国に届けられるか
初芝橋本の黒瀬 健太(2年)は、4番・キャプテン・捕手としてチームの中心にどっかり座る。人を惹きつける無邪気な笑顔の持ち主で、身長180cm、体重96kgの体格も親しみが持ちやすい。そんなこともあり、芝野監督をはじめとした首脳陣は黒瀬のことを「くろちゃん」と呼ぶ。初対面の人間に対しても、人見知りせず、すぐに溶け込むことができて、すぐに「くろちゃん」と呼ばせてしまうほどのキャラクター性。
そして人間性の良さを現すエピソードとしては、ハーフスイングのチェックを要求する時、中には塁審を指差すだけの捕手もいるが黒瀬は主審に「スイングお願いします」と丁寧に告げる。そういった態度や愛くるしいキャラクターもあいまって県内での彼の評判は抜群にいいのだ。
選手としては二塁送球1.8秒の強肩も光るが、何よりの魅力は長打力。ラストイヤーを前に描いたアーチはすでに72本。昨年のドラフトで巨人から1位指名を受けた岡本 和真(智辯学園)(インタビュー・2014年3月 2014年8月)の高校通算本塁打が73本だったからその長打力は間違いなく超高校級。1年時に16本塁打を放ち大器の片鱗を見せつけると2年時に56発とスラッガーとしての素質が開花。複数球団のスカウトが熱視線を送る右の大砲は、昨年最後の練習試合で5打数5ホーマーと爆発し飛躍の1年を締めくくった。そんな黒瀬 健太の成長の過程を振り返っていく。
当たれば飛ぶ、から全国区の強打者へ

黒瀬 健太選手(初芝橋本)
「今はこうして注目されてますけど、当時は誰もこうなるとは思っていなかったです」
チームを率いる芝野監督は黒瀬の入学時の印象をこう語る。人懐っこい笑顔と丸っこい体格で誰からも愛されるキャラクターの新入生は、抜群の飛距離を誇る反面、課題も多かった。右手の強さに頼って上体だけで打っていたため最初は内野ゴロばかり。タイミングを取るのも苦手。芝野監督に「軸足を動かすな」と言われると軸足を全く使わずに打つ。
入学早々に出場機会をつかんでいたが、5月から7月までで放った本塁打は2本のみ。それでも「持ってるスイングは凄まじい」と大きな期待をかけていた芝野監督は黒瀬の課題1つ1つと向き合う。右手はバットを握るのではなく軽く触れるだけとアドバイスを送り、タイミングの取り方や軸足の正しい使い方も覚えさせた。芝野監督は基本的にフォームをいじらない。選手が本来持っている長所を殺しかねないからだ。芝野監督が行ったのは打撃フォームの”改造”ではなく、打てない原因の”排除”。その過程で研究熱心な黒瀬は自分から質問に来る。
「まっすぐ待ってる時に外にスライダーが来ると打てないんですけどどうしたらいいですか?」
対応出来るようになると今度は
「外を待っているとインコースが打てないんです」
捌けるようになると次は・・・課題を克服する度に一歩一歩着実に成長し、今では芝野監督が打撃投手を務め予告無しで変化球を混ぜて1箱投げても空振りが奪えない。
「軟投派でもしっかり待って打てる。こういう体型なのでインコース苦手やろと投げられても捌ける。僕らが見たいのはもっと鋭い変化球、もっと速い球をどうするか」
黒瀬を打ち取るには小手先だけのごまかしでは通用せず、高いレベルの投球が要求される。
通算本塁打数から豪快な打撃を想像していた人が驚くのは、黒瀬の打撃の柔らかさだ。苦手なランニングにも妥協せずに取り組み8キロ走のタイムは10分以上も短縮。入学時から体重自体にそれほど変化は無いが、明らかにその質は脂肪から筋肉へと変わっている。上体だけの力で打っていた当たれば飛ぶと評判の新入生は、わずか1年半で全国区の強打者となった。